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人工知能にヘヴィメタルを描かせてみた Re:visited

人工知能で絵を描くのが楽しい。キーワード(プロンプト)を打ち込むとそこから画像を生成してくれますが、人類の共通無意識と会話してるような気になりますね。無意識にプールされたイメージの海から喚び出して来る感覚。

何億枚という人類史の画像データベースから「このキーワードに紐づいたイメージ」を引っ張ってくるのが人工知能。厳密に言えばディープラーニングという学習手法に基づいて作られた画像処理/生成システムです。ここしばらくいじくって、生成の仕方が少し分かってきたので第二弾を書きます。とりあえず現状、作れるようになった画像を5点ほど。

ライカを追いかける犬
人生あみだ
そうだ、京都行こう
毒を食らったスクウェアキャラ
トイストーリー(の犬)好きの家

前回は宮崎駿風のアイアンメイデンとか、「〇〇風にメタルを描いたら」というお題でしたが、今回は「あの有名アルバムの別ジャケットを描いたら」をやって行こうと思います。キーワードとしてメタルの有名アルバムタイトルを人工知能に渡したら、新しいジャケットを作ってくれるんじゃないか。そんな実験です。みんなが知っているメタルの名盤を10枚、行ってみましょう!

Iron Maiden / The Number Of The Beast

UKの誇るNWOBHMの雄、IRON MAIDENの人気・評価ともにトップレベルの作品から。1982年の3rdアルバムで、ここからボーカルがブルースディッキンソンに交代。ただ、ドラマーはまだクライブバー。クライブバーのドラムって独特で、このアルバムはリフとドラムが絡み合う独特な音像になっています。後任のニコマクブレインも特徴的なドラマーですが、クライブバー時代も捨てがたい。

さて、このキーワードを人工知能に与えてみましょう。まずはフラットな状態でキーワードだけ聞いてみます。

なんかそれっぽくなった、きちんとアイアンメイデンは認識している様子。

さて、いろいろおまじないを増やしてスタイルを変えていきます。

お、これはなかなかいい、元アルバムの構図も少し意識していますね
PowerslaveとSomewhere In Timeも混じったようなイメージ
上に鎮座するエディ、その下の悪魔、そのさらに下の小さきもの

元イメージはこちら。


Judas Priest / Painkiller

Heavy Metalというイメージを確立したUKメタルゴッド、Judas Priestが90年代的なスラッシュメタルに急激に接近したPainkiller(1991年作)。本作リリース後、ボーカルのロブハルフォードが脱退してJudas Priest暗黒時代に入っていくわけですが、90年代メタルに果敢に適応しようとした変革期の作品であり、今ではメタルの古典となっています。

それではまずフラットな状態で、人工知能が掬ってくる共通無意識のイメージを観てみましょう。

おお、なんとなくジューダスっぽい

ジューダスプリーストらしさというのは「レザー&シルバーファッション」「バイク」「ハゲ」みたいですね。いろいろ指定を増やしてみます。

歌うロブらしき人

全体的には良いのですが…髪が後頭部に…惜しいですね。後ろから見るとグレンティプトンに見える、という融合でしょうか。あと、マイクの持ち方が変。

ちょっと毛色を変えて、悩むロブ。拘束服を着ているようにも見えます。Painkillerって直訳すると「鎮痛剤」なので、こうした内面に向かい合うようなアプローチもありっちゃありですね。

余談ですが、「Painkiller」だけに反応したのか鎮痛剤っぽいものも出してくれました。Judas Priest印のペインキラー。裏切られそう。

元イメージはこちら。


Metallica / Master Of Puppets

ストレンジャーシングスで再評価されているメタリカのマスターオブパペッツ。アメリカの現代美術館に「現代音楽」として展示されているそう。アメリカの音楽文化の中で確固たる地位を確立している名盤です。本作リリース後にベースのクリフバートンが交通事故で死亡し、メタリカは音楽性の模索と苦悩の時代に。巨大な商業的成功も収めていきます。

とりあえずフラットなキーワードでイメージを抽出。

うーん、なんだかガレージデイズリビジデットなイメージですが、まぁマスターオブ”パペッツ(人形)”なので、パペッツ感があるといえばあるかも。青空にTシャツ、という若々しいメタリカのイメージといえばイメージ。なお、人工知能の特長でよくイメージが固まっていないところは溶けたり歪んだりします。

続いてスタイルを足していきます。

操られる感じは増しましたね。元のジャケットに近い。もうちょっとスタイルを変えていきます。

「操る」から想起したイメージ。ただ、やってみて思いましたがメタリカってイメージが分散していますね。時代ごとにビジュアルも変わっているし、ずっと使われている共通キャラクターもないし、けっこう「これがメタリカ!」っていうイメージは弱いのかも。

元イメージはこちら。


Megadeth / Rust In Peace

メタリカとくればメガデス。メガデスの方がイメージが一貫している気もしますね。こちらもスラッシュ期の総括を行った名盤。時期的にはメタリカのメタルジャスティスに呼応する時期ですね。複雑な曲構成を持ちながらメガデスの方がリフ主体。メタリカってバンドの絡み合いですよね。ドラムとギターの絡み合いだけれど、メガデスはひたすらリフワーク主体。

