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あほやん 切望から・・・・(1620字)


待ちに待ったクリスマス。
好きな彼女と二人で過ごせるクリスマス。
そして、今日こそ・・・。

デートコースを順調に済ませ、最後のディナーに彼女をいざなう。
此処は高級料理店。
予約もそう簡単には取れないお店。

二人きりの個室に案内された僕は、夢心地。
彼女もきっと喜んでくれているはずだ。
彼女の笑顔でそれが判る。
美味しそうな料理が運ばれてくる。

豪華な料理を見て、微笑む彼女。
その彼女の姿を見て悦に入る僕。

「メアリーさんは、何がお好きですか?」

「私は、何でも食べます。嫌いなものは無いです。
  此処にあるどの料理も美味しいそうですね。」
  と、ご満悦。
「そうですか?ご遠慮無くお食べ下さい。」
そういえば、彼女との食事は今回が初めてである。
出会って二か月経ってはいるが、
今日で3回目のデート。
想い起こせば、・・・で知り合った。

彼女と会った時、彼女の美貌に一目惚れの僕。

「私は、美味しい物は幾らでも食べることが出来るの。」
と、嬉しいそうに呟きながら食べる姿がとてもセクシー。
僕は微笑みながら彼女を見ている。
「メアリーさんは、好きな物は最初に食べるの?
それとも最後にするの?」

「私は、最後に食べるの。一番好きなの物は一番最後。
 楽しみを残す方よ」

「そうですか。私は好きなものは一番最初に食べます。
ゆっくり食べてくださいね。
逃げていきませんからね」
と、戯けた感じで言ってみた。
「逃げられたら、困るわ。好きな物に」
と、何故か眼光が鋭い。

この、部屋から夜景が美しく見える。
街の明かりがイルミネーションの様に輝く。
舞い散る粉雪が、彩りを与えロマチックな雰囲気を醸し出す。
舞台は整った。

今日こそ告白しよう。
私は意を決して
「メアリーさん。僕と・・・・」
と、言ったところで言葉が詰まる。
言えない。告白して振られたら、
僕は立ち上がれない。

僕の言葉が聞こえないのか、
食べる事に夢中のメアリーさん。

メアリーさんは、外人だろうか?
顔は外人ぽいが、日本語非常に上手だ。
時々、方言もでる。
でも、名前がメアリーだ。
もしかするとハーフかも知れない。
考えてみると僕はメアリーさんの事を何も知らない。
年齢も知らない。
知っているのは、顔だけだ。
アツ化粧しているメアリーさん。
本当の素顔をまるで知らない。
知らない人と、こんな所で食事をしている。
それも高額な料理で、もてなしている。

段々と不安が重なる。メアリーさんは独身だろうか?
と、疑問が湧く。

「メアリーさん、あの〜、つかぬ事をお聞きしますが、
お名前は本名でしょか?」
と、無難とこからの質問。
「本名な訳無いじゃない。」
と、軽く言われる。
「本名は何ておっしゃるのですか?」

今までの笑顔が消えるメアリーと名乗る女。
「出会い系で知り合っただけなのに、
 本名何て言えないわ。」
と、急に態度が冷たくなる。
だけど、僕は根性を出して聞いてみる。
大事な事だから。

「年齢はお幾つでしょうか?結婚はされているのでしょうか?」
と、勇気を持って聞いてみた。
冷やかに睨む女。
その表情は明らかに僕を嫌っているのが判る。
「貴方馬鹿なの!出会い系で出会ったのよ、
遊びの関係に年齢も既婚も何も関係ないわ」
と、凄みながら言う女。
百年の恋が一瞬にして消えて行く。

僕は純情過ぎる古いタイプの男。
…こんな、遊びで付き合うのは嫌だ!
付き合う時は真剣に付き合いたい…
と、心で絶叫しながら、残った料理を食べていた。

「あんた、これからどうするの?私と寝たいの?
残念だけど、私次の予定があるから、先に帰るね。
クリスマスは書入れどきなのよ。
後二人も予約入っているの。
じゃ、先に行くね。名刺渡して置くわね。
私に会いたかったら、此処にきてね。
待っているわ」
と冷やかに言い残し女は消えた。

切望のクリスマスが、
悲しみの絶望のクリスマスと変わった。

人って怖い!

僕の絶望感は言葉にならない。
怒りの感情が湧くだけだ。
どの様にリベンジするかを考えていた。
そして高額な料金を支払い、街に出た。
彼女に復讐する為に。

追伸
この続編が 心の声 です。
下にURLを貼り付けておきました。
ご興味がありましたら御覧くださいね。

#絶望のメリークリスマス

https://note.com/yagami12345/n/n5e8e7fb340fe

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