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不採算の立て直し…現在快進撃のルワンダから考えてみる

本屋で気になった"らしい"1冊

月に一回程度ですが、私が住んでいるところで駅前の某巨大書店があります。そこでの楽しみは、予算は¥5,000くらいでエイヤ!と文庫や新書を買ってみるという自分だけのご褒美企画を敢行します。

ほとんどの場合、積読ゾーンに鎮座するんですが、たまに読まれるケースもあり、今回はその中の1冊の紹介です。

タイトルは「ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版」

私が何でこの本を買った理由をすっかり忘れてしまいました。ただ、最近買ったのかは間違いなさそうなので、とりあえずは読んでみました的な記事です。

なお、今回の本は初版は1972年に出版されていますが、服部氏による論考(1994年の中央公論寄稿のもの)と大西義久氏の論考が加わった増補版(2009年版)になります。

基本情報

まずはおさらい。

ルワンダ共和国の情報です(外務省のサイト)↓

内陸国であり、西にコンゴ民主共和国、北にウガンダ、東にタンザニア、南にブルンジと国境を接しています。首都はキガリです。

過去には内戦などもありましたが、

世銀の「Doing Business(投資環境ランキング)2020」では、全世界190か国地域中38位、アフリカ第2位という高い順位を占めている。(外務省のサイトより)

と言われており、現在IT立国を目指して、奮闘しております。

本題

そんな中、IMFから1964年、一人の日本人がルワンダの中央銀行総裁として技術援助計画に出向します。日本人の名は服部正也、のちに世界銀行の副総裁となる人物がルワンダの財政立て直しの為に奮闘します。

ルワンダはベルギーの植民地でしたが、1962年に独立を果たします。しかし、当時のルワンダは政情もイマイチの最貧国のひとつであり、財政は大幅赤字状態…というか破綻寸前、だって中央銀行に銀行券がない。追加の経済援助には通貨の立て直し。そんな国家の中央銀行の総裁として、服部氏が出向します。普通にムリゲーですよね。

現場の人であり続けたエリート

大西義久氏の論考にもあるように、服部正也氏が現場の人であり続けた6年がルワンダの今日の発展につながる礎になったことがわかります。

実際、服部氏の記述は、ほとんど日記テイストであり、淡々と話が進んでいきます。

ただ、服部氏はルワンダ人ではないのですが、当時のカイバンダ大統領の経済顧問として指南するシーン、またルワンダ中央銀行の総裁として中央銀行職員と話をするシーン、閣僚たちと議論しているシーンなどを見るにつけ、服部氏がルワンダ人として発言してるんですね。

服部氏が現場の人として、国内のステールホルダーとの交渉というか、地道な折衝の結果、ルワンダが経済再建計画を立案して、通貨改革を行うことに成功します。

服部氏の慧眼、そしてルワンダの今…

と同時に、服部氏はルワンダの国民を決して蔑むことなく、かといって知識として足りない点は教育していこうとし、かつ、ルワンダの強み(農民の発展から経済を立て直す)を活かそうと、ルワンダ人のみならず、他者の力を使い切ったのは見事と言わざるを得ません。

ルワンダの農民の姿を見て農業とルワンダ人商人に活路を見出そうとした点は特筆に値します。

また、(ルワンダに限らず)途上国における人材活用の難しさ、いわゆる先進国からの技術移転の難しさに関する服部氏の論考をみるにつけ、国を富ませるのも、貧させるのも最後は人間なんだなと考えさせられました。

加えて、経済発展を農業生産に依存せざるを得ない国にとって、天候や国際市況は無視できません。そのような意味でも、現在のルワンダ共和国が、農業だけではなくIT立国を目指しているというのは賢い選択だと思います。

服部氏が出向してから約60年、政治的には不安定な時期もありながら、ルワンダが新しい経済国家になるのか? 目が離せないところですね。(了)










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