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本と公園② 〜行きより帰りの方が荷物が多い〜

雨上がりの蒸し暑い日だ。
日本らしいなとジメジメした空気に少しうんざりしながら、今日も屋台に本を乗せて公園に行く。日差しもそこそこなので日焼け止めは必須。(ちなみに屋台は羽がついたり棚がついたり、先週より少しだけグレードアップ)

数年前までは高校球児として1日中日差しの下にいたのに、いつしか日焼け止めを塗るようになった。高校野球を引退するまでほとんど日焼け止めなんて塗ったことがなかったから、長期的に見ればもう手遅れなのかもしれないが、せめてもの抵抗。

今日は先週よりは天気が良いので、公園に行った時点で人がちらほら見受けられた。さらにたくさんの保育園児が遊びに来ていた。大きな声を出しながら天真爛漫に走り回っている。
「虫がいた!」「くるまだ!」「わはははは」
微笑ましいね。
ただやはり屋台に本を乗せてパソコンをいじっているなんて怪しいのか、「そっち(僕の方)にはまだ行かないでー!」という保育士さんの声が聞こえてくる(笑)
若干の寂しさを感じつつも、園児の数が多いし、保育士さんも大変なんだろうなと思う。僕のところに連れて来て、絵本を読みたい園児たちに自由に読ませる時間を作ったほうが楽だと思うんだけどな〜

そんなことを考えているといつもお世話になっている近所のママさんが来た。まちのカフェで行われている読書会に参加しているそうで、その課題となっている本を読みに来たらしい。
今はダーウィンだそうだ。僕の知り合いでも何人かその読書会に参加している人がいるが、「二宮尊徳が、、、」「これがピュシスだ、、」と読書会で語り合ったのであろう言葉を口にするようになった。あまり声を大にしては言えないが、僕はそれが小難しい言葉を覚えた直後から使いまくる小学生のようで少しおもしろいと思っている。決して馬鹿にしているわけではない。頭で考える前にまずやってみる、難しい言葉を使ってみるという姿勢が好きだ。
そのママさんは本も何冊か持ってきてくれた。水もくれた。屋台の隣にござを敷いて「自分の読んだ本を人に見せるって恥ずかしいよね、さらけだしてる感じで」と言いながら数冊並べ始める。
その感覚はわかる気がする。人に本棚を見せるのは少し緊張する。自分で自分の本棚を眺めている分には興味関心の変遷を振り返ることができておもしろいのだけれど、、、

数分後、その知り合いのママさんが来た。近所に住んでいて、週末の朝はこの公園周辺を散歩しているらしい。
並べてある本を一通り眺めて「絵本が置いてあるなら子供と来たいな〜、外で本読むのいいですよね」と言ってくれた。
そして1冊の絵本を手に取った。「これ、読みたかったんです」と、『えんとつまちのプペル』を持って少し離れた木陰に読みにいった。

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次は歩くのもヨボヨボのおじいさん。よくこんな暑い日に歩いてるなと思う。中野から電車とバスでここまで来たと言っていた。
市の文化財展示資料室に行きたいらしく道案内。おじいさんが持っていたこの周辺のおすすめの散歩ルートが書かれたパンフレットを見せながら説明して、またトボトボと歩いて行った。無事辿り着けると良いのだけど、、、

そして30〜40代くらいの金髪の女性が自転車でやってきた。明るい感じの人だと挨拶を交わした時点でわかった。
この辺りで育ち、コロナ前までモロッコでゲストハウスをやっていたらしい。コロナのこともあって観光客が来なくなったが今はぼちぼちみたい。モロッコの塩レモンという調味料の話で盛り上がった。現地ではタジン鍋によく入れるみたい。

今度は高齢の男性。市の文化財展示資料室で働いていて、もう少しで交代の時間だから出勤みたい。今週末にこの公園で行われる予定のイベントの宣伝をしてくれた。もういろいろ知っているのだけどね(笑)
雰囲気の良いおじいさんだった。働きたくて働いているのか、働かなくちゃいけなくて働いているのか、、、

ぼーっと1人で本を読んでいると、さっき文化財展示資料室への道を案内したヨボヨボのおじいさん。資料室の方向から戻ってきた。
「資料室に行けましたか?」と離れたところから声をかけると、笑いながら頭を下げた。一安心。
それにしても中野からわざわざ来るんだなぁ。

本を並べてくれていたママさんは午後から用事があるらしく、帰って行った。公園にきた人たちと話をしてばかりいたら結局ダーウィンは読めず。「もう多分読む気ないんだよ〜」と笑っていた。

次に現れたのは隣町から来たおじいさん。
マンション清掃の仕事が終わって散歩をしていたらしい。
話を聞いていくと、どうやら史跡とか歴史的なところが好きみたい。僕の地元の城跡にもいつか行ってみたいと思っている、と話していた。こんなところで地元の小さな城跡の話になるなんて。
35歳までは大学院で仏教の研究をしていて、それからは学術論文の著作権関係の仕事をずっとしていたとのこと。勤続年数が長いからか、すごく誇らしげだった。
仏教が大好きで、今のコロナやロシアウクライナ情勢の解決のヒントになる思想が仏教にはたくさんあるらしい。熱弁していた。
典型的な「おじいさん」」という感じで、たくさん自分のことをしゃべってくれた。よく読む本は哲学書だそう。「久しぶりに青年と話ができて元気が出た」と言い残して帰って行った。

シェアハウスに一緒に住んでいる仲間たちがきた。コーヒーを持ってきてくれたり、パンを持ってきてくれたり。看板やチラシなどのデザインをしてくれたり、アドバイスをくれたり。ありがたい。

