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自己表現とパフォーマンス

日本と世界のギャップ

甲子園での慶應高校の優勝により、主体的に考える選手の育成などが話題になっていますが、私は陸上競技をしていたので同時期に開催されていた世界陸上ハンガリーブダペスト大会も見逃せませんでした。特に女子陸上選手たちのお洒落に注目しました。

女子100メートルでは、シャカリ・リチャードソン(米国)が3センチはある長いピンクのネイルで出場し、編まれた髪は赤や黄色とカラフルでした。髪色といえば、シェリーアン・フレイザープライス(ジャマイカ)も恒例の奇抜なウィッグで登場しました。燃えるようなオレンジから日ごとに色を変え、黄と赤のグラデーションや水色のレースもありました。

2人はともにメダルを獲得しましたが、他の競技でも細かなお洒落に気を配る選手が多く見られました。国旗柄のアイラインや絵をメイクとして入れたり、ヘアピンを目立たせたりするなど、日本ではなかなか見ない姿でした。甲子園では長髪や坊主が問題視されることもある中、このギャップに衝撃を受けました。

道具のわくわく

皆さんは、新しい道具を手に入れたり、憧れの選手と同じ道具を使ったりするときに、わくわくしながら競技に挑み、自分のパフォーマンスが向上した経験はありませんか?

私は中学のとき、当時100m日本記録保持者の伊藤浩司さんが履いていたアシックスのサイバーゼロという真っ赤なスパイクを手に入れました。普段は土のグラウンドなので履けず、これを履くためには大会を勝ち上がらなければなりませんでした。当時は真っ赤なスパイクは珍しくて目立ちました。これを履きたい想いと、履いて走ることで楽しいという想いが掛け算となり、結果として東北大会まで勝ち進みました。見た目が良くなれば気分も良くなって、良い走りができて、結果も良くなるということを経験しました。
自分を自分として受け入れて、そして目立たせる方法で、自信が持てて、さらに別次元の自信を吹き込んでくれるのではないかと思います。

自己肯定感を得ることでパフォーマンスが向上する。
お洒落×競技結果は少なからず結びつきがあるのではないでしょうか。

価値観の違い

当然、当時はそんなスパイクを履くくらいなら練習しろという声もありました。今から20年以上前のことでしたが、今でも日本では「そんなことをする暇があるなら練習しろ」という価値観が根強いように思います。今はSNSで自由に発信できる一方で、同時にダイレクトに声が届く、求めてもいない見ず知らずの人から説教されることもあるそうです。一方で、海外の人が驚く日本人の特性として、結果を出せば許されるという風潮もあります。この議論は、文化的背景や伝統など様々な要因があるので、一概に日本と海外のどちらかが100%の「善」、もう片方が「悪」というわけではありません。

このような自己表現の場を奪っている可能性はないでしょうか?監督、コーチ、または上司、リーダーとして、一緒に一つのゴールに向かっていくチームメンバーの個性や価値観を尊重し、自由に表現させること。そこには感情も関わってきます。伝えているが理解しているのかわからない、何を考えているのかわからない、モチベーションの上げ方がわからないという声は、コーチングセッションや研修をしていると皆さん必ず口にしています。相手に求める前に、まずは自分自身の関わりはどうか、振り返ってみてはいかがでしょうか。

多様な価値観と文化的背景

これは私の感覚にはなりますが、人種差別や金銭的環境の影響がまだ強く残っているスポーツもあります。そのスポーツの予選で戦っている選手は、どこの国のどの人種が出ているのでしょうか?
陸上競技は、他のスポーツに比べて、まだ様々な人種が参加し、そして活躍しているように思えます。
それは、すべてのスポーツの原点である走跳投を極めるシンプルな陸上競技だからこそ、誰もがチャレンジでき、多種多様な価値観を垣間見ることができのではないかと考えています。同時に、それだけ結果へと結びつけることが難しいスポーツの一つでもあると思います。

世界各国からアスリートが集まる世界陸上だからこそ、多種多様な価値観を垣間見れることで、今の日本のスポーツ界とこれから目指す姿はどこかを考えるきっかけとなりました。

皆さんはどのようにお考えですか?

◎研修のご紹介

日本スポーツ協会公認指導者更新研修 スポーツコミュニケーションBASIC1

2023年上期は東北での開催は,9月を予定しています。
これから受講予定のお知り合いの方へご紹介ください。
※スポーツ指導者以外に大学教授、クラブ監督やコーチ、クラブ運営者なども参加いただいています。
9月16日(土) 宮城県 仙台市開催 ここをクリック
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