恋人と桜、それから

画像1 今年も恋人と一緒に満開の桜を見ることができた。桜は気づいたらもう散っている。春が止むのは毎年あっという間だ。桜を見ると自然と笑顔になる。散り際ですらあんなにも美しい。
画像2 満開の日、名所と言われる所は人がたくさんいて場所取りで大変そうなところばかりだったけれど、私たちは穴場を知っている。近所にあるそこは広々と解放感があって、桜が散ったあとは新緑のトンネルが木漏れ日を作る。そこが近所にあるから、というだけの理由で引っ越さないほど私も彼も大好きな場所。今年は「今日行こっか」と急遽決めたこともあり、毎年作るお弁当は作らずにマクドナルドを買った。彼は決まってテリヤキ(食べにくそうにしている)、私はエグチ。迷う時間も必要ないくらいに決まっている。
画像3 余り物を詰めただけの申し訳程度のお弁当とおにぎりは一応持っていった。もちろん黒ラベルも。外で飲むビール、外で食べるごはん、やっぱり格別においしい。特に桜の下で隣にはあなたがいるなら尚のこと。
画像4 彼はよく、写真よりも動画を撮る。この日もそうだった。彼が撮る動画にはもちろん私しか映っていない。けれど笑い声や私を呼ぶ声、頷く声が動画のなかから聞こえてきて、その声で彼がどんな表情をしているのか思い浮かぶ。あなたはほんとうに優しい声で私を呼ぶ。時に動画を撮っていることが私に気づかれて怒られるとケラケラと楽しそうに笑う声は無邪気で愛しさが込み上げる。
画像5 膝枕なんてものも、人がいないこの場所ならできる。彼は目を瞑って浅い眠りにつき、私はただぼうっと春風にあてられながら彼の寝顔を見ていた。時折吹き付ける強い風で桜の花弁が舞い、彼の髪の毛に落ちた。彼が起き上がっても落ちないのでそのまま言わずにいた。パーマがかかっているから余計に落ちないのだろう。花弁ついてるよと言ってあげたくない、取ってあげたくない、だってあなたは誰よりも春が似合う人。もう少し、見ていたいと願ってしまう。家に帰って鏡を見た彼が「あ、花弁」と指先にのせて私に見せてきた。なんだかとても幸せだ。
画像6 「夜桜も見たいね」という話しになり、少し寝てから夜桜も見に行った。ライトアップされていることもあって、昼間よりも幻想的で儚く見えた。月がとても綺麗な夜だった。だから尚更そう見えたのかもしれない。
画像7 夏がもうすぐそこまで来ている。植物が続々と新芽を見せてくれている。繰り返す季節のなかで、少しずつ違う毎日がやってくる。成長とまでは言えない小さな変化。そのくらいでいい、価値ある一歩でいい。確かな一歩を大事に生きていきたい。

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