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図書館で異彩を放っていた『ホスト万葉集』

図書館で見つけた『ホスト万葉集』

ホストクラブには行ったことがないけど、ホス狂の女の子のTwitterを覗くのは結構好きです。

この間、図書館にふらっと立ち寄ったときに、目に入ったのがこの本。

「今日返ってきた本」の短歌関連書籍が並んでいるラックにこれがあったら目立ちますよねそりゃ。だって隣に穂村弘さんの短歌くださいとかあるんだもん。

その日は図書館カードを忘れてしまったので、借りずに図書館内で読んだんですが、

面白くて一気に読みました。(もともと短歌だから文字数少なくてすぐ読めるけど)

以下、講談社 Book倶楽部の既刊紹介からの引用です。

いまだからこそ、君に届けたい。おれたちの、五・七・五・七・七を!
「コロナ」という、歌舞伎町最大の危機との戦いのなか、ホスト達は生きている。そして、愛について考えている。――愛ってなんだ? 恋愛を、悩みを、希望、欲望、本音を叫ぶ。五・七・五・七・七の短歌で!
短歌を作ったのは、歌舞伎町に6店舗のホストクラブがあるスマッパ!グループの会長・手塚マキ氏とホスト75人。
編者(選歌・構成)は、280万部のベストセラー歌集『サラダ記念日』の著者・俵万智氏と、野口あや子氏、小佐野彈氏という短歌界の第一線で活躍する歌人。
2年前、小佐野彈氏の歌集『メタリック』の発売イベントで短歌を作って以来、ホストたちは、ほぼ月一回、歌会を開催し続けた。(中略)
五・七・五・七・七の短歌だから語れる本当の気持ち。得意客(姫と呼ぶ)との会話、おもてなし、仕事で割り切れない男女の感情。コロナ下での焦燥。
もともと短歌とは、愛を語り合う言葉の器だ。ホストと短歌。実は、これほど相性の良いものはなかった。まさにいまだからこそ届けたい、感動の短歌集。

感想:何が面白かったか

はっきり言って、短歌の技術としては別に良くないし、そもそもそんなことは自明の理なんですよ。

ただし、ホストや彼らを取り巻く街や人は、普段なかなかお目にかかれるもんじゃありません。そんな特殊な世界を一般の私たちが覗ける、しかも短歌という三十一文字の中にホストがどうにかその世界を捻じ込んで表現しているなんてまず前提が面白いですよね。

ホストと短歌、一見交わることのないこの二つの要素が出会うべくして出会って、化学反応を起こしているということに価値がある。

それには出会わせる誰かが必要で、歌会の主宰の手塚マキさんや選者の方々が今回の場合媒介になっている。

私は演劇が好きで、演劇の力を信じていて、でもまだ演劇というものを認識すらしていない人もいて。もしかしたらその人たちは演劇に出会ったらもっと人生が豊かになるかもしれない。演劇自体に意味とか意義なんてなくていいけど、そこに立ち会った人によっては心を揺さぶられる体験をすることもある。

そう思っているから、媒介になりたい。演劇と、その外の世界を繋ぐ。そのための私の全ての活動。そのために命を燃やす、とかいうことではなく、楽しいよってことを自分が体現することだと思っています。

私の個人的な話になってしまいましたが、内容そのものの他にもそんなことを思いました。

内容の話に戻ると、特にこの歌が好き!というのはなかった気がします。しかし、「『1人の架空のホストが歌舞伎町に来て、ホストの世界に徐々に慣れていく』という構成」と選者の俵万智さんも言っているように(出典)、「一年目」という章から「ラストソング」まで、連なることで物語になるというところが面白かったです。一つ一つの歌をじっくりと味わう、というようなものではなくて、全体の流れで以て夜の街を垣間見る、という感覚でした。

私も短歌を少し書き溜めてるので、もう少しいっぱいになったらZINEを作ろう。

おまけ情報

第2巻も出てるらしい…。

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