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愛も優しさも武器にならない

自分の正しさを信じ込んでいる人は恐ろしいというような言葉をどこかで目にして、「確かにそれはそうだ」と思いつつ、少し違和感を覚えた。

これはほんとうに個人的な考え方だから、賛否ありそうだけれど自分が正しいと思うことや自分の正しさを信じること自体はそれほど恐ろしくないのだと私は思ってしまった。

ほんとうに恐ろしいのは、その自分が信じている「正しさ」や「正義」を誰かへ強要し、支配しようとすることだと私は思う。

芯を持って生きていくことは情報が溢れかえる世の中においてやっぱりどうしても大事なことで、自何が嫌で何が嬉しいと感じるのか、そういうことを自覚しておくことも大切なのだと思う。

誰かにとっての正義は誰かにとっては不義で、誰かにとっての優しさが誰かを惨めにしてまうことだってある。良かれと思ってしたことが、相手を傷つけ、その顔を見てまた優しさを与えた方も傷つく。そんな悲しい連鎖だって存在する。ありがた迷惑という言葉だって、実在する。

だから正しいも間違いも、誰にも決められず、そっと自分の中だけで自分が信じたいものだけを信じていることは何も、恐ろしいことはでないと思っている。

自分の中に蓄積され続けた信念や正義を、他者に振りかざしたときに、それはただの武器になってしまうから、それを一番恐れるべきだと思って生きている。

実際に、「自分を正しいと信じ込んでいる人にろくな人間はいない」と感じた人たちはきっと、誰からそういった武器の的になってしまったのだろうと思う。それはそう、誰だってその立場に立たされたら不愉快極まりないし、相手に対して敬意などはらえやしない。

誰かを自分のなかの正義で支配しようとするのは、ほんとうに怖い。何が怖いって人間は無意識にそういうことをしてしまうから怖い。私だってこんなことを言っているけれど、きっと今まで誰かを自分が信じてきたもののせいで、傷つけてきたのだと思っているし、それを受け入れている。

みんなが幸せになれるほど世の中は甘くはないけれど、必ずしも誰かの不幸のうえに誰かの幸せが成り立っているわけではない。

悲しいことを真実だと信じこまない、という考え方は少しだけ生きやすくなる。

自分が望む人でいることを強要することは、ひどく傲慢で、それが実らなかったときに一番苦しむのはきっと自分。人間は人間の所有物ではなく、誰かを自分が持つもので操作しようとすることは、その人自身を潰すこと。

分かり合えない人と無理に分かり合おうとすることは互いに消費してしまうだけとは分かりつつ、それを避けて通れない場は何度もやってくる。そういう時に大事にしたいことは、決して自分を押し売りしないこと。

謙虚になりすぎても卑屈に見えてしまう、けれど自分を強く押し出すことは相手の心を窮屈にしてしまう。

私はこう思う、でもあなたはどう思う、あなたはそう思うんだね、私はこう思うんだ。

友人や恋人、家族、そういった近い存在の人たちにこそ、相手が窮屈にならない配慮が必要になる。近い分、時間が経つにつれて「なんでも許してくれる」という甘えが生じるから怖い。私を含め、人間は学ぶくせに忘れていくのも早いから、時には大事なものからも一歩引いて視野を広げることは大事だと思っている。

いま何に傷ついているの
いま何を嬉しく思ったの

自分に優しくしすぎている人は、その優しさを少しでも少しずつ目の前の相手へ。相手への優しさで精一杯になり自分を疎かにしている人は誰かを想うような愛を1/4でも自分へ。

こうしてバランスをとるのが一番理想的ではあるけれど、聖者でもない私たちは自己愛に偏ってしまうこともあれば、自己犠牲がいきすぎて自分を見失ってしまうこともある。

なんてめんどくさい生き物なのだろう、と何度も思う。けれどめんどくさいものとおもしろいものはいつも隣り合わせで、どちらかといえば後者の感情を選んだ方が穏やかになれそうだ。

相手の正しさを振り翳されて腹が立つのは、その人自身も自分の中にきちんと信念や正しさを持っている証拠なのだと思う。「そんなものない」と思っている人でもきっと気づかないだけで、隅っこの方にちゃんと光るものがあるのだと思う。

求められた場以外で他者に自分をひけらかすことは、恥ずかしいことだと自覚して生きていきたい。

虚勢は「自分は弱い人間です」と宣言しているようなもので、きっと前に立つ相手に「この人は突いたらすぐに倒れる」と見透かされてしまう。みんなどちらの立場にもなりたくはない。けれど、傍観決め込んでいると「八方美人」だとか言われるのがこの人間社会。

どう転んでも、自分も相手の人間も、人間同士で繰り広げられるものも、すべて、厄介で、誰にも操ることなんでできないんだ。

そもそも正しさなんかで救われることなんて、ないに等しいのだから。

だから良い。

自分の正しさを信じて生きていくこと、それくらいは私は肯定していたい。















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