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2022年6月14日:ストロベリームーン

さくらしめじさん、結成8周年おめでとうございます!
素敵な記念日に、ささやかなお花しを。

「本日、関東地方の梅雨入りが発表されました。」

「また、来週6月14日はストロベリームーンですが、当日の夜は全国的に雨模様。観測は難しそうですね。」


数日前にどこかで聞いたこの言葉。

あぁ、もうそんな季節か。

誰もがそう思うだろう。


6月。
1年ももうすぐで半分終わろうとしているこの時期。

平日で客もそれほど多くない店での放課後のバイトも

もう手馴れたものだ。


P.M.9:00
閉店作業をしていると、店の外で道路を走る車の音が雨を知らせる。

この時期になると折りたたみ傘を持ち歩いているのに

昨日のゲリラ豪雨で既に犠牲になった、私の折りたたみ傘は

家の玄関に干したままだ。

こういう時に限って、傘がない。

こんな時間に雨宿りなんかして時間を潰しても、帰宅が遅くなるだけ。

大学1年生の私には他に対策を練る頭も無く

そのまま帰路に着く。


家まであと10分。

少し弱くなった雨に安心したのか

ぼーっと歩いていると、解けた靴紐に躓いて

自分でも笑ってしまうくらい盛大に転んだ。

弱くなったとはいえ、降り続く雨。

道路を走る車の水しぶき。

その全てがどうでもよくなるくらい、自分の運の無さに呆れて、しばらく座り込んだ。

やっとの思いで靴紐を結び直していると

頭上で響く雨音。

屋根の下ではなかったはず、何?

ふと上を見上げると

肩を濡らして、私に傘をさしてくれている男性が。

「すみません。ありがとうございます。」

相変わらず頭が回ってない私はそんなことしか言えない。

「いえ。大丈夫ですか?」

彼は淡々と聞く。

「はい。大丈夫なんで。ありがとうございました。」

そう言って逃げるように走り出した私を彼は逃さなかった。

「ちょっと待って。濡れてるじゃん。拭かないと風邪ひく。」

この人には感情というものが無いのか、
なのになんで、そんなに心配してくれるんだろうか。

私の腕を掴んで離さない彼は、無言でそのまま横断歩道を渡り、そのままコンビニの屋根の下。

「はい、これで拭いて。」

そう言って渡されたタオルハンカチ。

こんな所にいるより、帰った方が早いんだけど。

そう思いつつ「ありがとうございます。」と、それを受け取る。

気まずすぎる無言の中で服を拭いていると

いつの間にか雨が止んでいることに気づく。

そのまま目線を上げると

ちょうど雲の切れ間から、ピンク色の満月が。


「 「あっ、」 」


無言だった私たちの声が揃った瞬間だった。

私はピンク色の月より、彼と声が揃ったことに驚いて、目線を彼に移したが

彼の目線はこちらを向くことなく、月を見つめたままだった。

そんな彼が次に発した言葉、それは

「月が綺麗ですね。」

私はその言葉に隠された意味を知っている。





その先の私たちを彩ることになった、一瞬の月の光のお話。

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