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聖杯戦争候補作

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つのが某所に投下した亜種聖杯戦争の候補作。落選多数。 鯖や鱒はご自由にお使い下さい。
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【聖杯戦争候補作】The Frog and The Scorpion

◆ 「ハルミ……! サトシ……!」 忘れはせぬ。あの絶望を、怒りを、苦悩を。殺され、復讐を誓い、地獄から甦った時を。当の仇に謀られ、必要なき殺しを行い、さらなる悲劇を生んだとしても。地獄で死んで、神々の奴僕となっても。俺の生前の記憶が薄れ、死後の記憶が薄れても、なお。妻と子を、その死を、忘れた時はない。 復讐。復讐こそが、今の俺の存在理由だ。地獄の力で奴を殺す。そのためだけに……! 『……では、ひとつ機会を与えよう。とある戦場が用意されている』 これは、俺か。あるい

【聖杯戦争候補作】カルマ / supernova

010110101101010110101101010110101101010110101101 「……■■、■■! 捜しましたよ! フラッといなくなって、何をやってたんですか」 「やあ■■■■君、ちょっとね。経過は順調ですか?」 「ええもちろん。でもあなたがいないと、まだいろいろ困ります」 「すみません。ですが、■■は成功だったと、これで証明された……」 010110101101010110101101010110101101010110101101 01011

【聖杯戦争候補作】Open Invitation

夕刻。 彼女が自分と世界の不自然さに気づき、記憶を取り戻したのは、薄暗い廃工場の倉庫だった。悪夢のような辛い記憶だ。取り戻さなかった方が、幸福だったに違いない。憂いに満ちた瞳から、はらはらと涙がこぼれ落ちる。 すらりとした美女。長い黒髪、白い肌、長い睫毛。妖艶で、儚げで、不穏な雰囲気を漂わせる。乱れた制服を整え、埃をはたく。赤い唇をかすかに歪め、彼女は呟く。 「ふふ。聖杯戦争。おのれの望みを叶えるために、殺し合え、やて」 聖杯。それを手にすれば、なんでも望みが叶う。他

【聖杯戦争候補作】この世全ての悪

宵闇の空に暗雲が垂れ込め、ぽつぽつと雨が降り出す。 雨は、地上に漂う瘴気に触れ、音もなく蒸発した。 立ち上る瘴気は暗雲を飲み込み、降り注ぐ雨を有毒の酸性雨に変えていく。 轟音とともに黒い稲妻が走り、落雷を受けた樹木が焼き尽くされる。 そこから得体の知れぬ蟲たちが生じ、這いずりながら闇の中へ消える。 路上に立つ少女は―――瘴気の源は―――肩を震わせ、嗤っている。 「ふふ……ふふふふ…………」 少女。そう、少女だ。外見上は。 小柄で黒髪、赤い瞳に褐色の肌。胸は豊か。露出

【聖杯戦争候補作】悪党たちの交響曲

悪はわたしにからみつき、数えきれません。 わたしは自分の罪に捕えられ、何も見えなくなりました。 その数は髪の毛よりも多く、わたしは心挫けています。                           ―――詩篇40:13 ◆ 「……エルフは神を信じない、っちゅうに」 夕刻。スノーフィールド中心部からやや外れた、閑静な住宅街。昔の商館を移築・改装したアンティークショップ。 目つきの悪い痩せた男が、館の西の窓辺でたそがれ、ぼやいている。一人暮らしの、館の主人だ。黄色

【聖杯戦争候補作】ホーリー・グレイル・ヴァーサス・フューリー・ソウル

◆◆◆◆◆◆◆ 010001010110月11010010下10100010101検101101001閲01 「こんなのってないぞ……聖杯戦争いい加減にしろよ……」 痩せて小柄、黒髪でショートボブ。永久脱毛した眉毛の代わりにイバラめいたタトゥー。テックジャケットにジーンズ、エンジニアブーツ。首には「地獄お」とレタリングされた赤いマフラー。彼女の名は、エーリアス・ディクタス。今、彼女に生命の危機が迫っている! 「■■■■■■■■■■■■!」 ナムサン!狂乱の叫びと共にエ

【聖杯戦争候補作】兆し

モンスター【英:monster】 怪物、化物。語源はラテン語「monstrum(不可思議なもの、奇怪なもの、正体不明の怪物、驚異)」で、動詞「monere(警告、忠告、予兆)」に遡る。 古代人にとって、驚くべき出来事や奇怪な生き物の出現は、神々から人間への警告であり、何か異常なことの前兆であると考えられていた。 monition(警告)、premonition(予告)、monitor(忠告者・監視者)、monument(記念碑)なども、同じ語源から派生している。  ◆ ◇