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アイデアに価値はないと言われる国で

(注意)
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アイデアは組み合わせにすぎないという悪しき価値観

アイデアは何かと何かの組み合わせであるとはなんちゃらヤングがアイデアのハウツー本に書いているらしく、その本の影響を受けた人が日本にはたくさんいる。そんなところから「こども×刑事」みたいな発想の映画がつくられたりする。「こどもなのに刑事!面白いですね〜」…ってなりますか。ぼくはなりません。単純すぎて観る気にもなりません。それを受け入れてくれるのは、一部の刑事ものを愛するマニアだけだろうはっきり言って。

「アイデアは単なる組み合わせであり、価値はない」と言える人は、良いアイデアの大事な要素である「人を魅了する」という観点を忘れている。
つまらないアイデアで良ければいつでも出すのでぼくに相談してください。


組み合わせたらすぐに面白くなるわけじゃないという当たり前の話

松本人志が数十年前に「面雀(おもじゃん)」という遊びをテレビでやっていた。単語を組み合わせて新しい言葉をつくり、その言葉の意味を松本が説明して笑いを取るというやつだと思う(見たことない)。

ぼくはその遊びを大学の先輩から聞いて、よく大学のサークルの部室でみんなで集まって「面雀」のような遊びをやっていた。5センチ×8センチくらいに切った紙に各自が自由に単語を書いていき、それを集めて裏返しにしたものをテーブルの上に積む。そこから各プレイヤーにポーカーのカードを配るように5枚ずつくらい紙を配る。テーブルの上に残っている積まれた紙束の一番上の1枚をめくると、例えば「横綱」という言葉が出る。そこに各プレイヤーが自分の持ち札から面白そうな組み合わせを考えて提示していき、一番おもしろかった人が勝つ、みたいな遊びをやっていた。(説明が難しい)。

テーブル上に「横綱」という言葉が出ているとき、自分の持ち札に「犬」「山田」「寿司」「吹雪」「ステルス」を持っていたら、「山田」を出して「横綱山田」とすることもできるし、「ステルス」を出して「ステルス横綱」にすることもできる。「横綱山田」と「寿司横綱」と「ステルス横綱」のどれが面白いかなあと思いながらカードを切るのである。

そんな遊びを延々と繰り返していたので、アイデアは組み合わせだ、と言われると「確かにそうかもしれん」と思うことはある。しかし、組み合わせたところで笑えるアイデアと、笑えないアイデアがあることを忘れてはいけない。大抵の組み合わせは、「ふーん…」としか思わないのだ。

アイデアを大事にした国と大事にしなかった国の話

話はガラッと変わるが、先日「ビジネスモデルには垂直統合型と水平分業型がある」というような内容の本を読んだ。
垂直統合型のモデルは、アイデアを出して形にして売るところまで全部ひとつの会社でやる。高度成長期の日本メーカーはその典型で、全部自社かその子会社を使って生産する。一方の水平分業型のモデルは、アイデアを出すのは自社でやるが、形にするところは分業で別の会社に発注する。できあがったものを売るところは自社でやる。アップルがその典型で、iPhoneにはデザインinカリフォルニア、組み立てin台湾と刻印されていた(今はない)。

どちらのモデルにも一長一短があり、日本の高度経済成長は垂直統合型のビジネスモデルに支えられていたという。ソ連が第二次世界大戦後に発展したのも、国家として垂直統合型だったことに起因すると。垂直統合のほうが生産プロセスがスピーディで価格も調整しやすい。そのやり方で日本製品は世界を席巻。アメリカ製品を蹴散らし、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われるほどになった。
しかし、冷戦終結とともに(?)、うまく行くビジネスモデルにも変化がおとずれる。グローバル化が加速し、自社で全部やらずに外注でええんやないか?という考えがアメリカン企業に沸き起こってくるのである。その結果、アメリカ国内のブルーカラーは失業の危機に瀕するわけだが、アップルのように台湾で組み立ててもアイデアさえ良ければいけるという企業のほうが調子いいのだからしょうがない。

垂直統合型のビジネスモデルで鍵になるのは、製造業の技術力の高さである。日本製品は技術力の高さで他を圧倒し、「メイドインジャパン」が価値を持つようになった。
もう数年前のことになるが、台湾に行った時に「日本製」の文字がデカデカと表示されている広告を見て、今でも日本製はブランドとしての価値を持っているかもと思った記憶がある。しかし価値があるのは技術力の高さであり、壊れにくい、安心感があるということで、アイデアが優れているということではない。

水平分業型のビジネスモデルで鍵になるのは、アイデアである。デザインとも言い換えてもいいかもしれないが、どういう感じで設計するかのアイデアが良ければ、製造の部分は外注してもしっかりとしたクオリティのものをつくることができるようになった。手仕事の技術はコモディティ化しにくいが、機械化された技術はコモディティ化しやすいので外注でも良いということになってしまったのだと思う。

そんなわけで垂直統合型の成功体験にどっぷりと浸かった日本企業は、世界のビジネスが水平分業型になっても方針転換できず、その後も衰退を続けてしまったというのが平成の30年とか令和の2年くらいだと。

