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猫エッセイ「大人の名付け方」

猫エッセイ「大人の名付け方」

ウチにニャンコたちが来ると決まってからさっそく名前を考えることになった。保護猫だった彼らにはすでに名前があった。キジ虎模様の男の子がタイガとサビ柄の女の子がナラ。タイガはタイガーだろうがナラという名前は私にとって馴染みがない。米国で猫につける名前ランキングでは上位に入るそうな。ググって見るとライオンキングのヒロインなのね。ソマリ語由来らしい。

保護猫をケアするボランティアさんは譲渡先を探すために

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神に捧げたブルーカシミヤ

神に捧げたブルーカシミヤ

マフラーをなくした。

ブルーにグレーの細いストライプが入ったカシミヤだった。長年使っていたものに虫に喰われた小さな穴を見つけたので新しく買ったばかりだったのに。今思えばなくす予感はあったのだ。だって買った次の日にもう出先に置き忘れたんだから。でもビルを出てすぐに気づいた。外気は冷えるからね。

さて、なくしたのはあきらかなのだが、いつなくしたかがわからない。気づいたのはオフィスである。いつも

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モーロの香りと、音の煌めきの妖しい因果

モーロの香りと、音の煌めきの妖しい因果

この日のギターレッスンでは新しい課題曲を選んだ。

「今度のは速くて最後までセーハコードなので休むところがないです。手が痛くなったらすぐやめてくださいね」

「下手すると腱鞘炎とかなっちゃいますかね?」

「ジャックみたいに力入れて頑張り続けちゃう人はなおさらだな」

ギターを始めて2年以上経つが
この力を抜くってのが一番むずかしい。軽く軽くと念じつつもいつのまにか力んでしまう。それでもいつも意識

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小説「猫ちゃん印のコーヒー豆」

小説「猫ちゃん印のコーヒー豆」

 保護猫ちゃんが我が家にやってきて1週間が経つ。義弟の庭に迷い込んだ野良ちゃんが産んだ5匹中の2匹の子たちだ。3段式の大きなケージをを購入してリビングの窓際にセットした。人のいる時はケージを開ける。リビングと三階に続く階段が2人の遊び場だ。猫ちゃんたちとの初めての暮らし、わずか1週間で早くも世界の中心が変わってしまった。

私の朝はコーヒーと読書で始まる。
静けさの中で空間を独り占めすると世界が自

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