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閏年|#シロクマ文芸部

閏年のカレンダーに
弾き出された1日が
そっと並び
365日+1日の違和感を
感じさせず佇む
あれから4年が経った
もう4年 たった4年
人との接触を制限された
あの年からの4年間
心地よさと物足りなさに
熱くなったり冷めたり
世界を見たり見なかったり
自分に向き合ったり逃げたり
世界の色の濃淡は強く
好きだったものを嫌いになり
関心が無関心になった
迷子のような日常から
逃げるように空を見て
雲で遊び
跳ねる魚に声をかけ
鳥の名前を調べ
散歩をした
いつもの雑木林を抜けて奥へ進んだ
奥の奥まで進むと
そこに雷鳴のような隙間を見つけた
迷子は自由を求める
その隙間に誘われるように入ると
空気も時間も感じない
生と死の狭間のような
不思議な場所に居た
ここは宇宙の果てかと確信したり
疑念を持ったり
遠くの誰かと話せるようになり
話せなくなった
過去から続く未来を生きているのだろうか。
帰り道が見つからない。
時空は失われたが
遠く微かに音が聞こえた
音というよりも響き
響きは鼓動のようにリズムを刻んだ
そのリズムに身を委ねると
私の鼓動と重なり 一つになった
響きは響きを連れてきて
あの日のあの人の声に聞こえた
音楽のような声は優しく私を包み込み
声は私に景色を見せた
景色はどこまでも続く青空だった
雲の上に連れてきた あの声は
いまはもう 遠いけれど
消えてしまわないように
耳を澄ましている
閏と呼ばれる時間に
そっと身を隠し
365日+1日の違和感を
感じさせず佇む
その佇まいはどこか
孤独の隠れ場所のようだと思った


(おわり)


◇#シロクマ文芸部 に参加させていただきました。
ありがとうございました!
閏年から閏年のこの混沌とした4年間を振り返ってみました。

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