よまずにたべる会

京都産業大学現代社会学部コラボ活動「現代社会学部書評コンテスト実行委員会」

よまずにたべる会

京都産業大学現代社会学部コラボ活動「現代社会学部書評コンテスト実行委員会」

最近の記事

  • 固定された記事

2023年度サギタリウス・レビュー 学生書評大賞 受賞者決定

第4回「サギタリウス・レビュー 学生書評大賞」を開催いたしました。 本企画は京都産業大学現代社会学部独自の書評コンテストです。「コラボ活動」(現代社会学部課外活動制度)の枠組みのもと、現代社会学部の学生有志と教員が共同して立ち上げた現代社会学部書評コンテスト実行委員会(別名「よまずにたべる会」)が運営しています。今年度も多くの方からご支援をいただき、活動を行ってきました。 昨年度と同じく一般的な図書(図書部門)だけではなく、多様な文芸ジャンル(マンガ、アニメ、映画等)のレ

    • 書評『カラフル』

      2023年度「サギタリウス・レビュー 学生書評大賞」(京都産業大学) 図書部門 大賞作品 「カラフルの輪廻」 石井陽也 文化学部・国際文化学科 1年次 作品情報:森絵都『カラフル』(文春文庫、2007) 人の印象はその人の一部に過ぎない。これを理解せずに「あの人はこうだから」というように決定づけるとどのようなことが起きるのか。その空間で印象付けられた人間は、殻をかぶり印象という牢獄に閉じ込められるのだ。なぜなら印象とは違うことをすると白い目で見られるからだ。孤独、不安、

      • 書評『イノセント・デイズ』

        2023年度「サギタリウス・レビュー 学生書評大賞」(京都産業大学) 図書部門 特別賞作品 「幸乃の最後はハッピーエンドかそれともバッドエンドか」 奥川綜一郎 経営学部・マネジメント学科 3年次 作品情報:早見和真『イノセント・デイズ』(新潮文庫、2017) 元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた田中幸乃と産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人など彼女の人生に関わった人々の語りから浮かび上がる「整形シンデレラ」と揶揄するマスコミ報道との虚妄。そして終盤から明かさ

        • 書評『安楽死・尊厳死を語る前に知っておきたいこと』

          2023年度「サギタリウス・レビュー 学生書評大賞」(京都産業大学) 図書部門 奨励賞作品 「安楽死と尊厳死について考えるために」 土井博斗 生命科学部・産業生命科学科 3年次 作品情報:安藤泰至『安楽死・尊厳死を語る前に知っておきたいこと』(岩波書店、2019) 最近ではALS患者嘱託殺人事件の判決が出た。死を望んでいたALS患者が自ら死ぬことが出来ないために医師に嘱託した結果、起きた事件である。結果的に医師は嘱託殺人罪で起訴され、実刑2年6ヶ月となった。私はこの事件

        • 固定された記事

        2023年度サギタリウス・レビュー 学生書評大賞 受賞者決定

          映画評『七番房の奇跡』

          2023年度「サギタリウス・レビュー 学生書評大賞」(京都産業大学) 自由部門 大賞作品 「絶望に浮く『幸せ』」 森本渚月 生命科学部・産業生命科学科 3年次 作品情報:『七番房の奇跡』(イ・ファンギョン監督作品、2012) 「奇跡」とは、一体何だったのか___。 この作品を見終えたとき、私はこう思った。 この物語は、実際の冤罪事件に基づいたものである。6歳の娘と暮らしていた知的年齢が6歳の父は、少女殺人の疑いにかけられ、無実の罪で逮捕されてしまう。その後、

          映画評『七番房の奇跡』

          映画評『ファーザー』

          2023年度「サギタリウス・レビュー 学生書評大賞」(京都産業大学) 自由部門 特別賞作品 「アンソニーの苦しみ」 塚本侑聖 経営学部・マネジメント学科 3年次 作品情報:『ファーザー』(フロリアン・ゼレール監督作品、2020) 現在日本では少子高齢化が急速に進んでいる。このことに伴い、少子化対策や子育て支援に関する政策が数多く立案されている。また、2022年の時点で65歳以上の人口が全体の29%を占めることが総務省統計局の調査で示されている。高齢者層の増大と切っても切

          映画評『ファーザー』

          2022年度サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞 受賞者決定

          第3回「サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞」を開催いたしました。 本企画は現代社会学部独自の書評コンテストです。「コラボ活動」(現代社会学部課外活動制度)の枠組みで現代社会学部の学生有志と教員が共同して立ち上げた現代社会学部書評コンテスト実行委員会(別名「よまずにたべる会」)が運営しています。今年度も多くの方からご支援をいただき、活動を行ってきました。 一般的な図書だけではなく多様な文芸ジャンル(マンガ、アニメ、映画等)のレビューも審査対象に含めるという特徴があり

          2022年度サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞 受賞者決定

          映画評 庵野秀明『シン・ウルトラマン』

          2022年度「サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞」(京都産業大学) 自由部門 奨励賞作品 「ウルトラマンと日本政府」 藤井祐夢 文化学部国際文化学科 4年次 作品情報:企画・脚本:庵野秀明 監督:樋口真嗣『シン・ウルトラマン』(2022)  『シン・ウルトラマン』とは,1966年とその翌年にテレビ放送された『ウルトラマン』を現在の時代に置き換えたリブート映画であり、主なストーリーは次のように言える。暴れまわって町を破壊する巨大生物や、政府と密約を交わすこと

