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トム・クランシー「米露開戦(上・下)」(徳間文庫)

★10月13 テレビ体操、通算5,039日目。トム・クランシー+マーク・グリーニー(田村源ニ訳)「米露開戦(上・下)」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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 まさに現代の危機を描く近未来小説が、もはや現実となった。この作品は2013年に描かれている。2014年にロシア🇷🇺がクリミア半島を占拠する前である。。しかも9年後のロシアによるウクライナ🇺🇦侵攻を描いたという意味で、まさに預言書。非合法な手段で独裁体制を築くヴァレリ・ヴォローディン露大統領は、格好のモデルが現存している。その腹心であるロマン・タラノフはワグネルのプリゴジン氏がモデルだったのだろうか。大ソビエト連邦の領土的復活を願うヴォローディンは、現在のロシア指導者に主義主張までも一致している。そして彼の国はKGBを実質復活させて、スターリン以来の暴虐と圧政を繰り返している。
 もちろんアメリカ人作家が書いた小説なので、立場は欧米寄り🇺🇸🇬🇧。物語はアメリカ大統領ジャック・ライアン親子の大活躍。ロシア権力の成り立ちと腐敗を、シロビィキやロシアマフィアとの結託という観点から探る。それは巨匠トム・クランシーが遺作として、世界に贈った1,100頁を超える「国際軍事情報小説」。よくよく世界のスパイ組織の内情を調べ上げており、その暗闘がリアルな描写であることが怖しい。この作品を読んで感じるのは、本当のエリートというのは役人であり、金融界の人なのだなという印象。アメリカ🇺🇸やイギリス🇬🇧の登場人物の活躍に、特にそれを感じる。いかに戦争を大きくしないか、終息させるか。そんな切実なテーマの格好の教科書となるはずだ。そして現実の世界には、ジャック・ライアンのような優れた大統領はいないということも、ロシア軍事研究家の小泉悠は解説で述べている。


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