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人は人に救われる『言の葉の庭』

こんにちは、石川由弥子(ゆみこ)です。

雨があまり好きではありません。お気に入りの靴が濡れるのも、髪の毛が落ち着かないのも、洋服が濡れるのも、得意ではないからです。でも、雨の日に素敵な出会いがあったら、きっと私も雨の日が得意になるかも。今日紹介する作品は、雨の日が少し好きになる作品です。

今日は、新海誠監督の映画『言の葉の庭』をご紹介します。

『言の葉の庭』のあらすじ

靴職人を目指す高校生・タカオは、雨の朝は学校をさぼり、日本庭園で靴のスケッチを描いている。そこで出会った、謎めいた年上の女性・ユキノ。
やがて二人は約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになり、心を通わせていくが、梅雨は明けようとしていた…。

『言の葉の庭』のおすすめポイント

新海誠さんといえば、『君の名は』や『天気の子』が有名ですが、過去の作品もとても胸を打つ作品が多いです。私はその中でも、この『言の葉の庭』が大好きです。本作のおすすめポイントをご紹介します。

1. 心の中は外からは見えない

本作は2人の主人公がいます。ひとりは靴職人を目指す男子高校生・タカオと、ひとりは謎の社会人女性・ユキノ。2人は雨の日に、新宿御苑の東屋で出会います。

タカオは早く自立したくて、学校の前と終わった後の時間を靴づくりに費やします。高校に通っている自分が「子どもじみた場所にいる」ように感じ、靴を作ることだけが自分を違うところに連れていってくれるはずと信じています。

生き急いでいるタカオに対して、ユキノはどこか落ち着いていて、達観した雰囲気。彼女と比較して、タカオは自分がいかに子どもであるか思ってしまうのです。しかし、ユキノもタカオには言えない悩みを抱えているのでした。

「どうせ人間なんて、みんなどっかちょっとずつおかしいんだから」

乗るべき電車に乗ることができず社会人として適応できなくなったユキノは、この場所で「歩く練習」をしていたのでした。

2.煌めくような、かけがえのない時間

雨の日だけの逢瀬。タカオは素性もわからないユキノと言葉をかわし、ひとときを過ごすことで癒されているのでした。2人だけしか知らない、2人だけの時間。その時間こそがタカオにとっても、そしてユキノにとっても大切な時間でした。

ひたむきに靴作りに情熱を注ぐタカオにユキノは、社会に出て働いている大人なユキノは、お互いないものを相手に見るのでした。知っているようで知らない、知らないようで知っている2人の関係性にお互いは救われるのです。

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羽を休める場所

1時間にも満たない映画ですが、濃い人間ドラマを描いた作品です。最後、お互いの思いの丈を打ち明けるシーンで、秦基博さんの「Rain」が流れるのですが、それがまたいいのです…。(このブログを書きながらリピートしまくっています)

雨の日があまり好きではないけれど好きになれそうだなと思えるくらい、素晴らしい作品でした。雨が降り注ぐ都会の街を、新海誠さんはこんなにも色鮮やかで煌めいた街に見えているのだと思ったら少し羨ましくなります。

心身ともに疲れ果てた女性と、早く大人になりたいともがき苦しむ少年が、雨の日だけひとときの時間を過ごし、踏み出して行く。とてもドラマチックな雨宿りの話をあなたもぜひ梅雨の時期にご覧ください。

ではまた〜

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