私宛の手紙
あなたは「難しい病気になって、困ったことになってしまった」なんて思っているようだけれど、そんなことはないのかもしれない。
なぜなら人生に於ける困難とは、決して病気だけとは限らないから。
そして過去の記憶とは、あなたが作り出した幻なのかもしれないから。
あなたは「私の20代を病気によって奪われたくない」と感じているようだけれど、そんなに焦りを覚える必要はないのかもしれない。
なぜなら、人生の輝きというものは、人によって時期が違うのだから。
先に咲いた方がよい、後に咲いた方がよい…そんな風に比較の概念で人生の良し悪しは決められるものではないのだから。
あなたは「明日も明後日も、このままの生活が続くのだろうか?」と心配しているようだけれど、そんなことも考えなくてよいのかもしれない。
なぜなら、明日や明後日が本当に来るかなんて、誰にもわからないのだから。
来るかわからぬ未来を憂いて、今を台無しにするほど、もったいないことがあるだろうか?
今日も変わらず太陽が昇る。
少しずつ日が長くなるのを感じる。
そして日は影っていき、月光があなたの寝顔を優しく撫でる。
そんな自然の中に生きるあなたは、実にちっぽけである。
自分では、自分をとてつもなく大きな存在だと思っているようだけれど、そんなことはあなたの思い込みである。
草や、花や、土…あなたの愛する自然と同等の存在であり、その一部なのだ。
月の満ち欠け、潮の満ち引きのように、人生にも大きな波、小さな波があることが、ようやくわかりかけてきた。
その波のうねりの中を一生懸命に生き、思いやりをもって今を大切にすれば、それでよいのではないだろうか。
自分に誇りをもって、うつむかずに歩き続けていけば、いつか本当の光のもとへ、辿り着くのではないだろうか……
私宛の手紙に切手をペタリと貼る。
あなたが大好きなたんぽぽの花の切手を。
いつかあなたの笑顔がたんぽぽのように、太陽に向かって輝くことを願って……
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