…というのが『「産業革命以前」の未来へ』(野口悠紀雄・NHK出版新書)を読んだぼくの理解だが、この要約は間違っているかもしれないので詳しく知りたい人はぜひ読んでみてほしい。

要するに、ビジネスモデル的にもアイデアが重要だった時代がここ数十年だったという話。
しかしアップル社がチップを自社でつくるようになっているので、この話も今となってはもう少し割り引く必要はあるかもしれない。アップル社にも「スピーディにする」「軽量化する」くらいしかアイデアがないのだ。

アイデアに価値はないと言われる国でやられていること

アイデアに価値はないと言いながら、現代日本がやっていることはオリンピック開催と万博開催とリニア新設である。オリンも万博もリニアも過去にやったことをやり直しているだけである。よく言われていることだが、日本はアイデアを輸入してそれをブラッシュアップすることは得意である。しかしそのブラッシュアップもうまくいかなくなっているのが現代日本ではある。1964の五輪のほうには大義名分もあり、批判はあったとはいえ「成功」している。万博も、日本人が世界の扉を開けるという意義を果たした。リニアに至っては単なる環境破壊である(異論はあると思うけど)。

アイデアに価値のない国では技術が発展する

「アイデアアイデアと言いながらおめえさんはどうなんだ?」と言われると、もうグウの音も出ません。ぼくはまるでアイデアを持っていないのでこの体たらくである。ぼくの体たらくぶりを見て、アイデアの重要性を少しでも感じていただきたいものである。そんなわけでぼくは、アイデアを出した人を尊敬するし、アイデアに価値はあるとずっと思っている。

アイデアに価値を見出さない国ではどうやら、技術が発展するらしい。
イラストレーションの世界だけを見ていても、これだけデッサン力の高い描き手が多い国は他にないだろうと思える。アメリカやヨーロッパの国々のイラストレーションと比べても、技術力的には日本のイラストレーターのほうが総合的に見れば高いと思う。しかしアイデアという点では、ぼくは日本以外の国のイラストレーターに軍配が上がると見ている。

『芸術起業論』(村上隆/幻冬舎)にも、日本人の技術力の高さについて書かれていた。しかし、欧米のマーケットを相手にしている時点で、技術力の高さだけでは評価されないとも書かれている。欧米のマーケットが評価するのは、今までに誰も考えていないアイデアであること。そして過去の文脈を踏まえていること。そのルールをわかっていないとアーティストとして海外では評価されないという。

ぼくの見たところ、日本人の技術力がなぜ高くなるかといえば、アイデアを考える時間を技術向上に投資しているからである。時間は有限なので、アイデアを考えている時間をつくれば、技術力を高めることはできない。技術力を高くしようとすると、アイデアが疎かになる。そこを両立させている人は本当にすごい。ちなみに億単位の価格がついた村上隆のフィギュア作品は、アイデアは村上隆で、制作はフィギュア職人である。

今日の結論

結論は、アイデアには価値がある、だけである。アイデアに価値がないという意見が大半の国では、良いアイデアが生まれることなんてないんじゃないだろうか?よろしくお願いします。

ついでの書き散らし

なぜ日本では『パラサイト』がつくれないのか?
なぜ日本ではAirbnbが生まれないのかUber eatsが生まれないのか?

できあがったあとに見ると、「アイデアとしては大したことないね」と言えてしまうのがアイデアの悲しいところである。『パラサイト』を見て「その手があったか!!」と驚く人は、アイデアを考えている人だけで、アイデアを考えない人は、「ふーん、まあ格差問題とか、いま旬だよね」とか言う。格差問題は確かにある。寄生虫も確かにいる。『パラサイト』を観たあとなら、格差問題×寄生虫だと分析はできる。「それオレも考えていたよ」とも言える。でもその掛け算を、高台に住む金持ち・半地下の住人・金持ちの家の地下というアイデアに落とし込める?家庭教師から徐々に寄生していくアイデア思いつく?金持ち一家の専属運転手をクビにするアイデア思いつく?運転手の匂いがなんか気になるんだよなあというセリフ思いつく?

Uberに関しても「はいはい、シェアビジネスね。あるね〜流行ってるよね」とか、サービスがロ〜ンチされたあとなら言えるわけだけど、地図上でどこに車があるかわかるようにしようとか思いつく?シェアしたら安くなるとか、混んでるときは値段あげようとか思いつくんだろうか?

アイデアには価値がないと言いながら人を魅了するアイデアが出せないのなら、「アイデアに関してはちょっと黙ってたらどうでしょう?」とぼくは思っている。「こども×刑事」みたいなつまらないアイデアなら、そりゃいくらでも出ますよ。大事なのは人を魅了できるかどうか。人を惹きつけるかどうかだろう。


(補足)
技術とアイデアの区別がいまいちな気もするけどとりあえずアップします。あと「こども×刑事」のアイデアが好きな人にはあらかじめ謝罪しておきます。申し訳ありませんでした。よろしくお願いします。


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