本の棚 #69 『四季 冬』
『四季 冬』
森博嗣
『四季 秋』とはうってかわって
真賀田四季の思考トレース祭りだ。
これは読むだけ無駄だ、凡人には遠すぎる。
目で文字を追うことはできても、それだけだ。
読むという行為には程遠い。
とはいえつまらないということではない。
天才の行く末を見たい、
そんな好奇心さえあれば
最後まで楽しむことができるはずだ。
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「人間がお好きですか?」
犀川の問いに対して、「ええ」と応える四季。
この質問を何度の読み返す。
人間「は」じゃなくて「が」を選んだ。
肉体という制限のなかでしか生きられない
最終ゴールはみんな死。
多くの矛盾を孕んだ存在としての人間。
何度も反芻しているうちに
「それでもなお、人間がお好きですか?」
「ええ」
という解釈がしっくりきた、ぼくなりに。
こんなどうしようもない人間という存在を
それでもあなたは愛していますか?
いや、愛すことはできますか?かな。
その応えが「ええ」の2文字…
なんという洗練された会話なんだ。
構築知性のゴールは明確です。(中略)機械が人間になるのです。
人間はコスパがいい機械だと、
ふと考えたことがある。
この四季のことばを読んでいて
行き着く先は人間なのか、と少し上を向いて
深呼吸をしてしまった。
しかし、それは人間のもつ感情、その矛盾からくる
「美しさ」を知っているからかもしれない。
季節が春夏秋冬とめぐるように
地球が太陽のまわりをくるくる回るように
人間もまた人間への還っていく。
四季シリーズを読みながら、
なぜか空を見上げることが多くなった。
話はウォーカロンへと続いていく。
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