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「数字をとらえる」ことで、次が動きだす

数字をとらえることで、「共通の認識」という「基準」が生まれます。そこからやっと、「いま」が良いのか悪いのか、次にどうするのか、という議論が始まります。
今回は、私が経験した、ささやかながら大切なエピソードをご紹介します。

先回のnoteでは、「共通の数字」によるコミュニケーションの大切さ、言い換えれば、管理会計から得たエッセンスをお伝えしました。

今回は、数字によって現状をとらえることの大切さをお伝えします。
なお、先回のnoteはこちらです。

1. 数字を見なければ、始まらない

1つ、「なんとなく、悪い状況に陥っていた、とあるレストラン」というエピソードをご紹介しながら、数字で現状をとらえることの大切さをお伝えしたいと思います。

新潟の会計事務所で勤務していたころ、プライベートでとある個人経営のレストランを訪れました。
料理は美味しかったのですが、やや気になることがありました。店内の手入れの仕方やお客さんの出入りから考えて、おそらく儲かっていないのだろうなと感じたのです。

そこで、私は不躾ながらお手紙を出し、何か協力できないか、と申し出ました。
数日後、お返事が届きました。やはり経営が苦しい、とのことでした。


なんとなく、よくない状況に

私はすぐに、お会いすることにしました。
そのレストランはご夫婦でやっていらっしゃいました。以前は駅前にお店を構えていて、だいぶ繁盛していたようですが、お子さんが生まれたことをきっかけに、住宅地に店舗兼用の自宅を構えることになります。

奥様から聞く話によると、それ以降、なんだか経営状況がよくない、というのです。

確かに、お店は住宅街の奥地にあり、立地条件としてはあまりよいものではありませんでした。
しかし、経営状況が悪くなったのは、それだけではないのでは、と、直感的に思いました。というのも、多少立地条件が悪かったとしても、最近はアプリサービスなどでお店を見つけることができます。
それにこのお店は新規開店をしたわけではありません。以前からの常連さんもいらっしゃる中で、客足が遠のいていたのです。

決して立地条件ではなさそうなのですが、どうもお話を伺う感じからして、原因が判然としませんでした。

しかし、ご主人の一言で糸口がつかめました。

「ここ最近、お店の売上をまともに集計したことがない」


2. 意外と向きあっていない、数字

ここ最近の売上をまともに集計していない、というご主人の一言を、皆さんはどう感じられたでしょうか?

あり得ない、信じられない、と感じたでしょうか。
たしかに、よくない状況です。しかし大なり小なり、こうした状況というのは起きうるものです。

例えば、会社の予算管理やご自宅の家計簿で、数字が出ているはずなのに、しっかり見ていない、あるいは、数字が出ているはずなのにうろ覚え、こういった状況だと、身に覚えがあるのではないでしょうか。

すなわち、数字と向き合っていない、のです。


1年分の売上を集計

まずやったことは、過去1年分の売上を再集計することでした。
*普通、決算をまとめているはずだろう、と思うかもしれませんが、個人事業の方にはたまにしっかりまとめていない方もいらっしゃいます。

すると、ご本人も落胆していらっしゃいましたが、年間の売上が1000万円に満たない状況でした。

年収ではなく年商ですので、そこから材料費などが引かれることを考えると、とても厳しい数字です。

厳しい状況ではあったものの、その一連の流れの中でご主人がおっしゃった一言が印象的でした。

「体重計に乗るようなものだな」

そうなのです。
例えば、「今よりもスリムになりたい」と考えたとしても、現在の体重を知らなければ始まりません。
体重をどのくらい減らしたいのか、それをいつまでに実施するのか…などなど、現状を知ることで、考え始めることができます。

私が関わったレストランも、小さな一歩かもしれませんが、売上を集計することで、すなわち、数字をとらえることでやっとスタートラインに立ったのです。

数字をとらえたことで、

・現在の数字をどのくらい伸ばしたいのか
 =年間の目標
・毎月、どのくらいの数字を目指すのか
 =月間の目標
・毎月(あるいは毎日)、どう行動すれば良いのか
 =アクション・プラン
・どの月が月間目標の達成が難しそうか
 =シナリオ・プランニング

といったことを考えることができるようになります。

また先回、「共通の数字」によるコミュニケーションの大切さをお伝えしました。
今回も同様で、数字をとらえたことによって、コミュニケーションが生まれます。

私が関わったレストランの場合は、漠然と「以前よりよくない」と感じていたものが、どのくらい悪くなったのかを明確に知ることができ、またはっきりとした数字をもって、ご夫婦で会話ができるようになりました。

ささいなことかもしれませんが、非常に大切なことだと私は思います。


3. まとめ:数字をとらえることで、動きだす

今回は、私が経験したとあるレストランのお話をお伝えしました。

今は転職をしたので、もう担当ではありませんが、そのレストランはなんとか持ち直すことができました。

今回のエッセンスは、ビジネスにも置き換えられると思います。
数字をとらえること、しっかりと向きあうことが大切です。予算や目標、あるいは過去の実績は、飾りではありません。

不確実性の高い現代なので、予算や過去の実績に縛られてもいけませんが、しかしまず認識してはじめて、現在の状況を明らかにすることができます。

数字としっかり向きあってはいかがでしょうか。

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