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A-1Pictures覚醒「リコリスリコイル」

2023年のアニメ総括をした記事を色々見たんだが、大体のパターンは「葬送のフリーレン」「推しの子」「スキップとローファー」、この3作品を覇権アニメと認定してる様子。
そこに異存は全くないんだけど、ただ率直に思うのは「オリジナルアニメが弱い年だったな・・」ということである。
2022年「リコリスリコイル」、2021年「VIVY」、そういうのに匹敵するものが2023年にはなかった。
みんな、原作物ばかりである。

キャラデザインが秀逸だった「リコリスリコイル」2022年
驚くほど完成度の高いSFだった「VIVY」2021年

オリジナルアニメには大きく4つあり、1つ目は「ガンダム」に代表されるロボット物、2つ目は「プリキュア」に代表される魔法少女物、3つ目は「ラブライブ」に代表されるアイドル物。
そして、「それ以外」が4つ目だね。
「ガンダム」と「ラブライブ」、ともに制作がサンライズ(名前がバンダイナムコピクチャーズと変わったらしいが)であり、ここがオリジナルの一番得意な会社だと思う。
あと、4つ目の「その他」で圧倒的存在感を放っているのがP.A.WORKSで、ここは会社の黎明期から意欲的にオリジナル制作をしている。
「花咲くいろは」「凪のあすから」「SHIROBAKO」「サクラクエスト」「AngelBeats」「Charlotte」「TARITARI」「色づく世界の明日から」など、めちゃくちゃオリジナルが多いでしょ。
質の高いオリジナル脚本を書ける岡田磨里や麻枝准とのパイプが太いのは、彼らにとってひとつの強みだね。
確かこの会社は、本社が富山県。
彼らが妙に地方都市を舞台にしたがるのも、一応納得である。
ところが、2023年のP.A.WORKSの代表作は「スキップとローファー」、2022年の代表作は「パリピ孔明」、ここにきて原作物、脱地方都市物に傾いてきてるんだよね。
なんか、個性が薄まったみたいで寂しいわ・・。

「スキップとローファー」を2023年覇権アニメに推す人は多いらしい

聞けば、A-1Picturesの「リコリスリコイル」は続編制作が確定したらしいね。
普通オリジナルアニメは1シーズンで終わるものだが、ファンから続編要望が殺到したらしい。
こんなケース、「ゾンビランドサガ」以来?
聞けば国内のみならず、海外でも大人気とやら。
オリジナルアニメで、ここまで反応が大きくなる例はそうそうあることじゃない。

詳細はまだ不明・・

ちょっとここで、A-1Picturesという会社について少し説明をしておきたい。
もともと、ここはソニー系列アニプレックス100%出資の子会社。
ソニーグループといえばちゃんとした会社に思えるが、実は業界で唯一、「ブラック企業大賞」受賞という不名誉な実績をもつ会社である。
とにかく大量生産するところで、年間に10本以上のアニメを作ることなどざらにあったところなんだ。

A-1Picturesが2014年の業界賞を受賞・・

ところが、そのA-1Picturesが2019年以降に流れが大きく変わってきて、作る本数が減ったんだよ(2019年の制作はテレビ2、映画1のみ)。
理由は単純、ソニーグループが新たに「CloverWorks」という会社を作り、A-1Picturesの事業を一部そっちに振ったのさ。
現在のA-1PicturesとCloverWorksがどういう住み分けをしてるのかは知らんが、とにかく今まさに変革期ということだね。
で、2022年にA-1Picturesは興味深い仕掛けをしてきたわけよ。
この年の夏クール、「EngageKiss」と「リコリスリコイル」、このふたつのオリジナルアニメを同時投入してきたんだ。
こういうの、かなり珍しいケースだと思うぞ。

「EngageKiss」・・実はこれも案外よかった

まず「EngageKiss」は、「冴えない彼女の育て方」原作者の丸戸史明と「デートアライブ」イラストレーターのつなこをスタッフ起用した企画。
そして「リコリスリコイル」は、「ベン・トー」原作者のアサウラと「この美術部には問題がある」原作者のいみぎむるをスタッフ起用した企画。
どっちも外部から意外な人材を招聘した野心的試みで、このふたつを敢えて同クール投入としたのは、意図して両チームの競争心を煽ったんじゃないの?
「EngageKiss」vs「リコリスリコイル」で、お互いに「負けられない!」と頑張ったはずだよ。
で、このコンペ方式が功を奏したのか、両作品ともにクオリティが高かったと思う。
結果をいえば軍配は「リコリスリコイル」に上がり、声優アワードでは安済知佳が主演賞、若山詩音が新人賞を受賞。
さらに作品としても、海外のアワードで最優秀を受賞したらしい。
多分だが、A-1Picturesのお偉いさんたちはこれに味をしめて、また近いうちにオリジナルアニメ制作で似たような手段を使うんじゃないの?
そういう発想、まさにブラック企業じゃん(笑)。

第9回Anime Trending Awards
Drama Anime of the YearとBest in Character Desing を受賞

いや、だけどさ、こういうのは試みとして悪くないと思うのよ。
大体、アニメの脚本って同じような人ばかり手掛けてるでしょ?
吉田玲子、花田十輝、岡田麿里、横手美智子、大河内一楼etc。
やはり新しい血は入れるべきだと思うし、実際「リコリスリコイル」の成功はアサウラさんの功績がめちゃくちゃデカいんじゃないの?
ちなみに私、オリジナルアニメってめちゃ好きなのよ。
原作物は原作があるから事前にある程度展開が読めちゃうけど、オリジナル脚本は全く展開が読めない分、ハマれば原作物の何倍も破壊力があるし。
だから私はP.A.WORKSが好きなんだが、ここ最近のP.A.WORKSのオリジナルがブレてきたと皆さんは思わないか?
直近では「アキバ冥途戦争」と「BuddyDaddies」。
どっちも、めっちゃ人が死ぬやつなんですよ。
P.A.WORKSといえば爽やか+感動系のイメージがあっただけに、どしたの?という感想だ。
気になってスタッフ一覧から脚本担当者を見ると、比企能博、下倉バイオという今まで聞いたことのない名前が記載されている。
こいつら、誰なの?
多分だけど、これはP.A.WORKSなりの脱マンネリというか、殻を破って何か新しいものを模索しようとしてるんじゃないだろうか。
なるほど、今は生みの苦しみ、過渡期ということだな?
期待してるので、頑張ってくれ!

なんか、色々な意味でP.A.WORKSらしくなかった「アキバ冥途戦争」

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