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『塩こんぶ』で異世界王女になるぞっ❣️

――陽光と反射。漂う水。
場所は海か広大な湖か。虹色の魚が小さく跳ねた。

『今日も漁……ああ、今日とて漁じゃ』

誰コイツ。まあ、状況がよくわからんがついて行こう。夢なら別に、なんでもいいさ。
魔法の力的なヤツで船は進んだ。理屈を問うと目配せをしてきた……はぁ。

『ああ、我が孫娘よ、網の手入れをぬかったな』
『……ああ❗️ おじいちゃん悪かった❗️ 夢の中で巨大灰色ヒトデの側転の練習に付き合ってたの』
『そりゃご苦労。ワシも若い頃はヘンテコな夢ばかり見ていたよ……ふふ』

まさに今がって感じ。でも、懐かしくて温かな風が心地いいな。山の上には大きなお城。お菓子でできてりゃひと口パクっ。うーん、お腹すいたな。

『あっ、おじいちゃん❗️ あれはなーに❓』
『いかん! 海の底のモノを食べると爛れるぞ!』

海かぁ。じゃあ昆布があるのは当然だね。わたしの大好物『塩こんぶ』の原料……ほしい、欲しい欲しい欲しい❗️

『実例は❓』
『ぬぅ?』
『爛れた実例』
『ぬぅ』

根拠薄弱なクセに適当こきやがってこのジジィ。おおかた詩人の法螺でも信じたのだろう。よその国の慣習を盲信する愚かなジジィ。わたしは海に飛び込んだ。

『い、いかんぞ孫娘!』
ぶくぶく ごうごう もぎもぎ
『TA-DA〜❗️ 昆布ゲット〜❤️  めっちゃウマそうじゃん何で誰も食べんのん⁉️  アホ、バカ、愚かモノ❗️』
『か、かつてだな。東方よりやってきた……その、旅人がな? ソレを口にし、もがき苦しんで10日間寝込んだあげく心肺停止したのじゃ……』
『……ていう、噂❓』
『ぬぅ……』

『あ、ちょっと待ってね……【塩こんぶ 作り方】』



『できた❗️』

『ほ、本当にソレを食べるのじゃな?』
『しつこいなぁもう。どれどれ……』

『う、うまい❣️  カンペキ❗️  わたし天才❗️』

『ぐぬぅぬ……』
『なにが「ぐぬぅぬ」だ❗️  ほら、ひと口食べてみて❗️』

……

…………

『ふおっ!? うまい!?』

ジジィはわなわなと震えだした。どーした❓

『こ、これなら叶うかもしれん……! 王への謁見、引いては、ワシの長年の夢【お城の石壁にほっぺた当てて冷んやりFOO〜❣️  気持ちええ〜❤️】が!』

『そ……そうか……じゃあ……行こうか』
てくてく はあはあ うだうだ



お城の警備の人っぽい汚い鎧を着用した番人的なヤツが話しかけてきた。
『何奴!?』
『ご安全に❗️  んじゃ、わたし行くけん』

『待てぇ〜い❕笑』

番人は仕事に躍起になっているが、ここはジジィの老獪のソレに任せることにした。
『ふむ、若いの。しのごの言わずコレを食べてみんさい』
タッパーから取り出した塩こんぶを与えてみると、紆余曲折を経るまでもなく門をくぐれた。



『王様〜来たで〜❗️』
『うむ、話は聞いておる。楽しみだわい』
『これがそうなんデスけど〜(タッパー開)』
『こ、これは!? かつて東方の民が――』
(コイツも法螺話信じてんのか……)

『……失礼。して、どのように食すのだ?』
『ああ、お茶はあるかな❓』
『用意してやりなさい』
上品なメイドとおぼしき人がカートに乗せた銀色のカパってやる半円形のヤツを開けるとティーセットが登場した。

『紅茶か……まあ大丈夫ですきっと。んでね、炊き立てのゴハンに【塩こんぶ】を入れてっ……と。で、お茶をそそいで……っと。(そ)したらぁ、箸でこの昆布を浸すようにチョイチョイ……って――さぁ召し上がってください❗️  ひと思いにズルズルと❗️』

ズッ……ズボッ……ビッ……ズゥズゥ……
そしたら王様はわなわなと震え、刹那的に玉座から立ち上がった。

『う、うまい❣️  聞けィ皆の衆! 本日よりこのチビを王女に任命する! つきましては、何か戴冠式的なヤツをやるので――』

ジジィ(やった……! これで毎日石壁にスリスリできそうじゃ❕)



こうして私は一国の王女となり、当然だが『塩こんぶ事業の拡大』に力を入れた。色んな事があった。配下が勝手に新商品を開発したり、人工の養殖地を勝手に作ったり。私も新商品の試食で日々を忙殺された。

コンコン
『んあ❓』
『女王陛下……いや、我が孫娘よ。今日も新商品『虹色魚と昆布の和え物』があるらしいが、どうする?』
『却下却下。もういいっての』
『そう思ってな……ホレ!』

『おぉ〜、シンプルな塩こんぶ❗️』

わたしとジジィは、陽光きらめく海をお城の窓から眺めつつ緑茶を啜りながら塩こんぶをつまんだ。

『……やっぱこれじゃのう』
『――うん❤️』

めで
たし

めで
たし

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