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「世界一『自由』な会社、Netflix No RULES」を読んで

田端大学の課題図書となっており、話題の書籍ということもあり、購入。
自由と責任、能力密度が最高レベルのNetflixという会社のカルチャーについて事細かなインタビューやエピソードをもとに解説されており、密度が極めて高い。
結果として読書メモも極めて多いものとなった。

日本的なコントロールマネジメントも良い面は多くあるとは思うが、やはり状況によってはNetflixのようなコンテキストによるマネジメントも適用すべきなのではないか。
具体的には、多くの社内規定は、性悪説に則り、悪人を前提に規定されている。
例えば、テレワークに及び腰の組織においてよく言われるのが「機密情報の不正引き出しが不安だからテレワークは認めない、認めても限られたものだけにする」である。
数千人に1人いるかいないかの悪人の存在を恐れて、組織全体の生産性を大きく下げてしまう例であると思う。
こうした、社員を「子供扱い」する仕組み、というものはまさにコントロールマネジメントの典型であり、クリエイティブ、能力密度の高い組織であれば足枷になってしまっているだろう。

一方でNetflixの「自由と責任」の文化は、社員一人ひとりを「大人」として扱い、自由と一緒に責任も持たせるところに大きな違いがあると思う。
単なる自由ではなく、その裏にはしっかりと責任を取らせるということも重要だと思うし、本当に優秀な人間であれば、コンテキストさえ正確に与えれば、それをもとに最高の成果を出すと、組織として信頼をしている点は非常に興味深い。

個人的に響いた点の1つとして挙げたいのは、
部下がバカをしたと思っても、責めてはいけない、それはコントロールマネジメント。それは自分が与えたコンテキストが正確性ではなかったり、しっかりと足並みが揃っていなかったことが原因と考えること。
これは最高レベルのチームメンバーを常に有しているプロスポーツ集団的なNetflixの思想を体現しているものだと感じられた。

以下ネタバレを含む読書メモである。


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はじめに

 • ネットフリックスにあって、ブロックバスターになかったものは、プロセスより社員を重視する、効率よりイノベーションを重んじる、そしてほとんど制約のないカルチャーである。 

• ネットフリックスのカルチャーは、能力密度を高めて最高のパフォーマンスを達成すること。そして社員にコントロールではなく、コンテキスト(条件)を伝えることを最優先している。
• スター以外には十分な退職金を支払って席を空けてもらう、という、心理的安全性を捨てる文化は、一見イノベーションの芽を摘もうとしているようにも見える。
• また、社員の休暇規程も存在しない。こうしたネットフリックス・カルチャー・デックは全体としてはあまりにもマッチョ的に見えるが、事実成功している。

• ブロックバスターに限らず、業界が変化すると、そこにある多くの企業がつぶれる。それはイノベーションを生み出し、柔軟性を持つようにカルチャーが最適化されていないから。
• 例えば、出張規制や予算規程などで社員を縛ると、決められたルールの中でうまくやる者が出世し、クリエイティブな一匹狼は辞めていく。するとイノベーションは停滞する。
• 手続きやプロセスが存在すると、社員は自ら判断力を働かせて考える機会がなくなる。自由を与えれば、質の高い判断と説明責任が果たせるようになる。
こうした状況を作るために必要なのは、
①能力の密度を高める
 優秀な人材を集め、そもそもふさわしくない、無責任な行為を未然に防げる。
②率直さを認める
 優秀な社員同士であれば、互いに学び合う。そのため、率直なフィードバックを認め合い、全体の質を上げていく。
③コントロールを減らす
 ①と②ができたら、組織の承認プロセスはすべて廃止してもよい。そして管理職はコントロールではなく、コンテキストによるリーダーシップを求め、部下には上司を喜ばせようとするな、という指針を与える。

• スティーブ・ジョブズの "Connecting dots"について、大切なのは、常識的な点と点を結び付ける方法に疑問を持つこと。たいていの社員は周囲やこれまでと同じやり方、正しいと思われてきたやり方で点をつなげようとするが、これは現状維持。
そうではなく、誰かが全く違うやり方で点と点を結び付けると、世界に対する見方はがらりと変わる。

第1章 最高の職場=最高の同僚

• ブロックバスターのビジネスモデルは、顧客に延滞料という罰金を科しており、それによって収益を伸ばす構造だった。これでは顧客ロイヤリティは伸びるわけがない。
(社会の”負”に対する課題認識)
• ドットコムバブルがはじけ、社員の3分の1をレイオフした後、残された優秀な人材の士気下がると懸念していたが、逆に急上昇した。働く時間が長くなっても情熱、エネルギー、アイデアが満ち溢れるようになった。これによって能力の密度に関する重要性に気が付いた。
• レイオフ後、会社全体の能力の総和は減ったものの、一人ひとりの能力密度が上がった。優秀な人材は、全社的な能力密度が高い環境で真価を発揮する。
実際に、レイオフ前は成果がそれなりだったものが、レイオフ後にまったく新しい次元にまで引き上げられた。
• チームの中に凡庸な者が1名・2名いるだけでチーム全体のパフォーマンスが下がる。
• トップクラスの人材にとって最高の職場は、オフィス環境ではなく、才能豊かで協調性のある仲間がいる職場。互いに刺激し合って、パフォーマンスは限りなく向上する。
• 凡庸な社員がいると、本当は最高の成果を出せる者の多くも凡庸な成果しか出さなくなるが、優秀な人材しかいないチームでは、お互いが高い成果を出すよう刺激し合う。
• スピード感があり、イノベーションの生まれす職場には、最高の同僚だけが集まっている。

