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「普通」に苦しみ、「普通」と闘う:千葉桃

--- 私の選択・私の行動 ③ ---
「これ、何かおかしいんじゃないか」
「この状況、なんとか変えたい」
素直な気持ちを、行動に移す。
大規模じゃなくても、自分の手と足を動かして。
今の社会に必要なのはそんな若者なんじゃないか。
これは自分で選択し、自分で行動する若者のストーリー。

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千葉桃(弘前大学4年・22歳)
柳田國男の『遠野物語』で知られる岩手県遠野市で生まれ育った千葉さん。全校生徒わずか3名の小・中学校に通っていたが、小学4年生の終わりに廃校が決まり、別の小学校に転校することになった。新しい同級生の口から出てくるのは知らない芸能人やゲームの名前。まるで違う世界に来たかのような感覚になった。

「その時、あ、私は『普通』じゃないんだって思ってしまったんです。それまでは元気に笑う明るい子だったんですけど、転校してからは笑うのも怖くなってしまって、周りに合わせることばかり考えていました。」

大学は青森県の弘前大学へ進学し、たまたま先輩の紹介で行った説明会がきっかけで、県庁が行う「青森メディアラボ」プログラムへ参加を決める。プロの指導を受けながら青森の魅力を発信するこのプログラムを通じ、青森で活躍する大人たちの取材をする中で、個性豊かな仲間たちや、いわゆる「普通の会社員」ではない大人にたくさん出会うことになる。

「自分が持っていなかった色々な価値観に触れることで、見える世界が広がって自由になったんです。たった一つのきっかけで人生が変わることがあるんだ、って思いました。逆に知らない、つながりがないのは怖いと思うようになりました。もっと色んな人が気軽につながって、見える世界が広がるように、という思いで、『学生団体ひとつなぎ』を立ち上げました。」

リアル人生ゲームや大学生の運動会など、一緒に楽しむ中で自然とつながりが生まれるイベントを開いたり、ミス・準ミス弘前大学とコラボして開催した「夢を咲かせる」というイベントでは、参加者が本音で語り合い、夢に向かって一歩踏み出すきっかけ作りをした。目標を持って何かに真剣に取り組む人達を「意識高い系」と呼ぶ風潮もあるのが今の大学生だが、逆に言えば素直になれないということなのかもしれない。

「高校時代までの自分がそうだったように、窮屈な世界の中に自分を押し込めて生きている人ってたくさんいるんじゃないかと思うんです。そういう人たちが生きる上での選択肢を増やしたいなと思っています。そのためにやっていることが二つあって、一つは人をつないだり、情報発信することで、見えている世界を広げるということ。でも違う道があるって気づいただけじゃなかなか前に進めないので、もう一つやっているのが「補助輪」のような存在としてサポートすることです。例えばウェブサイトやイベントのチラシを作ったり。ずっとは支え続けられないので、いつかは自分で走れるようになってほしいんですが、初めの走りだしを一緒に形にしていきたいんです。」

ひとつなぎでの活動でも、メンバーがやりたい企画をサポートしたり、目を引くチラシを作ったりして、「補助輪」としての役割を果たしていた千葉さんだが、グラフィックデザインのスキルは基本的に独学で身に着けたという。

(千葉さんがデザインしたイベントのチラシ)

卒業後、このスキルで生計を立てていけるのか。それを確かめるために昨年は休学を決意。岩手県遠野市のコミュニティスペース運営や、手作りアクセサリー制作もしながら、フリーランスでウェブデザインやチラシデザインの仕事を受けていた。しかし1年間チャレンジして痛感したのは、自身のスキル不足とフリーでやっていく難しさだったという。

復学した今は卒論を書きながら、休学時の経験をもとに、今年4月に新しくできた一般社団法人いわて圏という団体で働き始めた。岩手県とゆるくつながる関係人口を増やすことを目的としている会社で、県内の企業や地域とのビジネス・パートナーシップを遠距離恋愛に喩えた「遠恋複業課」という面白い取り組みもある。

「私は岩手県南部にある企業やプロジェクトと、仙台で地域について学んでいる学生をつなげる企画の担当をしています。これも広い意味での『ひとつなぎ』ですね。会社は全員が複業を前提としたギルド型の組織で、会社とフリーの間くらいで自分にはしっくり来ているんです。今後はアシスタントデザイナーとしてデザイン業務にも携わる予定で、実際に仕事しながら経験を積んでいます。」

メディアやブログで情報発信するのも、人をつなぐのも、岩手県に関わる人を増やすのも、自分がつなぎ目となり、色んな人が見える世界を広げるため。そして「補助輪」として最初の一歩を一緒に歩めるよう、デザインのスキルも磨いている。

「私がまず自分のままで生きたいから、自分が生きていける道を作ってる段階なんです。みんながキラキラする必要もないし、みんながフリーランスで働くべきだなんて思っていません。ただもし何かモヤモヤしていたり、窮屈に感じている人がいるなら、その人たちが等身大で生きていける道を選べるようにしたいんです。」

自分も含め、一人ひとりが「その人のまま」で生きていける社会を目指して仕事する。それが22歳の千葉桃さんの生き方だ。


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