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読書履歴_#6_財務会計と管理会計の違いを歴史から紐解く

読書期間 2022年2月26日

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転職前の東京生活最後に丸善に寄りました。
いつも丸善に行くと、Amazonの欲しいものリストを整理しておき、一気にそれを見に行くがお決まりのパターンです。
その欲しいものリストに随分前に保存していたのが今回の本です。
結論を言うととても読みやすく、会計の概論を理解するには十分でした。

文字数:約2,700

参考図書

第1章 帳簿と持株会社

・舞台は15世紀のイタリアはフィレンツェ
・コジモ・デ・メディチは外国間のキャッシュレス取引を可能とする為替手形を拡大した
・この取引には、各拠点の「入金」「出金」を把握する帳簿管理が不可欠だった
・1494年に数学者のルカ・パチョーリが著書「スンマ」の中で簿記の技術をまとめた
会計は取引を記録し、計算する技術と考えることができる
日々帳簿をつけ、決算日に棚卸することで、『フローの損益計算書(原因)』と『ストックのバランスシート(結果)』の決算書が出来上がる
・調達したお金(資本+負債)で資産を買い、運用して儲けを出す

マンガ 会計の世界史
ISBN978-4-532-32428-5
P6〜P29

第2章 株式会社と証券取引

・16世紀にオランダはプロテスタントによってスペインから独立し、宗教に寛容な姿勢を取ることで商売が栄えた
・1602年に東インド(現在のインドネシア)に東インド会社を設立
・東インド会社は船、港、街を管理し自ら貨幣を発行するほどの規模になった
・これを維持するために巨額の資金を長期的に発行する必要があり、株式会社の仕組みが作られた
株式会社では返済義務のない「出資」、儲けに対する「配当」、取引ができる「証券取引」が用意された
・株主は持ち続けて配当を得るインカムゲインと、株を売却して得られるキャピタルゲインの仕組みも生まれた

マンガ 会計の世界史
ISBN978-4-532-32428-5
P30〜P57

第3章 決算書と監査

・イギリス産業革命の象徴とも言える蒸気機関車
・これを運営する鉄道会社は巨額資金を必要とした
・当時、蒸気機関車は斬新過ぎて一般市民に理解を得られなかったことと、設備投資が大き過ぎて赤字を避けることができず株主への配当が出しにくいことも、出資を得にくい理由
・なんとか配当を出す方法はないかと絞り出した結果、『減価償却』が生まれた
減価償却により、収支計算(収入−支出=収支)から利益計算(収益−費用=利益)
減価償却の誕生により会計は小難しくなり、分かりにくくなった
分かりにくくなると不正を働く人も増えてきたため、会計士による監査が必要になった
儲けは発生主義によって計算されるバーチャルなものとなり、利益と収支は一致しなくなる
・いわば「自分のための会計」から「他人のための会計」に変わった

マンガ 会計の世界史
ISBN978-4-532-32428-5
P58〜P85

第4章 原価計算と連結

・19世紀、アメリカで鉄道ラッシュが生じ、多くの企業が生まれては消えた
・ヨーロッパの投資家達は失敗しないように経営分析に磨きをかけ、決算書から健全性を測る姿勢はこの当時生まれた
・19世紀のアメリカでは製造工程の分業が生まれ、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは分業型の工場のコストを明確にする原価計算を取り入れた
・工場で発生するコストは品目別計算から部門別計算を経て、最終的に製品1個当たりのコストを計算され、売上原価から売値を決定した
・J・P・モルガンは杜撰な経営によって弱った鉄道会社を次々と買収し、経営再建する「モルガニゼーション」を進めた
買収によって規模の拡大を目指すコングロマリットの多くは「持株会社」の形態をとった
・一方で個々の業績は分かってもグループ全体の業績が分かりにくい問題があり、「連結」決算が考案された
連結は個々の会社の決算書をベースに全て足し合わせ、内部取引を相殺消去処理を経て作成する

マンガ 会計の世界史
ISBN978-4-532-32428-5
P86〜P113

第5章 証券市場の改革と国際会計基準

・ドイツで車作りに没頭したカール・ベンツはいくつかの苦難を乗り越え世界中で自動車ブランドになる
・1990年代にドイツ企業であるダイムラー・ベンツはニューヨーク証券取引所への上場を決断する
・その時にドイツでは黒字なのにアメリカでは赤字になってしまった
国による会計ルールが異なることが露呈された
・この事件が世界標準の国際会計基準が必要性の機運を高めた

マンガ 会計の世界史
ISBN978-4-532-32428-5
P114〜P 145

第6章 管理会計とファイナンス

アメリカで製造業が隆盛していたころの課題は景気による需要の浮き沈みに如何に柔軟に対応するかだった
・これに答えたのが、ジェームス・マッキンゼーの考案した「予算管理」
予算とは会社の利益計画を作るための仕組み
・予算管理を使えば、販売・生産部門の調整と、トップが現場の活動を統制できる
・それまでの原価計算が工場のコストを扱うのに対し、予算は全社の利益を扱う
・将来の利益計画に沿って組織管理を行う予算管理は心強い味方になった
・以降会計は『財務会計』と『管理会計』の二本立てとなる
 財務会計(守り):過去の実績を計算
 管理会計(攻め):将来の利益をシミュレーション

財務会計はルールを守る実直さ、真面目さが求められる
管理会計は組織を活性化するための仕組みを自由に設計する創造力が求められる
管理会計の誕生により、未来に目を転じた経営ができるようになり、それに合わせて未来へ投資するマインドも作られた
未来に投資するマインドから生まれたのがファイナンスであり、ファイナンスとは未来の予測をもとに企業価値を計算する

マンガ 会計の世界史
ISBN978-4-532-32428-5
P146〜P 173

<所感>

実際には漫画なので、文字だけでなく面白い描写などもあり、あっという間に読み切ることができました。

えっ?J.P.モルガンがこんなことを?
ジョン・F・ケネディの父ちゃんってこんな名の残し方?
ベンツも苦労したんだな・・・

などの感動も随所で感じながら会計の歴史を一つの線で結びつけることができました。

お恥ずかしながら、財務会計と管理会計の違いを理解していませんでした。
おまけにファイナンスもごっちゃにしていました。

実際に事業計画を作って、週次・月次で予実管理をしていましたがこうした基礎知識が必要です。
また自分たちが今使っている予算管理シートがどういった歴史の下に成り立っているか知っているだけでも感慨深さが違うと思います。
面白い本でした。


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