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神田の占い師さんに30分占ってもらったら長年のトラウマを捨てることができた話

その日、私は酔っていた。

30代になってからみるみる酒が弱くなっていき、その日はわずかビール1杯でご機嫌になり、ツイッターにどうでもいいことを書いていた。

逃げていくばかりのお金。本来は節約しなくてはならない時だ。

だが、何を思ったか私は神田の占いの館を調べ、そこに足を運んでいた。
最近占いを始めたこともあったが、その時ツイートした内容が気がかりで、どうしても後ろ髪を引かれていたのだ。


ほぼ冷やかしのつもりだった。
10分占ってもらったら帰ろうと思っていた。

地図をたどって着いた先は、雑居ビルの三階で、細い階段を登る間「えぇー、マジで行くの?」と思った。

正直、今の私は無敵の勢い。

色んなことに興味を持って、やりたかったことをぜーんぶ実行し、それが楽しくて仕方ないこと思っていた。占われたいことなんてなーんもないよ! と思っていたからだ。

だが入店してしまい、ゆったりとした内装、深く沈むソファで順番を待った。

そして、やってきた占い師さんを見て緊張が走った。めちゃくちゃオーラがある人だったからだ。

胸がざっくり開いたドレスみたいな黒のワンピースに、耳と胸に多くなジュエリーをつけていた。映画に出てくる魔女のようで、叱咤するような声で占いははじまった。

雰囲気のある人だった。少しばかり歳上の、ちょうどタロットの「女帝」……大アルカナの象徴的なカードの中の女王様みたいな人だった。

雰囲気のある占い師さんに気圧されつつ、こちらの事情を話さないままに叱咤から始まった。

「あなた、自己主張が足りていないんじゃない!?」

そんなはずは……と思った。
だって、こんなにもnoteで自分の意見を書いているし、「こんなこと言っていいの?」と思うようなことも沢山言ってきた。

だが、ひとつだけ思い当たる節がある。

私ーー矢御あやせじゃない、丸裸の「私」の主張だ。


さて、肝心な鑑定でのやりとりだが……鑑定結果を聞いているうちに、不思議と涙が滲んできた。
別に悲しいことを言われたとか、怖い未来を言われたわけでもない。

「このままでは運命を動かす車輪が動かないままだよ」とかそんな感じのことばかりだ。

だけど、なぜか言葉に重みを感じ、私は自分の過去の恋愛にまつわるトラウマを話していた。

ひとつめ、修学旅行でホテルの内線で初恋の男の子に告白したら、その先でクラス中の男子を集められて笑い者にされたこと

これを聞いた時、占い師さんが激昂してくれた。
「なんてこと酷いを……!」と言ってくれた。

嬉しかった。

ただただ、嬉しかった。
私はきっと、ずーーーっと私の代わりに怒ってくれる人が欲しかったのだ。

ずっとずっと、悲しい思い出にしてしまった。もっと時間を遡るとバケモノが人間に恋した「罰」だと思っていた。

あの当時はずっとずっと、ずっとずっと、私が悪いから、私が悪いからと時々思い出しては泣いてを繰り返していた。

ふたつめ、4年間容姿を理由に一度も性交渉してくれなかった男性についても、一緒に呆れてくれた。

そして、過去と決別することを強く言ってくれて、占いを続けてくれた。

「人を笑わせようとしなくていいんだよ」

何度も言ってくれた。そういえば、ギャグにしようとしたなんて一言も言っていない。

私のこと、沢山沢山褒めてくれた。

「本当はポジティブなのに、過去のせいだね」

と言ってくれた。

過去を悪者にしてくれたのが何より嬉しかった。

占いをするわりに、占いは信じていないけど、もしかするとカードが出ていたのかもしれない……なんて、信じさせてくれる魔力があの人にはあった。

占い師さんは、時間が過ぎても話をしてくれて、エレベーターまで送ってくれた。

「あんまり鏡を見てないと思うから言うけど、あなたは魅力的。もっと鏡を見て」

最後にそう言ってくれた占い師さんに、私は深々と頭を下げた。

「なんだ、東京の空気もおいしいじゃん」

降りたエレベーター。吸った空気は美味しく、肩がびっくりするほど軽くなっていた。


書いている今わかったことだが、タロットは「当てる」ことが全てではないということだ。大切なのは、その都度自分の意見や現状を伝えることだと思う。
本当に悩みがある人は、それを言っていくことが大切だと思う。

「思い当たる節を探す」ことが「タロットという治療」だと感じている。

もちろんそれを引き出せるのは占い師さんの腕にもかかっている。(コーチング用語でいう「ペーシング」に当たるかもしれない。

今回の占い師さんは聞く技術にものすごく長けていたプロ中のプロだったので、占い師さんによってはそのへんが変わる可能性が高い。

自分も占いを始めたばかりだが、そういった点では大きすぎるほど実りがあった。
次回も神田を訪れたい。

こうしてビジホでnoteを書いている先には大きな大きな鏡がある。
私をよく見てみるとわかる。
随分疲れているし、沢山たくさん泣いてきた。
学生時代から、小説家デビューするまで、毎日のように泣いていた。
本当に辛かった。

髪がどんどん細くなっていき、薬がないと眠れない。
甘いものを食べないと落ち着かなくて、爪は噛まないといけない。
何かをやって失敗したら「バチが当たった」。
バチが当たったから、もう挑戦はしない。
体が動かない日もあった。何日もあった。怠けているんだと自分を責めていた。

挙げ句の果てに、「たくさんの人が喜ぶ顔のために死ぬべきだ」と考えた時すらあった。

そんなのは普通じゃないん。「私だから特別に罰を受けるべき」なんて話、どこにもないんだ。

そう、私を刺して弄ぶトゲトゲでイガイガな過去なんて、ポイしよう。
時々ゴミ箱から出してリサイクルし、どこかの記事にして売ってしまおうと思う。
きっと高い値がつくだろう。

沢山の人を救うことのできるネタになるだろう。

それはもちろん、私が幸せへと踏み出すことが条件かもしれない。

トゲトゲを磨き直して綺麗な宝石に変えてやるんだ。いつか、大金持ちになってあいつらに感謝してやる日が来るかもしれない。

あぁ、幸せになりたいなぁ。

パートナーと楽しく過ごして、私が捧げ過ぎないでもいっしょにいてくれる。
私が無理に笑わせようとしなくても、そばに居てくれる人。
不機嫌で人をコントロールしようとしない人。

理想が高いって言われちゃったので、その分自己研鑽しいないといけないかもだけど……笑

矢御あやせは明日から可愛くなるのでよろしくね!

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