それではまずはフラットに出力してみます。

お、これ、編集版ベストアルバムのジャケットみたいですね。かなりメガデス感がある。やっぱりイメージが確立されているんだな。

パラメーターを足していきます。

ラトルヘッド、Vicの肖像画みたいになりました。特徴的な口の輪っかがないですが、「メガデスとわかるレベル」ですね。Rust In Peaceって「Rest In Peace(安らかに眠れ)」の言い換えで、「錆び付いて眠れ」みたいな意味。人間からVicに変化していく過程の写真みたいな感じですね。

もう一枚、こちらは「錆び付いて眠る(死者を悼む)」感じも加味されています。髪型からデイブムステイン感もあるし、なかなか良い一枚。

元イメージはこちら。


Ozzy Osbourne / Blizzard Of Ozz 

メタル界のアイコン、オジーオズボーン。ヘヴィメタルというジャンルの祖であるブラックサバスのオリジナルシンガーであり、ソロ転向後はUS市場に果敢に挑戦し、USのメタルブームに乗ってメタル界のアイコンとしての地位を確立します。マネージャーで、のちに妻となるシャロンオズボーンもメタル界の有名人。敏腕マネージャーとして有名です。もともとレコード会社の重役(ブラックサバスのマネージャーでもあったドン・アーデン)の娘なんですよね。シャロンの人脈のおかげでオジーが(公私ともに)生き延びたのは確か。彼女がUSのメタル界に(ビジネス的に)貢献した部分って大きいんじゃないでしょうか。

さて、まずはフラットにキーワードを与えてみます。

おお! めっちゃ分かってる! オジーのイメージははっきりしているし、画像も多いみたいですね。要は「名前を聞いてもたいていの人ははっきりわからない」人だと画像がぼやけるし、「ああ、あれか」とイメージがくっきり出てくる人・キャラクターほど確固とした像を結ぶように思います。それがそのままweb上の画像数(=無意識のイメージの海)として学習データベースに乗っています。

フラットでもだいぶオジーっぽいですが、パラメーターを足していきましょう。

なんだかファンアートの王道感がありますね。Tattooはしっかり再現してくれないのが玉に瑕ですが、まぁ、オジーのタトゥーを完璧に想起できる人はほとんどいないからでしょう。これは雰囲気をつかんでいていい画像。

もう1枚。

「ブリザード」感が出ています。お題は「Blizzard Of Ozz」ですからね。なんでギターを弾いてるんだろう。手が増えてるのはVAI的な速弾き残像なのか。

ちなみに、過程でこんな画像も出てきました。

「Blizzard」だけでOzzがいません。どこいったん。光か。光になったのか。

元のイメージはこちら。


Dio / Holy Diver

オジーと並ぶUSメタル界のアイコン、ディオ。ディオもウェンディという強烈な奥様がマネジメントしていたことで著名ですね。ただ、シャロンと比べるとウェンディはあくまで「ディオの妻」の色合いが強い気がしますが。レインボーでリッチーブラックモアに見いだされ、そのあとブラックサバスに加入して欧州的ハイファンタジーな様式美をメタルのイメージとして確立し、ソロでもUSで成功を収めたパワーメタルの申し子。メロイックサインの生みの親としても著名です。

それではまずはキーワードを入れてみましょう。

分裂した!? どっちもディオに見えますが、北斗の拳みたいにも見えますね。ヴィヴィアンキャンベルとディオが融合して分離したような。ただ、ディオであることはわかります。ディオのイメージもくっきりしているようですね。さすがアイコン。

パラメーターを足していきます。

ハイファンタジー風味。なんだかエルフの長老みたいになってきました。そういえばレインボウに入る前はelfってバンドやってましたからね。エルフ+リッチーブラックモアで作ったのがリッチーブラックモアズレインボウのデビューアルバム。

やっぱりディオはハイファンタジー系ですね、もう少し加工していきましょう。

美化されました。Holy Diverは直訳すると「聖なる潜るもの」で、聖職者とか哲学者みたいなニュアンスです。

元のイメージはこちら。


Helloween /Keepers Of The Seven Keys

続いてジャーマンメタル中興の祖、メロディックパワーメタルの始祖たるハロウィンの出世作、守護神伝を生成してみましょう。稀代のハイトーンボーカリスト、マイケルキスクを弱冠18歳にして迎えシーンに衝撃を与えた作品。第一章が87年、第二章が88年です。

それではまずはキーワード。どんなイメージが生成されるでしょうか。

おお! かなり正確にイメージが出てきました。かぼちゃ、鍵、モチーフがそろっています。なんとなく適当なハロウィン(イベントの方)コンピレーションみたいにも見えますが、Helloween=ジャックオーランタンは正しい。なお、バンドの綴りは「HELL」ですが、イベントの方は「HALL」なので別単語です。

パラメーターを足していきましょう。

お、増えた! 考えてみたら「Keepers」なので複数形ですよね。複数いる方が正しい絵。イメージは自由連想っぽいのでちょっと顔が崩れていますが(確固たるイメージではない)、この構図や世界観はいいですね。

