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大好きな人たちと見たい映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』2015年、インド。

数年前にものすごく評判がよかったので名前は知っていたけれど、劇場に行く時間がなくて未見だったインド映画。今週末から1ヶ月くらいの間、日本各地で再上映されることになったようなのですが、フォローしている映画詳しいアカウントから一斉に、「絶対見て!」メッセージであふれてきたので、久しぶりに夫と映画館デートしてきました。

ストーリーの基本は単純。迷子の女の子を、お人好しのおじさんが送り届ける話。予告編だけは見たことあったので、イランの有名なキアロスタミ監督の『友達のうちはどこ?』みたいな、子供がかわいい、ほんわか、ハートフルな映画だと思っていました。でも、さすがインド映画で世界的な大ヒット作。予想をはるかに超えていました。

パキスタンのカシミールの山村で育った女の子、シャヒーダーは6才になっても言葉が話せません。心配した母親が娘を連れて、インドの有名なイスラム寺院にお願いをしに行きました。ところが、シャヒーダーは迷子になってしまいます。偶然出会ったのは、ヒンズー教徒でハヌマーンの熱心な信者パワン(バジュランギ)。

母親とはぐれたシャヒーダーを連れ帰ったはいいけれど、彼女がパキスタンのイスラム教徒と分かって愕然。インドとパキスタンといえば、歴史的に戦争を繰り返してきたし、今でもいざこざが耐えないし、宗教も文化も違う国。映画では仲が悪すぎて、パスポートもビザも出ない状況の中、パワンは国境を越えてシャヒーダーを家に送り届ける旅をすることになります。

パワンに懐くシャヒ―ダーが本当にかわいい。しゃべれないけど、うなづいたり、静かに涙を流したり、表情がとても豊か。

シャヒ―ダーが人身売買されそうになるのを助けたり、検問破って国境を超えたり、予想よりもかなり冒険のアクション映画でした。主役のバジュランギおじさんは肉体派。でも、主役は融通のきかないくらい真面目でバカ正直な役で、心配した周りのおせっかいたちが、なんだかんだ助けてくれるコメディでもあります。

余談ですが、アジアで宗教の影響力が強い国の映画は、主人公が事情があって法律を侵すようなシチュエーションの場合、「嘘」をつかないことが結構ポイントなのかなと思ったりします。神様に対して、正直さを貫く態度が奇跡につながる…みたいな。

というのも、学生時代に見たイギリスのケン・ローチ監督『レイニング・ストーンズ』があまりにも衝撃的だったので。主人公の労働者青年が追い詰められて罪を侵すんですが、それを神父さんが「神が許します」っていって自分で証拠隠滅するんです。

「事情はあっても罪は罪」、「お天道様が見ている」的な感覚しか知らなかった私は、若い頃は「え!?! キリスト教ってこれOK!?」、「神様じゃなくて、神父さんが許してるだけじゃん!」、異次元すぎて理解無理!」ってなりましたから。

もとい。インドではやさしくて天然でも魅力あふれていたパワンが、国境を超えてパキスタンに入ると、途端に異文化社会に放り込まれて「頑固おじさん」になるところもおもしろいです。例えば、かくまってくれたモスクに入ろうとせず、「異教徒だから」と言い張って門の外に座りつづけようとするパワン。そのときのイスラム教の先生のセリフがいいです。

「モスクは異教徒でも入れる。だから、カギはかかっていない」って。それから、お別れの挨拶でパワンが戸惑っていると、先生は「ああ、ヒンズー教では◯◯って言うんだっけ」ってヒンズー式でパワンに合わせてくれる所。智慧のある人の柔軟さをあらわしていて、すごくいいシーンでした。

正義感が空回りするパワンに、現地パキスタンの人たちがなんだかんだ助けてくれて、物語が動くのがいいです。そして、そういうのがシリアスでなく、全部コメディなロードムービーなのもいい。宗教も文化も違えど、いろんな出会いがあって、でも子供はみんなで守るのが当たり前って、そういう世の中だったらいいなって思います。

インド映画は子供もおじさんたちもかわいいから反則。

インド映画名物のがんこなお父さんが出てくれば、反抗する知的な娘が必要。アーミル・カーン主演の有名な『きっと、うまくいく』でもヒロインだった、カリーナー・カプールの顔を見て安心納得。インド映画では、豊満な美女や儚げな聖女は多いけれど、知的でしっかり者美女なら彼女が好き。

冒頭のダンスシーンから最高に楽しい。

ストーリーや俳優さんたちだけでなく、音楽もすばらしいです。映画館の音響あればこそ。インドとパキスタンの雄大な景色も、大きなスクリーンならでは。笑って、踊れて、最後は涙、涙で、心から「よかったー!」と叫べる映画です。2時間以上なのに、あっという間。体感1時間くらいでした。

インド映画につきものの、エピローグのダンスシーン。日本版ではカットされたのかな?youtubeには音楽もまとめてあって、こういうのがうれしい。

そうそう、パワンとバディを組んでくれる記者のおじさま。彼は以前見た映画『めぐり逢わせのお弁当』に出ていた方だったんですね。気づきませんでした。

もし、今後何か悲しいことがあったら、またこの映画を見て元気になりたいです。(といいつつ、余韻が冷めたら2度めを見に行っている自信ある)GWにもし映画何かみたいなと思っている方、お近くでやっていたらぜひ!

ということで、映画のあとは、その余韻のままインド料理のお店でランチ。サヌマーンはいませんでしたが、ガネーシャのいるお店でした。おいしかった。

ウエイターのおにいさまがサルマーン・カーンみたいにイケメンで驚いた。
インドレストラン・ミティラー道頓堀

邦題:バジュランギおじさんと、小さな迷子(原題:Bajrangi Bhaijaan)
監督:カビール・カーン
主演:サルマン・カーン、ハルシャーリー・マルホートラ、ナワーズッディーン・シッディーキー、カリーナ・カプールほか
制作:インド(2015年)159分


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