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塵箱の中の小説

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とりあえず書いた小説をアップしてます。主に私小説です。本来ならゴミ箱に捨てるような駄文ですが、読んでみていただけると嬉しいです。はい。
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心霊体験。

チョンコウいこうぜ

これが高校生の頃の合言葉だった。地元の小高い山の上にチョンコウはあった。

正確には朝鮮初等中学校だか、なんだかそんな名前の廃校だった。そこは本当に学校の怪談に出てくるような廃校だった。

17歳の僕は夜中に友達と何度もそこに行き、肝試しがてらに、満点の星空と綺麗な夜景を見に行っていた。小高い山の上にあるチョンコウはの屋上からは地元の街が一望できた。

高校生になり酒を覚えた

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里子の話。

何の気なしにあることを思い出すことがある。何かを思い出すと、頭はそのことをより思い出そうと働く。そして、それをだんだん思い出していくうちに、なぜそれを急に思い出したのかは忘れてしまう。

さっき丁度そんなことがあった。10年ほど前に東京で仕事をしていた頃の話だ。

当時の僕はマネージャーとして、20人くらいの飛び込み営業アルバイトのリーダーをしていた。そのバイトの中に大和里子(おおわさとこ)と言う

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蛍火は雨に溶けて

理由はひとつもなかった。ただ何となく、本当に何となく僕は病院に寄ったのだった。

お決まりの朝寝坊をかましてしまい、今からだと予備校の一限には間に合わない。別に誰に咎められるわけでもないのだが、僕はいつもの気まぐれで一限をさぼり、祖父の「ジジ」が入院している病院に寄ることにした。

ジジは末期の喉頭癌だ。どうやらもう長くはないらしい。ちょうど1週間ほど前に危篤状態になり、家族総出で病院に向かったの

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