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国立大も加速・拡大する総合型選抜。東大では、大学が抱える課題そのものも推薦入試のテーマに

最後に、国立大の状況と、東京大学の取り組みについても触れておきましょう。

国立大学協会は、総合型選抜と学校推薦型選抜による入学者の比率を3割にする目標をすでに掲げていましたが、今年の1月28日に発表した基本方針では、総合型選抜・学校推薦型選抜にさらに傾注していく、との声明を発表しています。

 国立大学はこれまでも自主的な取組により、総合型選抜・学校推薦型選抜など多様で個性的な入学者選抜を実施してきた。「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」においても、達成すべき喫緊の課題として「優れた資質・能力を有する多様な入学者の確保と受入環境の整備」を掲げ、特に近年は、各大学において特色ある総合型選抜・学校推薦型選抜の導入が相次いでいる。
加えて、2021年度のコロナ禍での入学者選抜において、総合型選抜・学校推薦型選抜は選抜時期の柔軟化や、様々な課題も指摘されながらもオンライン面接などが一般選抜に比べ実施しやすく、感染症や大規模自然災害等の非常事態への耐性が高いことが示された。また、18歳人口の減少に伴い、将来的には選抜という視点に加え、マッチングの視点が重要視されることも考えられる中で、各大学において多様に実施される総合型選抜・学校推薦型選抜は、その重要性を増していくことになる。
これらを踏まえ、今後とも、「学力の3要素」を多面的・総合的に評価するため、一定の学力を担保した上で、調査書等の出願書類に加えて、小論文や面接、プレゼンテーションなど多様な評価方法を活用し、これら学力試験以外の要素を加味した「総合型選抜」・「学校推薦型選抜」などの丁寧な入学者選抜の取組を加速・拡大する。
また、それにより蓄積されていく経験とノウハウを「一般選抜」を含めた全ての入学者選抜に波及させる取組を推進していく。

一般社団法人 国立大学協会  2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度ー国立大学協会基本方針ー
令和4年1月28日より

国立大学協会としては、「優れた資質・能力を有する多様な入学者の確保と受入環境の整備」という喫緊の課題や、感染症や大規模自然災害等の非常事態への耐性が高いことを理由に、これからも総合型選抜・学校推薦型選抜などの丁寧な入学者選抜の取組を加速・拡大する、とのことです。


後期枠を特別選抜枠にシフト

そうしたなか、近年、国公立大学では、一般選抜の後期日程の募集枠を縮小したり、後期日程そのものを取りやめて、その分、総合型選抜などの特別選抜にシフトする動きが多く見られます。

東京大学(東京都)では、2015年度(平成27年度)を最後に後期日程を廃止し、翌年2016年度から推薦入試を導入しました。
後期日程の募集定員を、そのまま推薦入試にまわしたかたちです。

かつて後期日程を実施していた際は、本格的な論述問題や教科の枠組みに収まらないような総合問題を課し、前期とは一線を画した選抜を行ってきましたが、推薦入試になってからは、学部が主体となった選抜に変わり、さらに進化した選考が行われているのです。

ですので、この推薦入試には、大学としてのアドミッション・ポリシーに加え、各学部のアドミッション・ポリシーも込められ、それに則った選考が行われています

令和5(2023)年度東京大学 学校推薦型選抜 学生募集要項


大学が抱える課題をテーマに

例えば、法学部では、このようなアドミッション・ポリシーを掲げています。

現代社会、とりわけグローバルな場でリーダーシップを発揮する素質を持つ学生。すなわち、優れた基礎的学力を備えるとともに、現代社会のかかえる諸問題に強い関心を持ち、実社会の様々な事象から解決すべき課題を設定する能力、さらには他者との対話を通じて、その課題の解決に主体的に貢献する能力を有する学生。

令和5(2023)年度東京大学 学校推薦型選抜 学生募集要項 p.19 法学部 求める学生像より

受験者は、まず、学部が求める書類等を提出し、書類審査ののち、グループ・ディスカッションや個別面接に臨みます。

令和4年度のグループ・ディスカッションでは、東京大学が現在掲げる「Diversity & Inclusion(多様性と包摂性)」がテーマとして出され、長年問題になっている女子学生の少ない現状を踏まえ、多様性を促進するための施策について議論をさせているのです!

東京大学が抱える喫緊の大問題を、いきなり受験生に議論をさせ、しかも、それをもとに選考する・・・随分、大胆ですね!

令和4年度東京大学学校推薦型選抜 法学部 グループ・ディスカッション課題

固定化した統一の学科試験では掬うことのできないような学生を獲るべく、一般選抜ではありえないユニークな選考方法を取り入れていることがよくわかります。

それぞれの学部の強いメッセージが伝わってきますね。



いまだ定員100名に届かないが・・・

では、大学として望むような結果が出ているのでしょうか?

東京大学の推薦入試はこれまで8回行われ、募集条件等についていろいろな工夫や変更がなされ志願者も少しづつではありますが増える傾向ですが、
残念ながら、合格者はこれまで一度も募集人員の100人に達していません。

この推薦入試は、ある意味、東大の先生方の本音がストレートに出た入試です。
もっと言えば、多様性豊かなキャンパスの実現を目指すために必要とする、「未来からの留学生」たちに来てもらいたい入試でもあるわけです。
 
しかし、受験生たちにはそうしたメッセージがなかなか届かないのでしょうか。
それとも、応募資格等のハードルが高いのか。

いずれにせよ、東京大学も、自分たちの思いや希望を持って、理想に向かって変わろうとする現在進行形の大学なのです。

東大も“未来に向かって歩んでいる大学”なのです。

学校推薦型選抜を知ることは、そうした東大の先生方の想いや理想に触れる絶好の機会とも言えます。

本当に東大で本気で学びたいと思っている受験生のみなさんには、一人でも多く、それらに触れていただき、東京大学の真の姿、つまり、ビビッドな想いと未来への方向性を知っていただきたい、と思うのです。

仮に、学校推薦型選抜に応募しなくても、一般選抜に対して決してマイナスになることはないでしょう。
 
より深いアドミッション・ポリシーを知るという意味においても、
入学後の進路や学部の選択においても。


顔の見える入試

暑さ和らぐ9月――
 
それぞれのキャンパスには、早くも本格的な総合型選抜のシーズンが
到来します。

“未来からの留学生”を求めてはじまった、総合型選抜。

大学の教職員のみなさんにとっては、もしかすると、
とても手間のかかる入試かもしれません。
しかし、学力中心の一般選抜と違って、受験生一人ひとりの
顔の見える入試。
血の通った入試、とも言えるでしょう・・・

そうしたプロセスにおいて、
夢と希望で胸を膨らませた受験生たちとの素敵な出会いがたくさん生まれ、
未来からの留学生が誕生することを期待したいと思います。

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