第1章のメッセージ
• リーダーの最優先目標は、最高の同僚だけで構成される職場環境を整えること
• 最高の同僚とは、重要な仕事を山ほどこなし、しかも類まれなクリエイティビティと情熱を持った人材
• ジャーク、怠け者、人当たりは良くても最高の成果は挙げられない者、悲観論者などがチームにいると、全員のパフォーマンスが低下する

第2章 本音を語る(前向きな意図をもって)

• 率直なフィードバックには、「前向きな意図を持って」という条件が付く。相手を攻撃するためではなく、きちんと話し合うためのもの。
• 建設的なフィードバックはそれが伝播していく。陰口を叩く代わりに、互いに意見やフィードバックを率直に語り合うようになったことで、社内の足の引っ張り合いや駆け引きが減り、会社のスピード感が高まった。
• フィードバックのやりとりが当たり前になると、社員はそれまでより速く学習し、一段と仕事ができるようになっていく。
• 賛同を得られないかもしれない、面倒な奴と思われたくない、コンフリクトを回避したいと思い、大抵は人の意見に反対しないのが人間。しかし、ネットフリックスでは、同僚と違う意見があるとき、あるいは誰かに役立ちそうなフィードバックがあるときに、それを口にしないことは、会社への背信行為とみなされる。
• ネットフリックスの社員は、相手が社外の人間であっても、それが有用なフィードバックと考えれば遠慮なくフィードバックする。

• 人はフィードバックを受けると、攻撃されたと感じ、本能的に逃げようとする。これは原始時代から、集団から排除されること=死を意味することから来ている。
• 一方で、大抵の人はシンプルなフィードバックは自分の仕事の能力を高めるのに役立つことを直感的に理解している。
• 例えば、スピード違反を取り締まっても違反件数はそう減らないにも関わらず、道路に「あなたの出しているスピード」を電光掲示板で表示させる(フィードバックする)だけで速度超過は大幅に減った。
• フィードバックは頼まれた時にだけ行う、褒めるのは人前で批判するのは人のいないところで、という長年の条件付けが多くの組織で残っている。
• 正しい環境や方法を選べば、相手を傷つけずにフィードバックすることができる。また、組織においては、部下から上司へのフィードバックを推奨することから始めた方が良い。

• 組織において立場が上になるほど、フィードバックをもらう機会は減る。裸の王様になってしまう。
• 最も簡単なやり方は、個別面談にフィードバックの時間を設け、部下から自分へのフィードバックを求めること。そのお礼として、上司からも部下へフィードバックすると良い。
• 上司がフィードバックを受けるときの振る舞いとして大切なのは、「帰属のシグナル」。どんなことを言っても上司は反感を持ったりしない、という感謝の姿勢。これがあると部下は安心して上司にフィードバックすることができる。
• 言うべき意見があるのに相手の反応を気にして口をつぐむようなやつはネットフリックスにはいられない。会社が君らを雇っているのは、意見を聞くためだ。会議室にいる人間は全員、率直な意見を言う責任があるんだ。

• ネットフリックスの率直さとは、後先考えずに頭に浮かんだことをなんでも言え、ではない。

<フィードバックのガイドライン「4A」>
①Aim to assist(フィードバックする側)
相手を助けようという気持ちでフィードバックする。相手の行動を変えることで、相手自身や会社にとってどのように役立つのかを明確にすること。

 ②Actionable(フィードバックする側)
行動変化を促す。行動のダメなところを指摘するだけでなく、どう改善するべきなのかを伝えること。

 ③Appreciate(フィードバックされる側)
 感謝する。批判されると、誰もが自己弁護や言い訳をしたくなるが、それに抗い、感謝すること。

 ④Accept or discard(フィードバックされる側)
 取捨選択する。たくさんの人からフィードバックを受けるが、その全てに従う必要はない。心から感謝をしたら、受け入れるかどうかは本人次第。

• いつでもどこでもフィードバックする
 ネットフリックスのように率直なフィードバックの文化が浸透していれば、プレゼンの最中でもフィードバックすることが認められる。プレゼンの最中でも、プレゼンターがより効果的なプレゼンができるサポート目的であれば、フィードバックして良い。
• 「無私の率直さ」と「Brilliant Jerk」を区別する
 チームに率直な文化を醸成するためには、有能だが協調性のない嫌なやつを排除する必要がある。誰もがうっかりジャークになってしまう。正しい道に戻そうと相手の間違いを指摘しても、伝え方次第では相手のやる気を削いでしまう。相手が前向きな気持ちで間違いを正すことができる伝え方が必要。
 ポイントとなる相手への問いかけは、①会社に不利益をもたらすつもりなのか?②もっと分別のある行動ができないか?である。

第2章のメッセージ
• 率直なフィードバックによって、優秀な人材は傑出した人材に変わる。
• 定例会議にフィードバックの時間を設け、率直なやりとりを促す。
• 「4A」ガイドラインに従い、上手なフィードバックをやりとりできるように社員にコーチングを与える
• リーダーこそが頻繁にフィードバックを求め、受け取った時は「帰属のシグナル」を返す
• 率直なカルチャーを浸透させるため、組織からジャークを排除する。

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