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読書録:地形と水脈で読み解く!新しい日本史

竹村公太郎『地形と水脈で読み解く!新しい日本史』(宝島社新書)
考古学には地理学の知識がある程度必要である。遺跡の発掘調査報告書を執筆する際、必ず「位置と環境」の章を設け、当該遺跡の立地と周辺の環境を記述する。この際、人文地理学的部分はなんとか記述できるが、自然地理学(というよりは地形学)的部分は記述がかなり難しい。それを克服するため、積極的に地形学の本を読むようにしているのだが、そのうち、地形学で遺跡の立地を読み解くと、従来の考古学的アプローチでは見えてこなかった側面が見えるようになるのがおもしろくなってきた。
本書は、建設省出身の土木工学の専門家が、自身の専門知識を駆使して歴史上のトピックを地形と水脈から読み解いたものである。著者の代表作である『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP文庫)とも共通する、いわばライフワークの研究である。
本書は水脈、主として河川から遺跡(都市、城郭などを含む)の立地を読み解いている。日本の黎明から近代に至るまで、日本は水と切っても切れない関係であった。四方を山に囲まれ、急峻ながら多くの河川に恵まれた日本では、古くから水を大いに利活用していた。陸上交通より水上交通が発達した。古代の都が河川のそばに造られていること、天下人となった信長・秀吉・家康が水上交通を意識した都市づくりをしたことなどからそのことがよくわかる。
非常におもしろかった。ただ、所々に目立つ誤植があり、どうしても気になってしまった(校正がきちんとできているか、いらぬ心配をしてしまった)。


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