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東洋医学の基本は氣のパラダイムによる世界観 頭痛の原因−東洋医学編−

今回は、頭痛の原因を東洋医学的に紐解いていきます。果たして、悩みやストレスはどのように頭痛の原因となるのでしょうか。


東洋医学の基本は氣(き)で考える

東洋医学では、私達の体は、氣・血・水(き・けつ・すい)という生理物質が正常な量を保ち機能することにより、生命活動を営むことができると考えます。

その生理物質のうち、もっとも基本になるものが「氣」です東洋医学の世界ではあらゆるものが氣でできています。僕らの体も氣の塊です。したがって、氣がどのようなバランスにあるのかという観点で人体をみるのが東洋医学の基本となります。

氣、というと、何か不思議な(怪しげな!?)力を感じなければならないのではないかという方が、一般の方だけでなく、プロの鍼灸師の方にも実は多いのですが(僕もかつてはそうでした)、そんなことはありません。

氣持ちがいい、氣分がいい、この場所はいい雰囲氣だ、あの職場は空氣がわるい、などなど、「氣」の世界はとても身近なもので、毎日実は感じていますよね。病気だって、氣を病む、ですし。

それでいいんです。氣を感じるのに座禅をしたり、滝に打たれたり、悟りをひらいたりする必要なありません。

東洋医学を実践するのに必要なことはただ一つ、世界の見方を物質的なパラダイムから、氣のパラダイムに変換することだけです。

世界は氣でできている、という前提で物事を見たり考えたりすると、それまで見えなかった見方、感じられなかった感覚で世界を眺めることができます。

氣づきとはそういうものです。

少し長くなりましたが、東洋医学的に頭痛をはじめとする病「氣」を考える上で、氣の考え方は非常に重要なので説明させていただきました。

逆にいうと、この考え方なしに、「この食材を食べたほうがいい」、とか「この健康法をやった方がいい」、などの方法論による東洋医学の実践を行なっても意味がないと考えています。それは東洋医学ではなく、現代医学の一つの方法を行なっているに過ぎません。

東洋医学の実践とは、シンプルに身近な氣を感じること、そこに尽きるのです。

氣がどのようなバランスにあるのかという観点でみるのが東洋医学の基本、とお伝えしたように、東洋医学的に健康な状態とは、氣が満ち足りてよく巡っている状態です。

頭痛は氣の詰まり、首のこりは氣の滞り 原因は氣の不足にある

さてそれでは、頭が痛いという状態や、頭痛の原因である首のこりがある状態は、氣でどのように表現されるのでしょうか。非常にシンプルです。

こりや痛みがあるという状態を氣のパラダイムで考えると、それぞれ氣が巡りが悪くて滞っている状態や氣が詰まって流れていない状態とみるわけです。

頭が痛いという状態は氣が頭部に詰まった状態です。また、現代医学的な頭痛の原因である、首のこりがある状態というのは、首のところで氣が滞ってしまっている状態であるとみます。

現代医学では、三叉神経頸髄複合体という解剖学的な構造から首のこりと頭痛の関係性を説明しましたが、東洋医学は非常にシンプルですね。首のところで氣の通りが悪くなれば、頭部で氣が詰まったり、頭部に氣が送れない状態となる、つまり頭部の氣は巡らないし満たされないような状態=東洋医学的に不健康な状態となるわけです。

ではどのようなことにより、私達の体の氣はそのような状態になってしまうのでしょうか。

巡らないことも滞りができることも、ざっくりいうと同じ意味と捉えてかまいません。

ほとんどのケースでは、氣が足りずに起こっています。氣の総量が足りず、うまく流れることができずに詰まったり滞ったりしてしまうのです。

それでは冒頭で提示した、頭痛のタネである悩みやストレスによりなぜ氣が足りなくなってしまうのでしょうか。

悩みは答えを探して考え続ける精神的な行為、ストレス環境下では自分の氣のバランスを守ろうとするため、両者は氣の不足につながる

悩みというのは、答えを探して考え続ける行為です。人は肉体的な活動を行うにしても、精神的な活動を行うにしても、氣を消耗します。したがって、悩みのように考え続けるという精神的な営みは、大変な氣の消耗になるのです。

また、ストレスがかかると、人は自然とそれに対抗しようと心と体を準備します。
東洋医学は氣で考えるので、東洋医学的にストレス環境下にあるとは、自分の氣のバランスが変えられてしまう可能性のある環境にいることを意味します。氣のバランスが変わらないようにするには、自分の氣を消費して、変えられないように守るため、ストレスに対処するのにも氣が消耗されます。実際にそのバランスが変わってしまうと、元に戻そうといろいろな代償行動を取ります。いわゆるストレス発散に〇〇する、というやつがこれです。

