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組織づくりに必要な社員の心理状態を表す3つの要素


組織をつくっていく時に、従業員のモチベーションをどのように管理していますか?

従業員が熱意をもって、やる気にあふれている状態をつくりたいとマネジメントをしている方は考えるでしょう。

組織を活発にするには、熱意を持つことで従業員が活動的に自主性をもって仕事に取り組もうとします。

では、やる気や熱意、活力など、従業員の心理状態を表すものはいくつかありますが、なにを指標にして従業員の心理状態を評価していけばよいのでしょうか。

今回は組織づくりにおける心理学に基づいて、これらを整理して考えていこうと思います。


大きく整理するとモチベーション職務満足、ワーク・エンゲージメントに分けられます。

モチベーション

まず、モチベーションの用語から整理していきたいと思います。

はじまりとして、1960年代にマズロー(Maslow, A.H)の欲求階層説が提唱され、人間の欲求を”生理的欲求”、”安全の欲求”、”所属と愛情の欲求”、”自尊と承認の欲求”、”自己実現の欲求”に分類しました。

マズローの欲求階層説

欲求には階層性が存在し、一番下位の欲求である生理気欲求が満たされることで上位の自己実現の欲求へと段階的に至るとしています。

次の欲求の欲求を満たそうとすることでモチベーションが生じると考えられています。

欲求は同時に起こる

アルダーファはマズローの欲求階層説を修正・発展し、生存(Exisitence)・関係(Relatedness)・成長(Growth)の3つの欲求に集約しました。この理論をERG理論として提唱しました。

ERG理論の特徴として、高次の欲求が出現するのは低次の欲求が満たされていなくても出現し、同時に起こる場合もあるとしています。

自分が成長をしたいという感情と他人から認められたいという欲求が同時に起こり得ると考えれば納得できる理論かと思います。

モチベーションを動機づけに分類

マクレランドはモチベーションを動機づけというカテゴリーに分けました。
まず達成動機、権力動機、所属動機の3つに、後に回避動機を追加しました。

  • 達成動機:課題や目標を達成することへの動機

  • 権力動機:他人を支配し、影響力を行使することへの動機

  • 所属動機:他人と友好な関係を持ち、集団の一員に所属していることへの動機

  • 回避動機:第一線で活躍することを望まない

ちなみに、マクレランドは業務上の業績を予想する行動特性などを意味する”コンピテンシー”をビジネスに応用した理論家でもあります。

また、共同研究者でもあるアトキンソンは、達成動機の強い人はある事象に対しての達成できる可能性が中等度の時に、目標の動機づけが最も高くなることを明らかにしています。

目標に向かって努力できる人に対して、ある程度の高さの課題を設定してあげることが必要であることがよくわかりますね。

動機づけとは

モチベーションから動機づけの話に移りましたが、ここで動機づけについて少し整理をしておきます。

動機づけは2つに分けられると言われています。
”外発的動機づけ”と”内発的動機づけ”です。

  • 外発的動機づけ:報酬や賞賛や評価などを、外からの働きかけに対する動機づけ

  • 内発的動機づけ:自分の興味や関心などの内面的な要因によって起こる動機づけ。

特に、企業の中では内発的動機づけを高めることで、組織の発展や活性化につながると言われています。

外発的・内発的動機づけそれぞれの方法でモチベーションを高められる可能性があることを覚えておくと良いでしょう。

公平性が少ないほどモチベーションが上がる

モチベーションの研究では、公平性について報告している理論家がいます。

アダムズが提唱した公平理論では、自分と他人を比較した時の不公平感でモチベーションが変わるとしています。

自分のインプット(仕事に対しての労力)に対してアウトプット(報酬)が少なく、他人のインプットが少ない(仕事に熱心でない)のにアウトプット(報酬)が多いような場合、公平感を感じる状況が起こるとします。

アダムズの公平理論

確かに、他人が頑張っていないのに自分より評価されているのをみるとモチベーションが下がりますよね。

ただし、注意して欲しいのは自分に対しての認知が歪んでいる場合もあります。自分が評価されていないと思っていても、自分が思っている以上に上司から見たらインプットが少ないこともあります。

この場合は認知の歪みを解消させてあげる必要があります。

職務満足

職務満足は仕事を通じて得るものです。
そして、仕事の方法や設計によって職務の満足は大きく変化してきます。
例えば、仕事の効率化を考えた時に、ルーティン化した仕事をこなしていく場合はどうでしょうか。

