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第19回 メンヘラ≒デートDVでしょ

 依存系、束縛系のメンヘラが相手の行動を制限することはデートDVといいます。私はDV的行為が、メンヘラといった軽い言葉で扱われる風潮に危惧しています。メンヘラとデートDVはイコールではありませんが、「≒」ぐらいだと思っています。DVはこれまでは経済性に優位であった男性が加害者になることの方が圧倒的に多かった。DVとは夫婦間における暴力と定義され、夫が経済性の優位を理由に妻の行動を制限するなどが基本です。そこから身体的な暴力、言葉などによる精神的暴力、避妊に協力しないなどの性的暴力なども含まれます。これが結婚していないカップルの中でも起きていることが認知されるようになっていき、婚姻をしていないパートナー関係で起きるDVをデートDVとして配偶者間のDVと区別して呼ぶようになっています。しかし巷で取り上げられるメンヘラは圧倒的に女性の方が多い。デートDVという言葉が認知されるようになり、何がデートDVになり得るのかという研究や事例も豊富に出回っています。そういった事例を見るとDVの被害、加害は男女に関係ないと思います。そして、そのメンヘラがやっている行為にはデートDV的行為が多いに含まれていると思うのです。これまでのDVで、男性加害、女性被害が多く報告されてきたのは、女性の方が、身体的、性的に被害が露見しやすいことと、外で働く男性を家庭内の女性が行動を制限するのは物理的に不可能な部分が多いにあったためです。デートDVチェックリストは民間団体や自治体からもたくさん出ていますので、そちらを参照してください。

 私はいろいろなデートDV関連の書籍を読んだり、勉強会に参加したり講演会も聞いたりしていますが、岡山のウィメンズ・クリニック・かみむらの上村茂仁先生のまとめが分かりやすく(先生はFace Bookで資料を無料で公開しています)私もそこから引用させてもらいます。また前述のシングル単位論を展開している伊田広行さんは私の思考とかなり近いので、ここでご紹介しておきます。

デートDVの仕組み(上村茂仁FBより)

1 お付き合いはお互い相手を好きで相手を大切にしたいという気持ちから始まる

2 しかし、そのパートナーが自由に友人と遊んだり、連絡したりすると、そのうち自分が嫌われるかもしれないとか、自分より素敵だと思う人と出会うかもしれないという思いから、相手に対して「約束」をいっぱいさせて、自分以外の人とかかわらせないようにする。または自分の言うことだけを聞かせて相手を自分だけのものにしようと相手の行動を束縛する。

3 DVをする人は最初はものすごく優しく、とてもまめ。そうすることでしつこく約束をまもらせようとする。約束を破られると相手を脅したり、暴力を振るったり、自分を傷つけてみせたり、泣いたり、とても優しくなったりして何としてでも約束を守らせようとする。

 こう考えると、私たちの文化の中で「普通の恋愛」だと思われている行為そのものが、ほとんどDVに当たるのではないかとすら思えてきます。双方にとって恋愛が楽しい、と思える時期はいいのですが、不平等な関係、支配/被支配の関係になっていくとそこにはもうDVがあるのです。「普通の恋愛観」を伊田は「異性愛の男女二人がカップルになる(結合する=恋愛/結婚する)ことが自然かつ幸せと考えることを出発点に、他の人を好きになるのも仲良くするのもダメ、恋人は自分のもの、二人の間に秘密・隠し事はダメ、別れはよくない、恋人は特別の要求に応じるもの、二人のことに他人が口を出すことはできない、など」と考え、これは特別変わった恋愛観ではなく、むしろ通常、多くの人が持っている恋愛観であると言います。しかし、こういった「カップル単位の恋愛観は相手を束縛し、自由を制限し、DV的に支配することを正当化」していることに警鐘を鳴らし、次のようなシングル単位の恋愛観を提唱しています。

カップル単位の恋愛からシングル単位の恋愛へ(伊田広行『ストップ!デートDV-防止のための恋愛基礎レッスン』

従来のカップル単位の恋愛の常識を覆し、「自分たちは一体という感覚」が危ないことを知り、二人の境界線に敏感になって、それぞれが自立したうえで適度な距離を大事にする。ある意味冷たく、相手を「他者」とみる恋愛。

・詮索・干渉・束縛はしない、してはいけないと自覚する

・恋人間でも隠し事や秘密はあってよい

・束縛は愛ではなく、相手の自由の侵害(成長の侵害)

・嫉妬の感情があっても、相手の自己決定を侵害してはならない

・セックスのあるなしを過度に重視しない

・性役割を前提的に肯定しない

 私とRの関係では住んでいる場所もアルバイト先も学校もある程度距離があったので別れることができましたが、学校や職場で付き合った人との関係が、デートDVに発展した場合、無理やり別れることは危険です。こればかりは周囲を巻き込んで、いろいろな人に協力してもらうしか、解決方法はありません。正しい回避の仕方を知り、そもそもデートDVするような人とは最初から付き合わない、セックスをしないというのが正しいのですが、そればかりはある程度の関係性の構築の積み重ねの中で肌で感じていくしかないのでしょう。また相手の世話をすることに嗜癖的になっている人もいて共依存関係の中でバランスが取れていることもあるのですが、それは自分の成長や自由が制限されることに自覚的になる必要があるでしょう。(難しいですが)今となってはシングル単位の恋愛観でパートナーを選ぶようにこころがけていますが、まだまだ若かった私は、これだけの経験をしてもやはり恋愛を繰り返して、この先もお互いに傷つけあう恋愛をしていくことになるのです。

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