096 「安易な"変態"という言葉を凌駕する想像力」が好き <上>

『ネオ・変態論』 -1-

1.
 大学生の頃、数人で、バイトで遭遇したヤバかった客の話をしていた。
その中で先輩(女性)がコールセンターのバイトをしているときに、「めちゃくちゃハアハア息上がってる変態の男に”何色のパンツ履いてるの…?”って聞かれて気持ち悪かった」と言うエピソードが出た。

 僕が「それで、どうしたんですか?」と聞くと、「気持ち悪いから”うわー…”って言ってそのまま切っちゃった。」とのこと。

 僕はこのエピソードに大変憤った。
それは、変態(とされている男)の言い回しと、対する先輩の対応についてだ。

 まず、こういう電話を営業中のコールセンターにかけること自体が、人の仕事を妨害しているから良くないことは言うまでもない。言うまでもないが、100000000歩譲って、そういう電話をすることについては目をつぶるとする。

 僕が憤ったのは、変態側の”何色のパンツ履いてるの…?”という、古典中の古典の言い回しだ。

 平成が始まって何年も経っているのに、変態としての言い回しがいまだに”何色のパンツ履いてるの…?”というクリエイティビティのかけらもない物で良いのだろうか?

 この”変態”は、自らの欲求をこういった(邪道な)行為をすることでしか満たせない、と考えたのだろう。
そして、そういった欲求は、全くの無から生じたとは考えにくく、恐らく何か変態行為をモチーフにした創作物・フィクションから立ち上ってどんどん育っていき、実際の行為に至った、と想像する。

 ではその育った欲求を携えて、自らも変態界の入り口に経って変態デビューしてみよう、となったときに「よし、コールセンターに電話して出た女性に何色のパンツ履いてるの?と聞こう!!!」と思い立って行動に移すって、いやいやいやいや!!!!!!!!!!想像力が死にすぎなのでは!?!?!?!?!?!?!?!?
絶対その言い回し自分で考えてないし、本当は興奮もしていないだろ!?!?!?!?!?!? 安易で典型的なところに落とし込み過ぎだろ。
何かのフィクションで見たものをそのまま流用して、何が”変態”なのか…岡山出身でもないのに千鳥の漫才コピーして文化祭に出てウケて満足しているひょうきん高校生のマインドと同じじゃないか。

 本当は変態でもないし、自分で変態とは何かを考えもしないでわざわざ想像力の死んだ言い回しで仕事中の人に迷惑をかける、その精神、まさにゲスの極み!!!!(自分もハマカーンの言い回し流用して説得力をなくすライフハック)
 もっと本当の変態だったら、「鹿の好きな所7つ言って」とか聞いて『えっ…ツノ、つぶらな眼、せんべいの食べ方、奈良にすげー居るところとか…ですかね…もう思いつかない』「ハアハアハア…もっと言ってくれ~~~~!!!!!!!!あと8つ!!!!!!!!!!」とか工夫しろよ!!!!!!!”何色のパンツ履いてるの?”じゃないんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

2.
 先輩も先輩で、そんな”何色のパンツ履いてるの?”なんて言う古典的な言い回しに対してびっくりしすぎだと思う。
 相手は想像力の死んでいる人間である。”何色のパンツ履いてるの?”という独創性を著しく欠いたハラスメントに対して、女性が「キャー」みたいな反応をするだろうな、という本当に何の面白みのない予測をして興奮していることだろう。
このケースでは、実際に先輩が、そのような反応をしてしまったことで、くだらない人間の乏しい発想を援用するような結果になってしまった。

 これでは、変態側も「この死んだ想像力でこれからも変態界という広い海を渡っていける」と勘違いしてしまうではないか。
それは避けたい。自称・変態に「お前は変態ではなくて想像力のない凡人である」ということを突きつける必要がある。
そうではなくても、最低限こういったくだらない行為を二度とさせないような毅然とした対応が必要だ。

 なので、”何色のパンツ履いてるの?”と言われたら(こいつは想像力が死んでいる、本当の変態ではない。怯えるに値しない人物だ)と頭の中で冷静に処理し、
「黒です。明日は赤の予定です。明後日も黒です。何なら今後一ヶ月の予定をFAXや郵送で10000000000000枚送りますけど!?!?!?!?え!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!!?2秒以内にFAX番号か住所を!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ぐらい言ってやったらどうだ。

 そういう想像力の死んだ人間は、乏しい予想の範疇を大きく越えた対応に「…えっ、あっ…すいません、結構です……」と萎縮して向こうから去っていくことだろう。コールセンターの電話越しのやり取りではその後、直接肉体的危害を加えられる心配もなかろう。
とにかくそんな矮小な輩の思い通りの対応になってはいけない。自称・変態には、ちゃんとファンキーな対応で返すに限る。

 ”何色のパンツ履いてるの?”と言う側もつまらないし、そんなことを言われて引いてしまうのも良くない。
どちらかがクリエイティブな発言さえすれば、もっともっとこの事件自体が展開して、少なからずもっと人に話せるネタになっていた可能性もある。
冒頭にも書いたが、こういった電話をすること自体が問題で、しないほうがいいに決っているが、どうせするならばもっと頭使え!!!という方向の憤りを感じてしまう。

(続きます)


うれしいです。