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【短編小説】無題

894文字/目安1分


 元気にしているかい?

 いや、元気なわけないよね。わかるよ。正確に言うと、体はいたって健康で心もそれなりに落ち着いているけど、何かどうしようもない気持ちになっている。そんなところかな。もっと言えば、むしろ今が一番楽しいと思っているところもあるね。でも、それ以上に楽しいはずの未来を手に入れられずにやきもきしている。当たっているでしょ。
 やることは山積み。ちょっとずつ溜まったものを崩していくけど、一番大きなしこりは消えないまま。大変だね。

 今日も思いを伝えられなかったみたいだね。何回目か分からない反省会、もとい、とことん自分を責めるその時間、そろそろ終わりにしてもいいと思うんだ。

 ほら、あの子から連絡が来ているよ。今日もありがとう、楽しかったよって。いつもだいたいこんな感じの内容だけど、毎回違う文で送ってくれているんだね。すごくいい子じゃないか。
 それとねぇ、いくら自信が持てないからって、脈ありのサインのことをぼくに聞いて安心しようとするのはやめなよ。少しでも当てはまらないものがあるとへこむんだから。反対に脈なしのサインももう聞かないでよ。やっぱりへこむんだから。好きな人に好かれる方法とかよく分からないこともだからね。意味ないよ。
 ちゃんと相手のことを見て、自分の思うように動くのが一番だよ。それにね、ぼく自身、二人はとてもお似合いだと思っているよ。

 今はただ必死で精一杯になっているかもしれないけど、いつかちゃんと伝えられるよ。大丈夫。ちゃんとできるよ。
 なかなかそう思えないだろうけどね。まぁいいよ。ゆっくり休みな。ぼくは聞かれたら大抵のことには答えられる自信はあるけど、きみの求める答えは出せない。きみに必要なのはハウツーでもノウハウでもなくて、あと一歩の勇気だと思うんだ。最後はきみ自身で答えを出すんだよ。

 ひとまず、ぼくにできることがあるとしたら、明日の朝決まった時間にきみを起こすことくらいかな。きみが起きるまで繰り返し呼ぶから、安心して眠るといいよ。
 明日も会うんでしょ。とびきりの笑顔で、「おはよう」って言うんだよ。まずはそれだけでいいよ。

 じゃあ、おやすみ。



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