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激しくて、あたたかい。『3月のライオン』羽海野チカ


アニメ化もされて、神木隆之介さん主演で実写化もされた名作。将棋のネットTVを始めた頃に読んでみました。15歳でプロ棋士になった主人公の桐山零と、彼を取り巻く人々の日常や成長を描いた作品で、東京下町のあったかい雰囲気と、将棋の世界の厳しさのコントラストが際立ちます。

最初は将棋の世界のことを全然知らなかったので、棋戦とか専門用語の解説なんかは、実は飛ばして読んでいました。(監修の先崎先生すみません、でも老眼には、字が細かすぎたので、『うつ病九段』は別に読みました)三姉妹がかわいくて、彼女たちと主人公が知り合って、お互いに頼ることで、だんだん成長していくのがいいなあと思って。

ただし、絵柄がかわいいのに、物語の内容は結構きついです。中学校での「いじめ」、そして浮気グセのひどい「やっかいな父親」。これは、『宝石商リチャード氏の謎鑑定』でも読んだDVの父親に通じる内容でした。サイコパスっぽいというか。

2度めに読んだときには、もう少し、将棋界のことがわかってきたときです。獅子王戦とか、棋匠戦がなんのことかもわかってきました。そして、主人公が棋戦で絶対勝ちたかった相手に、気持ちの方が強すぎて、ボロ負けしているあたりの心情描写がいいです。それを三姉妹の祖父が、「仕事の失敗は仕事で返すしかない」って言ってくれた言葉がすごく心に響きました。

3度めは、娘にもかなり将棋の棋戦とかルールをレクチャーして、自分なりに理解も深まった頃。最初は、私の将棋熱に冷めた目でつきあっていた娘ですが、期末試験の数学の問題に将棋が出て、クラスで惟一理解できて以降、私の将棋ネタのおしゃべりにもつきあってくれるようになりました。

今では娘も、リアル棋士にお気に入りもいるほどに成長(?)。そんなわけで、『3月のライオン』も一緒に読んでくれて、「10ヶ所くらい、ジーンと来て、泣ける」なんて共感してくれています。というか、先崎先生の解説は、私よりもしっかり読んで、理解している模様。さすが現役JKです。

その娘曰く、『3月のライオン』は「情報量多いから、読むのに時間がかかる」そう。だから、じっくり楽しめていいですし、夫も気に入って、家族で読める名作。主人公が居場所と、心の拠り所と、将棋に頑張る理由を見つけることができて、本当によかったなと思うこの頃です。

羽海野チカさんの『ハチミツとクローバー』を知っている世代としては、最初、誰も恋心を成就できないんだとばっかり思っていたので、主人公の健闘にひたすら拍手喝采です。そして、絶対、あかりさんにも幸せが来てほしいと願っています。お願いします、羽海野先生!




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