次はこれまたいつもお世話になっている方。自宅の一部を改装して飲食店をやられている方だ。
会うといつも笑顔で話しかけてくれて、おおらかで、ユーモアがあって。こんな大人になりたいなーとつくづく思うのだが、どうやら僕には難しそう。
先週のSNSの投稿を見て、次行くよ!と言ってくれていた。
結構頻繁に会っているので、まちの話をしたり、いつも通りよもやま話をする。屋台に屋根が欲しいんだよね、という話をしたらパラソルをいただけることになり、すぐに取りに行ってくれた。
「ただし、やっぱりいらないとか思ってたのと違うとか返品不可で」と笑っていた。
持ってきてもらったパラソルはめちゃくちゃよかった。高さもピッタリ。これで夏も生きていける。一安心。
さらに本もいただけることになった。当初は来週持ってくるよ!と言っていたが、この数時間後には本も持ってきてくれた笑
これも返品不可で!と。
シュークリームとカフェオレの差し入れもいただいて、お腹も心も屋台の設備も満たされた。

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そして僕が週1でお手伝いしている野菜配達でお世話になっている方が車で通りかかった。このまちのことを知り尽くしている方だ。
「あの人がきたよー」とか「こんな感じですよー」と話をして、何の流れでそうなったのかは忘れたが、アウトドア用のイスをいただけることになった。

それから1人で本を読んでいると、チャイムが鳴り響く。近所の小中学製の下校の時間だ。
たくさんの生徒が公園を通って帰るのだが、先週と同じく、若干怪しげに見ながら通り過ぎていく。
でもなかには先週の活動を覚えてくれていたのか「あ、本と公園だ!」と言ってくれる生徒もいた。活動2回目にして覚えられるものなんだな。

さらに先週と同じく、維持管理のおじいさんたちが通り過ぎる。
市役所の担当課にも話が通ったからか何も言わないどころか、少し離れたところを通って行った。普通に話しかけにきてくれたらいいのにな笑

まちの中で仲のいいおばあちゃんがきた。午前は公民館で太極拳をやってきたみたい。自転車でまちなかを走り回っている元気なおばあちゃんだ。何歳になっても新しいことを学ぼうとする姿、困ったらすぐに周りを頼る姿は密かに尊敬しているところでもある。
これまたコーヒーの差し入れ。今日はもらってばかりだ。そのおばあちゃんは自身の母親を家で介護している。先日は家に帰ってきたら母親がどこかに腕をぶつけて血だらけになっていたそう。今回だけではないよなと思い、市の緊急時連絡サービス(月500円で緊急時にボタンを押すとセコム?が来てくれるサービス)に問い合わせてみたが、同居している場合はダメみたい。世知辛いなぁ。

続いて、散歩中の老夫婦。いつも二人でこの辺りを散歩しているとのこと。
興味を持っていろいろ話を聞いてくれた。このまちに30年くらい住んでいるらしい。BRUTUSの「優しい気持ち」特集の雑誌を置いているのを見て、これをプーチンに読んでもらわないとねと笑っていた。

少しすると、維持管理のおじいさんの1人が話しかけてくれた。
今日は調子良さそうだね〜と笑っていた。料理をするが一向に美味しくならないらしい。奥さんのためにつくるものの、反応は微妙。詳しく聞くと、幼いころは台所は女の場所だと言われて育ったんだよと話していた。すごい時代だ。
そして先週の市役所の方もぱらぱらときて覗いていった。明後日にここでイベントがあるからその準備なんだろう。雨予報だから調整が大変らしい。

珍しいお客さん、小学生3人組とその保護者が、屋台が気になって近寄ってきてくれた。小学生たちは近くの小学校に通っていて宿題をしてから来たらしい。えらいね。
普段は公園にはあまり遊びに来ないとのこと。今日は友達の1人がたまたま公園にいたからその流れで公園にいるんだよと教えてくれた。絵本を読んで、レゴ(シェアハウスの仲間が持ってきていた)をして帰路に着く。レゴにめちゃ夢中になっていて、大きい船のようなものをつくり、「ほら見て!」と誇らしげに見せてくれた。GWは家族と従兄弟とキャンプに行くらしい。行き先はわからないと言っていた。キャンプというより、どこか遠くに行くこと自体が楽しみなのだろう。
保護者の方とも話した。住んでいるシェアハウスのことやまちのことなどいろいろ知っていた。興味を持っていろいろ聞いてくれたし、小学校のこともお話できた。
お子さんが通っている学校は教室と廊下を隔てる壁がないらしい。子供同士もいろんな児童と関わりができるし、先生も指導の仕方が変わる。以前から壁がないと聞いてはいたのだが、興味が湧くし、1回見に行ってみたい。

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先週、帰り際に会ったおばあちゃん。
少しだけ絵本を読んで、また来ると言って帰っていった。どうやら読んでいた絵本にとても感動した様子。「子供の涙が大人の涙より小さいものではない」と語って帰っていった。あ、ドイツの小説家の言葉か。
GWはクルーズで奄美大島に行くらしいよ。いい土産話を聞けるといいな。お土産も冗談半分でおねだりしておいた。


人の流れが落ち着いて、シェアハウスの仲間といろいろ話していると気がつけばもう17時。撤収の準備だ。今日もたくさんの出会いがあって、いろんな話をして、いろんなことを考えて。さあ帰ろう。


水、イス、パラソル、本、コーヒー、シュークリーム、カフェオレ。

あれ、なんか荷物が多いぞ。


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次回は都合上5月3日(火)にやります。
本を読みたい方、どんな様子か見てみたい方、何か話したいことがある方、僕に会いたい方、何の用事もない方、ぜひ武蔵国分寺跡に。



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