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オクラとの邂逅、ガンボ・スープ

人生なんて、どう転ぶかわからない。

気づいたらユーラシア大陸の西の果て、同胞の住む気配をまったく感じない北フランスの港町まで漂流してきた私。

家の中では常にコンフォートゾーンを守りたく、それはつまり日本語に囲まれた生活を送りたいということ。異常にワイドショー地震情報・電車の遅延などなどをつかむのが早く、それをいち早くLINEグループに垂れ流すので、日本の家族からはフランスからのほうが情報が早いと感謝されている。

で、何が言いたいかっていうと、恒常的にジャポン要素に飢えている。


石をければ日本人及びアジア系住民に当たりそうなパリ15区にそこそこの期間住んでいた当時は、ぶっちゃけ日本的なものに飢えてはいなかったのだと思う。
散歩圏内にアジアンスーパーがあったし、オペラ界隈ないし13区まで足を伸ばせば大抵のものは手に入ったから。

きっとその差も大きいのであろう。


必然として、ここ北フランスの港町でたまたま入った食材屋なんかで日本っぽいものに偶然出会ったりすると、それはそれはいたく感動してしまう。キャ〜!とひとり声を発しているキモイアジア人化してる説。


つい先日も、散歩ついでに発見した隣町のBioエピスリーで、「Mirin」と書かれた小瓶を見つけて、おおよしよしおまえはいい子だねと思わず愛でてしまった。

つまりは結局単純に、日本的なものに対する感動のハードルが駄々下がりなのである。



味噌とか醤油とか、健康にいいとフランス人が思っているニッポンの調味料系は割とこの街でもみかけるようになったのだが、さすがにアジアンスーパー定番のシソとかみょうがとか大根とかごぼうとかetc & etc、みたことがない。
たまーに見かけるのは、白菜(chou chionois)くらいかな。


月イチくらいで、日曜の朝、Otto氏が車を飛ばして向かうのが、Calais(カレー)の巨大ショッピングモール内にあるこれまた巨大カルフール。
ここで出会ったのが、オクラ
フランス語では、Gombo(ゴンボ)


今年の春、北フランス内陸のカルフールでみかけたときのオクラ(ホンジュラス産)

港町カレーのカルフールでは初めて見かけたので、うれしくて写真を撮り逃すほど。とりあえずふたつかみほど袋に放り込んで、カゴへ。


そうそう、オクラってば、アフリカの国々でもよく食べられているようだ。

思い出すのは、去年の夏、当時の職場の同僚が連れて行ってくれた、セネガル料理のレストラン。

ここ割と有名なのか、小洒落ててアジア系の観光客なんかもいて満席だった。

グルメな同僚のおすすめだけあって、初・アフリカ料理だけどどれも美味しくて感動した。


オクラの串焼き、だったかな
謎のソースみたいなのがこれまた美味しかった

なかでも、これがすごく美味しかったのを覚えている。
その名もぺぺスープ。

名前からしてそそる、ぺぺスープ
これで小さめサイズ
中には魚がたくさん

魚介のだしたっぷりで本当に美味しくて、なんかもうバケツに入れて持って帰っていいですかレベル。

いつか作ってみたいよぺぺスープ。


ほかにも魚介系をたくさんいただいた
エビ、巨大、うまい




さて相変わらず話が脱線しがち。オクラだよ、オクラ。

何かの料理本でみたのか、はたまた誰かから聞いたのか。
オクラといえば、ガンボスープというワードが脳のしわに食い込んでいた。肌寒いし、作ってみたいな、これ。


異国料理といえば、日本のパリのおじ氏が専門だ。

おいたんのことだ、きっと過去に作っているに違いないとケイチェル・ルセットを検索してみたが、残念ながら「オクラ」でも「ガンボ」でもヒットせず。珍しく手を出していなかったようだなおいたんもフフフ。


したらば、フランスのパリの辻氏レシピを参考にしてみよう。本格的っぽいし。


自称:レシピ通りに作れない女なのだけど、こういう(いい意味で)得体の知れない料理はレシピになるべく忠実に作りたい。最初に食べたイメージが後々もついてしまうのでね。