このように、悩みもストレスも氣の消耗につながり、その頻度が多ければ多いほど、また期間が長ければ長いほど氣が不足し、氣の巡りの悪さや滞りにつながりやすくなるのです。

身近な環境である、職場や家庭での悩みやストレスは氣の消耗の原因となりやすく、立派な頭痛の原因として東洋医学では考えることができます。

天候の変化に適応するのにも氣が必要、食べ物の消化も氣が必要 身の回りの環境はすべて氣に影響を与える

私達が影響を受けるのは職場や家庭といった身近な環境だけではありません。

頭痛の誘発因子として気圧の変化は大変有名ですが、東洋医学でも気圧の変化に代表されるような天候の変化も私達の氣のバランスに影響を与えます。

冒頭でお話した通り、東洋医学では、私達の体は氣の塊であると考えます。
これは氣という旧字の構成によく表されています。氣をつくっている气(きがまえ)はお米を炊いたときの蒸気を表し、これが転じて空気や雲といった天気や季節、さらには周りの環境の移ろいゆくものを表します。「雰囲気」なども氣なのです。東洋医学では天の氣、と言います。

この氣の文字はとても「氣」の性質を表していて好きな漢字です。
気という字では、大事なものが欠けてしまっています。文字や言葉が思想文化と密接に関わるという重要な側面だと思います。

また、氣をつくっている米は、穀物、植物など、地上から出てくる食べ物を表します。東洋医学では地の氣、と言います。このように、呼吸をし(天の氣をとりいれる)、食事をする(地の氣をとりいれる)ことによって私達の体は出来上がっていることを氣の文字はよく表しています。

このように、私達の体は氣のかたまりであるため、天候(天の氣)や食べ物(地の氣)の影響を当然受けます。例えば気温の寒暖差に適応するのにも氣が必要となります。気圧の変化も同様です。氣が足りていないとこれらの変化という刺激に対する適応力が発揮できません

現代医学では自律神経機能といわれるものです。朝起きられない、やる氣がでない、というのも同じものでいわゆる自律神経失調症といわれるものです。

また、食べ物でいうと、肉や脂っぽいものなどのいわゆる「重たいもの」は氣の量も多いため、食べ物としてのエネルギーは大きいのですが、それだけに消化するのにも氣を多く必要とします。そのため、消化器官(東洋医学でいうところの脾)の負担になりやすく、負担をかけられた消化器は本来の働きをすることができないため、十分な氣を生成できなくなり、日々の活動に必要なエネルギーを余裕をもって供給できなくなります。

疲れやすい、むくむ、体が重い、考えがまとまらないなどが該当します。氣が足りていないと、食べた物から不要なものを排泄する能力も落ちてしまいます。

難しいのは、「重たいもの」を食べたくなるのも実は氣のなせる技でして、僕らは食べるという行為により、自分の氣のバランスを整えることも結果的に行なっています。

先程のストレス環境下での話で例えると、ストレスにより強く変化した(巡りが非常に悪くなった)氣のバランスを戻したいときに「重たいもの」を摂りたいと思うのです。

したがって、ストレス→過食・偏食→お腹疲れる→氣がつくれない→ストレスに適応できない(自分を自分の氣で守れない)→ストレスによる氣の変化を受けやすい→・・・という悪循環に陥っている方は多いですよね。。

このあたりをどうしたらいいのか、というお話はまた違う機会にでもしたいと思います。

このように、家庭や職場といった身近な環境だけでなく、天候など自然界も含めた身の回りの影響を私達は常に受けています。したがって、あらゆることが頭痛の原因として考えることができるのです。

そして、氣が満ち足りてめぐっていると、そのような環境変化のうち、小さなものの影響を受けずにいられます。氣にしなくなる、というやつですね。また、大きな変化でも柔軟に対応できることができるのです。

いかがでしたでしょうか。細かくいうと、血や水の働き、さらには五行や五臓という観点での説明になるのですが、原理は氣です。施術時に行う東洋医学的なカウンセリングでは、どのようなことが氣の消耗につながっているのかを丁寧にお話を伺いながら一緒に探していきます。

施術で体の余計な緊張をとってあげることは、氣の巡りをよくしてあげることや、氣を増やせるスペースを作ってあげることになるため、回復するきっかけづくりとなります。自然治癒力とはそういうことを意味しています。

この記事の執筆者


萱間洋平 かやまようへい 1980年浦和生まれ
神奈川県立横浜緑ヶ丘高校卒業→慶應義塾大学理工学部物理学科卒業→製薬会社勤務→鍼灸あん摩マッサージ指圧師免許取得→鍼灸学校教員免許取得→慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了→慶應義塾大学医学部漢方医学センター非常勤講師(鍼灸外来)→ヘルスケアデザインラボ代表
ランニングと料理とサウナが好き

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