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記事一覧
毎日超短話474「衝突」 #シロクマ文芸部
「最後の日くらい、いっしょにいない?」
たった今、離婚届を提出したばかりのあなたがそう言う。明日は地球と彗星が衝突する確率が70%の予報。このところ20%だったから、明日こそ「最後の日」になるかもしれないと思っている人も多そうだ。それでも離婚届が受理されるくらい、街は粛々と業務をこなしている。
「最後の日なら、いっしょにいない」
最後の日なら、あなたはあなたといっしょにいたい人といたらいいよ
毎日超短話473「みんなのうた」
子ども向け番組から、歌が流れてくる。
♪あぁ〜はらまき〜好きな人はめっちゃ好き〜
ほとんど何にでも言えるな、「好きな人はめっちゃ好き」。理由のいらない、めっちゃ好き。
一年前の超短話↓
毎日超短話472「Don't worry be happy!」
待ちあわせ場所に行く途中、友だちを見かけた。神妙な面持ちで気になったので、声をかけた。彼女は人を探しているらしい。
「どんな人?」
まだ時間があるので、一緒に探しあげようかと思う。
「赤いボーダーのロンTで、帽子を被ってて、青いカラーパンツの、杖を持ってるメガネの男」
その人は昨日、絵本の中にいた。もしかしてここは絵本の中かもしれないと、昨日見たかけたとこへ行く。
ごめんね、付き合わせて
毎日超短話471「駐車場」
駐車場にトナカイとソリが置いてあった。トナカイが「うちの主、知りません?」という顔でこちらを見ている。たぶんクリスマスの打ち上げでもしてるんだろう。ぼくはさっき買ったファミチキをトナカイにあげて、遅れてきたクリスマスを堪能することにした。
一年前の超短話↓
毎日超短話469「時差ボケ」
ビジネスホテルにチェックインしたサンタがフロントで、今日は何日かと聞いている。24日の朝です、とフロントに言われると、時差ボケ調整したいから、今日は夜まで寝ないとサンタは言う。いやいや、夜があなたの仕事だから。
一年前の超短話↓
毎日超短話468「ありがとう」
教科書の小説の一文字一文字が、換気のために開けた窓の隙間から空へと飛んでいった。空には小説の一節が並べられ、気持ちよさそうに漂ったあと、窓の隙間から文字たちが教科書に帰ってきた。途中で先生が窓を閉めてしまい、帰れなかった最後の五文字が、空に浮かんだままになっている。
ありがとう
チャイムがなるまで、それを見ておく。
一年前の超短話↓
毎日超短話467「砂場」 #シロクマ文芸部
振り返るほど人生歩んでないからね。と砂場で遊ぶ子が言っている。そうそう5年で人生語るなんておこがましいわ。砂場の子らは、おもちゃのシャベルで砂を引きながら、そんなことを話している。
40年なら語れる? とベンチに座っている私は心で呼びかける。いや、まだまだだね、死にそうになったら語ってみなよ。そんな目で砂場の子らが、うなずく。
コンビニで買った紙コップのコーヒーが冷たい指先を温める。死にそうだ
毎日超短話465「きんらきら」
彼が赤い服を着てきた日、わたしは緑色の服を着ていた。クリスマスが近かったから、あと金色があればツリーみたいになるねっていう話をしていた。星くずが落ちてきたのはそのときで、わたしたちはちょうどよく金色が服に付いた。空を掃いてたおじさんが、ごめん、と謝るけれど、わたしたちは「気にしないでください」と手を振った。
懐かしいねと言いながら、そのときの道を歩いている。彼は赤い服で、わたしは緑色の服、彼とわ
毎日超短話464「ぞうきん」
ぞうきんを絞っている友だちが、なんだか神妙な顔つき。ぼくは友だちに近づいて、「どうかした?」と声をかけた。
「心も絞ったら、こんなふうに汚いかなあと思って」
ぼくはぼくのぞうきんを絞って、汚れた水をバケツに捨てる。
「今一度洗濯いたし申し候」
バケツの横の超ちいさな坂本龍馬がそう言ったのを、ぼくらは確かに聞いた。
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毎日超短話463「紙コップ座」
紙コップが星と星を渡って、線を引いている。
「紙コップ座です」
4つの星を逆さまの台形のように結んだそれは、紙コップとも言えなくはない。
冬の空を見上げながら、手に持った紙コップのコーヒーがいつもよりあたたかい気がする。
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