見出し画像

晩婚さん トラウマが一瞬で消えた時

この連休、夫と温泉に来ています。
さっきまで一人で夜の露天風呂に入っていました。積もった雪、杉林、滝の音。ふと、幸せだなと思いました。

過去の私は、こんなふうに露天風呂に入っていたら、孤独と焦りとよるべなさを、しみじみ感じるばかりでした。
少しずつ、夫が変えてくれました。

私は男性が苦手でした。苦手、というよりは軽蔑していたのかもしれません。特に高圧的な男性が大嫌いで、でも怖くて。うっかりそういう場面に遭遇すふと、必要以上に凍りついてしまいます。父が高圧的で、母が隷属的だったことが影響しているのかもしれません。

結婚した当初、一緒に出かける時、身支度が少しでも遅くなると「ごめんね、ごめんね。すぐ終わるから」と、謝り続けていました。待たせることにものすごく罪悪感を感じるのです。男性は待たせると怒る。そんな固定観念に縛られていました。
でも夫は、
「自分のペースでいいよ」
「焦らなくていいよ」
「まだ時間あるよ」
といつも言ってくれます。

その言葉が、少しずつ、私に染み込んできました。

数年前、思い悩んでいることがありました。
夫に伝えたかったのですが、正直に気持ちを話すことはとても苦手で。でも、どうにも追い詰められて、意を決して夫に話しました。話すうちに混乱してきて、思わず涙がこぼれました。

すると夫は、私をひざの上に抱きあげてぎゅつと抱き締めてくれました。夫は小太りなので、柔らかいおなかに文字通り包み込まれました。
その瞬間、これまで男性にいだいていた恐怖心が氷解したのを感じました。マッチョで固い筋肉ではなく、柔らかい脂肪で守られる。それは私も周りも傷つけない、優しい守り方です。そんなふうに、包み込んでくれる人がいるなんて。

ほんの1分ほどの時間でしたが、あの柔らかい抱擁は、私の過去を癒してくれました。そして未来の明るい道を照らしてくれました。夏目漱石の「こころ」で先生が見た、全生涯を貫く黒い光の逆バージョンかもしれません。

今は、自分の気持ちを話すこともできるようになってきました。身支度が遅くなっても、「もう少し待ってて。あ、ペットボトル捨てるからまとめておいて」と言えるようになってきました。
40才を過ぎて、こんなに変われるなんて思いませんでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?