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一方的なおしゃべりにならない自己紹介の仕方

人は不安だと自分だけが一方的に話してしまう。

グループを作って、「自己紹介してください」とお願いすると「ひとりずつ順番に一方的に自分のことを話す」という構造になる。
自己紹介は一方的に話すものだというマインドセットもあるのかもしれない。

これが、つまらない。
自分が話したい自分の都合の良いことだけが語られ、相手が聞きたいことは沈黙の影に隠される。

だが、「自分のことを一方的に話さないように」と言っても、どうしていいのか分からなくなる。初対面だと、対話するためのヒントがあまりにも足りない。

そこで、ぼくのワークショップでは「自分細分化」という方法を使う。

ペーパーには75個のマス。5分間で、自分が気になっているモノゴトをキーワード化して書き出し、このマスを埋める。
「とにかく何でもいいから思いついたことをたくさん書いてください。テンポが重要です」
埋め尽くすには4秒に1個書くテンポで書く必要がある。

じっくり考えているヒマはない。猛スピードだ。思いついたらすぐ書くの繰り返し。自己検閲しているヒマはないのだ(そこがいい)。

ゆっくり、ていねいに準備すると、整えてしまう。よけいなことが隠されてしまう。そうならないように猛スピードで自己検閲しないように、とにかく書き出す。

書き出すといってもペーパー1枚だ。ぱっと見渡せる。見る側、つまり自己紹介する側じゃなくて、それを受け取る側が、興味のあること、共通点を見つける。そのためにも、自己検閲なしに書き出すことを目標とする。

書いた「自分細分化」を見せあって自己紹介してもらう。

このとき3~4人グループにする。全体でやると、さすがに対話はしにくい。

ただ「見せあって自己紹介してください」と言うと、これまた一方的に自分のことを話しだす人が出てくる。
「このキーワードを最初に書いて、そのあとこれを連想して……」とワードを書いた流れを説明しはじめたりするのだ。
それでは意味がないということを、まず伝える。

「人が書いた自分細分化を見て、気になるキーワードがあったら、質問してください。質問された人は、なるべく短く答えてください」

「会話のキャッチボールをテンポよくやるように。ひとりが長々と喋らないように。自分の手元にボールがきたらすぐ投げ返すつもりで」

「これまでの自己紹介のイメージではなく、人が聞きたいことを答えるというスタイルで。気持ちいい雑談を目指してください」

そう解説して、各グループで雑談してもらう。
各グループの雑談が終わったら、「興味深い話が出たチームは全体にシェアして」と頼んで、シェアしてもらう。
時間があれば、グループメンバーをシャッフルして数回行う。
2回目、3回目は、全体にシェアすることを意識して、さらに対話が深まっていく。

「編集・ライター養成講座 即戦力コース 米光クラス」でも、初回にこのワークをやる。

編集・ライターは、自分が書きたいことを一方的に吐き出すわけではない。自分の中にあるものから、読者が興味を持ってくれるだろうことを差し出すイメージが近い。
だからこそ、そのイメージに近いスタイルで自己紹介をやってもらう。

「自分細分化」で自己紹介をやると、プロとそうでない人が、はっきりわかる。プロは、質問されたキーワードに、すぱっと短く、面白く答えることができる。

喋り方が上手い下手ではなく、そのキーワードについて最初に語るべきことが「決まって」いるのだ。
キーワードに関することがらが、原稿を構成するいくつかのブロックとして自分の中にストックされているからだ。

「自分細分化」による自己紹介は、自分が原稿にできるネタをどれぐらい持っているか、それが面白いのかを、確認できるトレーニングにもなる。

以下の原稿のバージョンアップ版です。

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