材料も、なるべくレシピどおりにそろえる。

小麦粉 1/2カップ バター(無塩) 1/2カップ 玉ねぎ 小1個 セロリ 1本 にんにく 4片 オクラ 200g 赤ピーマン 1個(パプリカ) 有頭海老 10尾 トマト水煮缶 1/2缶 チキンブイヨン 1個 レッドペッパー 小さじ2 チリパウダー 小さじ2 塩 小さじ2 黒胡椒 小さじ1 パセリ 適量 水 1.5~2L(レシピより抜粋)


キモはたぶんオクラとエビだなと踏んで、俺と一緒に港まで降りて生のエビちゃんを買ってきた。
茹でたエビはどこでも売っているけれど、港でも生のエビを売っているところは2軒くらいしかなかった。

レシピどおりエビもお頭付きで10尾ゲット


ルーを作っている間に野菜とかカットすればいいかなーとタカをくくっていたが、レシピを読み込むと、

・「もっとも大事なことは、根気強くルーを作ることにあります」
・「焦がさないように、目を離さないこと。手を休めないことが大事だよ」とジョルジュ先生は教えてくれました。

レシピより抜粋


ルー中はルーに集中しろといわれてルー。

全部材料を切り揃えてから始めることにしましたよ。
残念ながらワタクシ千手観音じゃないのでね。

鍋に入れる順に、にんにく、たまねぎ、セロリみじん切りのボウル
オクラ、赤パプリカのボウル
エビの頭のボウル
エビの身部分のボウル(この後殻を剥いて頭のボウルに剥いた皮殻をぶっこむ)


よし、ようやく始めるとするか〜

で、いきなりレシピ不明ポイントその1。

「ルーの材料、小麦粉 1/2カップ バター(無塩) 1/2カップ って書いてあるけど、バター1/2カップって、どれくらいなんですか・・・??

バターってグラムで表記されるものじゃないんでしょうか先生。

「バター 1/2カップ」で検索してみたら、おんなじこと聞いてる人、いるー!

回答が見えない涙

でも、ヤフージャパーン!!!

去年の春からだったかな、EU圏からヤフー関連のページは全てアクセスできなくなってしまったので、もちろん知恵袋にもアクセスできず。。


でもどうやらアメリカのレシピだとこういうことが起きるっぽい感じなので、その下にいくつかでてきたなかまとめてくださっている方がいた。

この記事によれば、バターのUSA1カップ226g、(日本の?)1カップ180g。

「え?バター200g入れるの・・・・・?」
と顔に縦線3本入ったが、そうだ1/2カップだった!早とちり、てへ。

・・・ん、でもそれにしてもUSAカップ採用したら1/2カップでも113g。多すぎじゃないの、ねえ?

あわてて他のガンボ・スープレシピを検索してみたけど、どれも多くて大さじ3くらい。これは一体全体困っちゃうけど、今日はこのレシピを使うと決めたんだ私は。

間をとって(日本の?)1カップ180gを採用しよう。
それでもかなり多いけど。1/2カップで90g。

バターの量にちょっと引く。


バターを溶かして小麦粉を加えてひたすら混ぜるわけだが、小麦粉はUSA1カップ125g、(日本の?)1カップ100gだったので、バター同様日本の?1カップを採用して1/2カップ分の50gを入れる。

一応粉はふるって加えた

休むことなくひたすら混ぜること20分後、レシピ通りクリーム色からきつね色に変化したことを確認。

ちなみにとてもいい香りがたちこめている

とにもかくにも、バターと小麦粉、この量でおそらく大丈夫だったなという確信は持てた。


さて、ルーができたので、あとは野菜たちを炒めていく。
鍋は我が家のストウブ選手でも中間サイズの27cmオーバルを使用。オーバルである必要はまったくないけど容量がちょうどよさそうだった。

みじん切りにした玉ねぎ、セロリ、にんにくを軽く炒める
軽く炒めたら、ルーを投入し、混ぜる
野菜とルーがなじんだら、なじんだら、トマトピュレ、オクラ、パプリカを入れる
さらになじませる

つぎの工程、「有頭海老の頭の部分には味噌が入っているので茶こし袋の中に詰め、だしをとるために、一緒に入れます」とある。

ここでレシピ不明ポイントその2。

お茶こしパックって、なに??