もう1枚。

おお、これは多重的。そういえば元ジャケットの絵ってしわがれた手が出てくる(第一章)んですよね。ただ、それらは鍵を奪い合う善と悪という単純なものではなく、実はひとつの存在の外面と内面、葛藤を表している、という深読みができるいい補完アート。

元イメージはこちら。


Mötley Crüe / Dr. Feelgood

グラムメタル(日本だとLAメタルとも)の雄、モトリークルー。モトリーってセックスアンドドラッグアンドロックンロールを地で行ったバンドですが、Shout At The Devilとか超自然的なテーマも扱っているし、欧州メタル(NWOBHM)との呼応もしていたんですよね。ベーシストがメインソングライターというのもアイアンメイデン的だし、その影響か曲の骨格(コード進行)がしっかりしています。ただ、あまりにひどいドラッグ&アルコールの影響でバンド活動が停滞しつつあった中、全員がリハビリして素面の状態で作られたアルバム。結果として素面で回ったこのツアーで全員夢から醒めてしまい一度目の分解に至ってしまうわけですが、80年代グラムメタルの到達点にして時代に咲き誇った華。

それではフラットに入れてみましょう。

ほう! これは面白い。なんだか顔が崩れていますが、ドラッグで崩れているのだろうか。なんだか毒々しくて世界観にあっていますね。

パラメーターを足してみます。

ニッキーシックスかトミーリー的なキャラクターが出てきました。目が座ってるのがいいですね。こいつがドクターフィールグッドか。そういえばジョジョってモトリークルーのファッションの影響を受けていますよね。

もう1枚はこちら。

いろいろいじっていたら出てきました。なんだか金の亡者感がありますね。なんだか今の集金ツアーをやっているモトリーっぽくもあります…。ヴィンスはもうちょっと節制してほしい。さすがに。

元のイメージはこちら。


Guns N' Roses / Appetite For Destruction

グラムメタルの毒々しさをストリートの荒々しさの中に取り入れて見せたガンズアンドローゼス。80年代後半に現れ、90年代のUSロックシーンの象徴となりました。グランジ・オルタナムーブメントはNirvanaによって爆発しましたが、その下地を作ったのはガンズだったと思います。

さて、ガンズのイメージを見てみましょう。

ガンズというかハノイロックス感もありますが(4人だし)、まぁスラッシュっぽい人もいますね。確かにこんなイメージといえばイメージかも。人々が「ガンズ」と聞いて想起するイメージといえばこんな感じな気がします。

パラメーターを足していきます。

「GUNS」と「ROSES」が前面に出てきました。これはこれでありですね。なんだかバロネスのジャケットみたいにも見えます。

もう1枚。

ガンズはけっこういろんなイメージが出てきますね。「USハードロックのイメージの宝庫」というか。このキーワードで生成するとかなりハードロックっぽい画像が次々とできます。あと、テンガロンハットがけっこう強烈に出てくる。スラッシュのビジュアルインパクトって強いんですね。

元のイメージはこちら。


Motörhead / No Remorse

英国のメタルシーンのアイコン、レミーキルミスターが率いたモーターヘッド。UKに行くとみんなTシャツを着ています。デザインとしても非常にかっこよくて、80年代においてハードコア・パンクスからもメタラーからも唯一愛されたバンドと言われたのもわかります。音楽静的にはメタル確立前のハードロックなんですが、そこから独自の暴走感を追及していった、オジーが「メタルの創設者だって? それはレミーとモーターヘッドだよ」とインタビューで話していましたが、モーターヘッドとブラックサバス、それぞれ違う影響をメタルというジャンルに持ち込んだことは異論がないでしょう。スタジオアルバム決定版がないので(ライブ盤はありますが)、初期のベスト盤のこちらをチョイス。

それではまずはモーターヘッドのイメージを聞いてみましょう。

下の不思議な単語はともかく、しっかりモーターヘッド、レミーのイメージが出てきます。意外なのはウォーピッグよりレミーの方がイメージ強いんですね。

パラメーターを足していきます。

いいですねー。レミーの表情がいい。「No Remorse」というのは「後悔はない」という意味です。初期のベスト盤にこのタイトルをつけてしまうのもさすが。まぁ、ブロンズレーベル(最初に所属していたレーベル)に勝手に出されたアルバムとのことですが、「80年代メタル名盤特集」とかにもこのアルバムが選ばれているんですよね。タイトルも選曲も確かに名盤。

もう1枚。

「後悔なし」そう言って去っていくレミーの姿。レミーは2015年12月28日、末期癌と心不全により死去しますが、死の直前、12月11日までライブステージに立っていました。2016年からもライブの予定は組まれており、ツアー中の死。「Bone To Lose, Live To Win」の座右の銘の通り、勝つために積み重ねる、前進し続けた人生でした。

元のイメージはこちら。


以上、メタル名盤10枚をテーマに画像生成してみました。ファンアートですね。

それでは良いミュージックライフを。

おまけ

ウォーホル風メイデン。

バンクシー風メイデン。

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