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【書評】市川憂人『グラスバードは還らない』ガラス迷宮と高層ビルで繰り広げられるWサスペンス!

2019年度の「このミステリーがすごい!」で10位となった本作をご紹介します!

80年代の外国を舞台に、捜査員のマリアと漣の活躍を描いた<マリア&連>シリーズの3作目です。

■あらすじ

捜査員のマリアと漣は、希少動植物の密売ルートに関しての調査を続けていく内に不動産王のヒュー・サンドフォードに辿り着く。

彼は、超高層ビル<サンドフォードタワー>の最上階にある邸宅に、違法に集めた希少動植物を保有していて、その中には硝子鳥<グラスバード>と呼ばれる秘蔵種もあるという。

ヒューの邸宅で仕事上の関係者を集めたパーティーが行われる日、上層部により捜査打ち切りを宣言されたマリアは、単身でサンドフォードタワーに潜り込むが、突然の爆破テロに巻き込まれてしまう。

一方、ヒューのパーティーに集まった関係者達は、気づくと窓の無い迷宮に連れこまれ、そこには硝子鳥<グラスバード>も迷い込んでいた。

ヒューのメイドから「答えはお前たちが知っているはずだ」という伝言を伝えられた面々は、迷宮から脱出する方法を探そうとするが、突然壁が透明になったかと思うと、ナイフで刺されたメンバーの一人の死体を発見する。

■『超高層ビルからの脱出』と『ガラス迷宮での連続殺人』の二重サスペンス

本作の特徴は、章ごとに、捜査員マリアが超高層ビルに巻き込まれるタワーパートと、関係者達が迷宮で連続殺人に遭遇する迷宮パートに分かれている事です。

タワーパートでは、超高層ビルの最上階で爆破テロに遭遇してしまったマリアの絶対絶命の脱出劇が描かれます。

中にいるマリアが次々と起こる爆破に翻弄されながらも、外にいる漣がマリアを助ける為に奔走する手に汗握る展開となっています。

そして、迷宮パートでは、「十角館の殺人」を彷彿とさせるクローズドサークルとなっており、閉じ込められた面々が互いに疑心暗鬼になりながらも、脱出方法を探して行く物語となっています。

また、迷宮の壁は、電圧をかけると色が消える特殊ガラスが使われており、迷宮でありながら時折、迷宮全体を見渡す事が出来るという不思議な空間が舞台となっています。

■合わさる2つの物語と、隠された大きな秘密

別々に繰り広げられる2つの物語が、最終的には1つの線に繋がっていきます

エピローグにて、ガラス迷宮で起きた連続殺人と爆破テロについての真相が語られますが、かなり複雑な物語であるにも関わらず、全ての伏線が過不足なく説明されます。

特に、ガラス迷宮では、次から次へと事件が起きて、登場人物達と共に混乱をしてしまう展開が待ち受けていますが、複雑な事件が解明していく様子はとても壮観です。

更に、明かされる表題にも出てくる硝子鳥<グラスバード>に隠された秘密の種明かしも待ち受けています。

■まとめ

序盤から始まるガラス迷宮の連続殺人は、(主要登場人物が登場しないので)次に誰が殺されるかも分からない状況が続きサスペンス感が満載です。

更に、マリアが巻き込まれる爆破テロが同時進行で描かれるので序盤はストーリーを追うだけで楽しめるようになっています。

大きく分けると2つのトリックが隠されていますが、両方とも大がかりなトリックで見応えも十分あります。

登場人物の大半が外国人なので、名前を覚えるのに最初苦労してしまう事もありますが、真相を知った後に読み返してみると新たな発見があり楽しめる作品です!

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