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なぜ「ケアとまちづくり」が必要なのか

「医療者は病院を出よう!」
「地域で介護を実践しよう!」
「福祉にアートを!」

近頃、医療・介護・福祉業界にいると、このような言葉をよく目にする。空前の”ケアとまちづくり”ブームと言ってもいい。

病院という閉塞的な空間に鬱々とした患者は多い。それは、医療従事者もそう。病院という空間ではやることが決まっている上で、時間的余裕がなくやりたいケアができない。そんな不満が、地域でヘルスケアを実践していくことで解消されていくんだ!という機運が高まっている。街中で健康教室をひらけば、診察室よりは丁寧に患者さんにアドバイスをすることができる。暮らしの保健室をひらけば、病院には行きづらかった人が健康相談に来てくれる。そんなケアとまちづくりで、住民の幸せもケア従事者の他者貢献感も満たすことができるのではないか。そんな高揚感がある。また、全国で地域活性化や地域アートが盛り上がっていることは、地域コミュニティ単位で活動するケアとまちづくり実践者を後押ししてくれる要因でもある。だからこそ、各地でケアとまちづくりの実践が行われているんだ。僕もその実践者の一人だ。

ただ、なぜケアとまちづくりが必要なのだろうか?

その理由をあなたは考えたことがあるだろうか。

病院は地域に開いた方がいい理由はなんだろう?暮らしの保健室をした方がいい理由はなんだろう?アートを介護に持ち込む理由はなんだろう?

なんとなく、今のままよりはケアとまちづくりを実践した方が、ケア従事者も住民も幸せそうなのはわかる。病院は地域に開いた方が親しみやすい病院になるし、暮らしの保健室はあった方が健康相談のハードルが下がる。アートが介護にあると、どこか癒されるような気がする。では、親しみやすい病院になる理由はなぜだろうか。健康相談のハードルを下げた方がいい理由はなんだろうか。どのようなアートを介護に入れるといいのだろうか。それに答えたとしても、親しみやすい病院になれば無意味に病院に受診する人が増えるだけではないか、健康相談のハードルを下げても暮らしの保健室に来ない人はどうするのか。アートに介護を入れても無駄な投資ではないのか。そんな反論が出てくる可能性がある。
そんな質問にあなたは明確に答えることができるだろうか。

地域包括ケアシステムの中で一大ブームになっているケアとまちづくり、ケアとアート。多くの実践例を見学し、自身も「モバイル屋台de健康カフェin豊岡」で実践する私、医師の守本陽一(もりもん)と、「長崎二丁目家庭科室」の藤岡聡子(さとこ)が、ケアとまちづくりの実践例を紹介し、実践例のよさ、エモさ、もう一歩付け加えたい点を、因数分解しながら、みんなで理想のケアとまちづくりを考えていく。このマガジンはそんなマガジンです。なんとなくエモいよねという言葉で終わらず、その一歩先をみんなで考えていきたい。だから、ケアとまちづくりの実践者だけではなく、ケア関係者、都市計画関係者、アート関係者、そして街で暮らすすべての方に読んでもらいたいマガジンです。もちろんあんまり社会的インパクトはないんだけど、僕らが「ここは、エモい!」と思った部分も余すことなくお伝えします。講演でさせていただく話、経験に基づいた話、僕らの想いを込めて、最大限お伝えするので、月額課金制にさせていただきます。一定の人数になれば、マガジン購読者を対象に、ケアとまちづくり、アートについての悩み、疑問、未来について話し合うマガジン購読者限定コミュニティの開設も検討しています。新たな年明けとともに、お付き合いください。

さて、僕の考えるケアとまちづくりを実践する理由は2つあります。



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