確かに仕事の効率化が上がり生産性が良くなれば、業績も上がります。ですが、個人の能力はあまり活かされず、同じことの繰り返しで次第にやる気が落ちてきます。

端的になってしまった仕事は自分の存在意義を失い、職務への満足度も下がってくる一方となります。

ですので、職務設計をすることは個人の職務満足を考える上で重要な要素となってきます。

職務特性による職務満足

ハックマンとオルダム(Hackman,J.R. & Oldham, G. R.)は職務特性がどのように職務満足をもたらすか明らかにしました。

職務の中核的な次元には5つの要素が関与しているとしています。

①スキルの多様性:仕事の遂行に多様な能力が必要なこと。
②課題の主体性:遂行したことが自分に認知できること。
③課題の重要性:社会などにインパクトを持っている度合い。
④自立性:自由や独創性や任意性。自分自身が職務を通じて、責任を感じるように設計される必要がある。
⑤フィードバック:自分自身の業績に対する,結果についての情報。

この5つの心理的状態が職務の満足につながり、仕事への内発的動機づけを高めます。つまりモチベーションの向上にもつながるということになります。

職務満足の動機づけ要因と衛生要因

職務満足の最も有名な理論はハーズバーグ(Herzberg,F)が提唱した理論です。
職務満足や不満足に起因する要因は2つであり、

①動機づけ要因:満足感との関連性が高い。仕事の達成、達成の容認、仕事そのもの、責任、成長の可能性。
②衛生要因:不満足との関連性が高い。監督の仕方、会社の政策と経営、作業条件、対人関係

としています。

右図出典:Herzberg.F.,Mausner,B., &Snyderman, B. B. 1959 The motivation to Work, New York:Wiley & Sons p.81


図を確認すると、会社の政策と管理が不満足に起因する要因では頻度として高い数字を示しているのがわかります。

また、動機付け要因は、マズローの欲求段階説でみると「自己実現欲求」「自尊欲求」さらに「社会的欲求」の一部に該当する欲求を満たすとしています。
衛生要因は「生理的欲求」「安全・安定欲求」と「社会的欲求」の一部の欲求を満たすとしています。

社員の満足度を高めたい、不満を取り除きたいと考える時に、これらの要素を考えながら組織づくりに取り組むのも一つの方法となります。

ワーク・エンゲージメント

ワーク・エンゲージメントとは、従業員の仕事に対してのポジティブで充実した心理状態を示します。

この概念は近年従業員の心理状態を把握するために注目された指標と考えられています。

オランダ・ユトレヒト大学のSchaufeli 教授らが提唱した概念であり、「仕事に誇りとやりがいを感じている」 (熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)の3つが揃った状態としています。

つまり、ワーク・エンゲージメントが高い人は仕事に対してやりがいを感じ、いきいきした状態にあると言えます。

また、ワーク・エンゲージメントの特徴として出来事や行動などが「一時的」な状態ではなく「持続的」な状態であることが示されています。
ですので、安定していきいきと仕事をしている状態が保てていることをワークエンゲージメントが高いと捉える点に注意する必要があります。

ワーカホリズム、職務満足感、バーンアウトとの整理

熱意・没頭・活力の3つが揃った状態をワーク・エンゲージメントが高いと説明しました。

では、ワークエンゲージメントと近い概念の用語を整理してみたいと思います。

活動水準と仕事への態度・認知を軸にワーク・エンゲージメントを捉えると、ワーカホリズム、バーンアウト、職務満足が同様の概念であげられます。

(出典)厚生労働省 2019 令和元年版 労働経済の分析 p.175

バーンアウト:「仕事に対して過度のエネルギーを費やした結果、疲労的に抑鬱状態に至り、仕事ときにへの興味・関心や自信を低下させた状態」と定義されています。
仕事への態度・認知は否定的な状態であり、活動水準も低いのが特徴です。
ワーク・エンゲイジメントと対になる概念です。

ワーカホリズム:「過度に一生懸命に強迫的に働く傾向」を認めます。
「活動水準」が高い点がワーク・エンゲイジメント と共通していますが、「仕事への態度・認知」が否定的な状態にあるのが特徴です。

職務満足感:仕事をした結果の気持ちの状態を表します。職務満足とワーク・エンゲイジメントの違いは、前者では仕事に対して没頭している状態ではありません。なので、活動水準は低い状態となります。

ワーク・エンゲージメントがなぜ重要か

ワーク・エンゲイジメントに近い概念のものはワーク・ モチベーションや組織コミットメントなどいくつか他の用語もあります。
ワーク・エンゲイジメントはこれらの概念の意味合いを重複して持ち合わせています。

そして、動機づけの結果から感情や認知を評価する指標となっているため、
働く方の健康 増進と仕事のパフォーマンスの向上を同時に実現していくことに注目することができるためです。

まとめ

モチベーション、職務満足、ワーク・エンゲージメントこれらの概要について説明しました。

今後実践編で測定の仕方などを紹介していきたいと思います。


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