【詩】 春の日に生まれたきみ
きみが生まれた日
気温が初夏のように上がり
なりたてのおにいちゃんは
Tシャツとサンダルで病室に来た
きみに見向きもせず
わたしにも目をあわせず
アイスキャンディーをなめながら
いっしょに「おかあさんといっしょ」のビデオを見た
きみが生まれて3日目
きみの眠るベビーベッドを
2才半のおにいちゃんは
自分が押すと言い張った
つけたばかりの名前を言わず
きみに あかちゃん と呼びかける
あかちゃん おにいちゃんがいてうれしいって と言ってやる
きみのおにいちゃんは ずっとおにいちゃんをほしがっていた
きみを家に連れ帰った日
出る前は硬いつぼみだったチューリップが
花びらを広げ咲き誇っていた
春が満ちる 庭にも どこにも
通り雨が連れて来た大輪の虹を
その日みんなで見あげた
先に生まれたおにいちゃんは
わたしたちを親にしてくれた
春の日に生まれたきみが
みんなを完成してくれた
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