          映画評 庵野秀明『シン・ウルトラマン』

          映画評 中島哲也『告白』

          2022年度「サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞」(京都産業大学) 自由部門 特別賞作品 「与えられた理想は凶器になる」 野村紗香 現代社会学部現代社会学科 2年次 作品情報:中島哲也『告白』(2010)  『告白』は「少年犯罪」「いじめ」「家庭内暴力」「感染症」などのさまざまな社会問題をテーマに、登場人物の罪を独白形式で表現した作品である。  中学校の担任を務める森口悠子は、冷淡で現実主義者である。そんな彼女が終業式の日にある"告白"をした。それは自分

          映画評 中島哲也『告白』

          マンガ評 藤本タツキ 『チェンソーマン』

          2022年度「サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞」(京都産業大学) 自由部門 大賞作品 「くだらない夢と高潔な夢」 山本健太郎 現代社会学部健康スポーツ社会学科 1年次 作品情報:藤本タツキ 『チェンソーマン』(集英社、2019)  私はこのマンガを初めて読んだとき、周りの目も忘れて、呼吸をするのも忘れて、瞬きすら忘れて読み進めたことを覚えている。これは他のものとは違う。本物の作品だ。他の、読者受けを狙った甘ったるいマンガとは訳が違う。そんな感想を抱きなが

          マンガ評 藤本タツキ 『チェンソーマン』

          書評 住野よる『青くて痛くて脆い』

          2022年度「サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞」(京都産業大学) 図書部門 奨励賞作品 「「青くて痛くてもろい」という小説の中にあるメッセージ性」 清家一稀 現代社会学部現代社会学科 2年次 作品情報:住野よる『青くて痛くて脆い』(KADOKAWA、2018)  人は潜在的に、「この人はこんな人であるべきだ」とか「この場所はこんなところであるべきだ」といったように、他の人やものに勝手な期待や理想像を持ってしまっているのではないだろうか。また、そういった自

          書評 住野よる『青くて痛くて脆い』

          書評 峯山政宏『なぜ?シンガポールは成功し続けることができるのか』

          2022年度「サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞」(京都産業大学) 図書部門 特別賞作品 「今、私たちが学ぶべきもの」 久我幸生 現代社会学部現代社会学科 2年次 作品情報:峯山政宏『なぜ?シンガポールは成功し続けることができるのか』(彩図社、2018)  日本の未来を担う若者は本書に感化されるに違いない。何かワクワクしたものに突き動かされるだろう。私たちは、日本はアジア最高の経済大国で、安全面・交通整備は言わずもがな世界のトップだと信じてやまない。本当に

          書評 峯山政宏『なぜ?シンガポールは成功し続けることができるのか』

          書評 太宰治『美男子と煙草』

          2022年度「サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞」(京都産業大学) 図書部門 大賞作品 「太宰治を読むということ」 塚本侑聖 経営学部マネジメント学科 2年次 作品情報:太宰治『グッド・バイ』に収録『美男子と煙草』(新潮文庫、1972)  読書は受け身になりがちな行為である。物語はすでに完成していて、目の前の文章をただひたすらに「読む」ことによって我々はそのストーリーを理解していく。「読む」作業に耐えられない読者は最後まで読み進めることなく脱落する。  

          書評 太宰治『美男子と煙草』

          マンガレビュー 荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険 第一部』

          2021年度「サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞」(京都産業大学) 自由部門 特別賞作品 「技術の発展と諸問題を漫画から読み取る」 松見直弥 (生命科学部・産業生命科学科 3年次) 作品情報:荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険 第一部』(集英社、1987年~1988年)  この作品は「生きること」をテーマに、『ジョナサン・ジョースター(以後ジョジョ):人間』と『ディオ・ブランド―(以後ディオ):吸血鬼』の闘いを描いた作品である。当初、ディオはジョースター家に

          マンガレビュー 荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険 第一部』

          映画レビュー 新海誠『言の葉の庭』

          2021年度「サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞」(京都産業大学) 自由部門 大賞作品 「普通の恋愛映画ではない言の葉の庭」 河原崎友暉 (現代社会学部 現代社会学科 3年次) 作品情報:新海誠『言の葉の庭』(2013年)  “愛”よりも昔、“孤愛(こい)”のものがたり。これがこの映画言の葉の庭のキャッチフレーズだ。この映画を簡単に説明すると、高校生と教師の恋愛映画である。しかし普通の恋愛ではない。お互いに口や行動には示さないが共依存のような関係である。

          映画レビュー 新海誠『言の葉の庭』

          書評 高嶋哲夫『首都感染』

          2021年度「サギタリウス・レビュー 現代社会学部書評大賞」(京都産業大学) 図書部門 特別賞作品 「『首都感染』から学ぶ 」 菅沼千尋 (生命科学部・産業生命科学科 3年次) 作品情報:高嶋哲夫『首都感染』(講談社、2013年)  本書、「首都感染」は中国で発生した新型インフルエンザによるパンデミックを描いた作品だ。新型コロナウイルス感染症流行前、2013年に発行されたにもかかわらず、その内容は新型コロナウイルスの流行を想起させるものであり多くの注目を集めた。

          書評 高嶋哲夫『首都感染』