これのことで合ってる?エビの頭ひとつくらいしか入らないんだけど。
お茶こしパックって、巨大サイズあるの?

日本に行って必ず買ってくるもののひとつ、白均のお茶パック

本当にわからなくて、検索してみたけどこのお茶パックみたいなのしかでてこない。エビの頭入れるために貴重なお茶パック10枚以上使うの?

とりあえず悩みながら水を1.5リットル分、少しずつ追加していく


水を足しながらお茶こしパックについて悩んだ時間は、自分の半径1メートル以内だけ時が止まったかのように長く感じた。
他に悩まなきゃいけないことがたくさんあるだろうが私よ。



あー、やっぱり、次いつ日本に帰れるかわからないから、お茶パック、無駄にはすまい!

結果、ザルで代用することにした。蓋もできるし、いいじゃんこれで。
でももし誰か正解がわかった方、教えてください。

身の部分の殻もいれて軽くつぶす


チキンブイヨンを一つ放り込んで、弱火にし、1時間半くらい煮込むと野菜の味が出てきますとのこと、蓋をしてあとは煮込むのみ。

ちなみにこの時点で味見したのだけど、かなり高得点な出来であることは確信できた。
ポイントはルーですよルー。あのバターたっぷりなやつ。




1時間半後。良い出汁が出ている予感しかしない。

オクラもクタクタになっている
最後のひとエキスまで無駄にはすまいとひたすらつぶしまくる


最後の仕上げ。チリパウダー、黒胡椒、塩を加えて調味。

レッドパウダーはなかったので省略。チリパウダーは多めでもよさそう。

最後にエビの身を入れて、火を強め、エビの身に火が入ったら出来上がり。

エビ、いっといで!
すぐに火が通るエビよ
環境順応度高すぎ

「これは勝ったな(何に?)」とひとりごちるくらいに、めちゃくちゃいい香りで、これは本当に期待しかない。



ア・ターブル!って英語でなんていうの?と思いながら、着席。

ボナペティ

そういえば、とりあえず初日はパンと合わせようと思って、夕方、バゲットを買いに俺散歩に出た。

がしかし、近所のブーランジュリー3軒が、①謎のクローズ ②水曜定休日 ③3週間のバカンス中ときて、あえなく撃沈・・・。

冷凍しておいた自作ストウブパンの役立つときがきましたよ。

箸休めはブロッコリーで(茹でただけ)
具、多め

各工程で、「これは美味しいにちがいない」という確信を積み重ねてきているから特にサプライズではないけど、これは本当にイケてるスープだと言い切れる。

オクラのとろとろ感はいわずもがななのだけど、とにかく味が、よくわかんないけど、うまい。セネガルのぺぺスープを食べたときの感覚と似ている。

なんとも形容し難いのだけど、ルゥの焦がしバターとエビのうまみ、香味野菜たちのうまみ、三位一体となって、えもいわれぬ⚪︎⚪︎⚪︎。彦麻呂召喚したいよ。


そうそう、このガンボ・スープって、アメリカのルイジアナ州発祥のスープらしいけれども、そういえばルイジアナってルイ14世由来よね。
フランスと縁深い土地ということ・・・あ、だからバターこってりなのかも?なんて思いながら、昔寝食忘れるほど勉強した世界史を振り返ってみたりするなど。

今は寝食忘れることはないけど、勉強したその内容をほぼ忘れてしまっているのが、悲しきかな人生。




ガンボ・スープ2日目。
4人分を1人で食べるのでまだまだ先は長い。

辻氏が「カレーに飽きたら、ガンボです。ボナペティ!」とおっしゃっているので、次なるは米合わせだな。

2日目の晩御飯
箸休めはブロッコリーとインゲンのマヨ和え
ナスとズッキーニを焼いたのとゆでたまごを添えてみた

さらさらスープなので、米はバスマティライスで。

絶対これ複数回食べるなと思って多めに炊いて、その後2日間、ランチに食べた。シュレッドチーズをのっけても美味しかった。それでも余ったから残りは冷凍へ。

オクラと生のエビにさえ出会えれば、絶対また作ろう。
そう思わせる価値のある、ガンボ・スープに乾杯。


左半身に夕焼けを浴びる夏の終わりの俺


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