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国も恋人もスイーツで大繁栄!フランスが突き詰めた美味しい第二領域

 芸術大国フランス。この国は、第二領域で成り立っていると言っても過言ではない。
 どこへ行っても、なくても死なないもので溢れている。
 やらなくても死なないけれど、やれば豊かになれる芸術はまさに第二領域と言えよう。国民においても、第二領域にかける時間が他国に比べて圧倒的に多い。
 社交、読書、フランス料理、フランス菓子、絵画、彫刻、ファッション、オペラ、香水、装飾、宮廷文化、庭園など。意識してか無意識かは不明だが、それらが長い歴史の中でとことん突き詰められて洗練されて、今や人の夢や希望となり、生活を支えるものになっている。

 スイーツが種類豊富で手軽で美味しい国はダントツで日本だと思っている。
 それでもスイーツといえば「フランス菓子」、いまだに一流のパティシエになるならパリで修行!など、フランスの価値はとても高い。
 実際パリに行っても、本当に美味しいフランス菓子は名店頼りで、そこらで手に入るものは甘すぎるかどっしり重いかで、日本人の口にはたいてい合わない。だが、そうした余分な甘さがフランスの繁栄につながってきたと言えるのだ。

 砂糖はいわば余分なもの。いつの時代も余分なものは皆の手に届きやすい (笑) 。
豪華なドレスも貴族の館もフランス料理も、一部の限られた富裕層に開かれたカルチャーだが、甘いパンやスイーツなら誰にでも、少なくともたまになら手が届く。
 

 11世紀に十字軍によりアラブ文化が輸入されたことで、砂糖は初めてヨーロッパに伝えられた (それまではハチミツが主流) 。
 大航海時代にスペインは、新大陸で直接利益になる金銀鉱山の発掘をし、ポルトガルはブラジルでさとうきび畑に目をつけた。そして、砂糖に心を奪われたフランスは、イギリスと、熱帯の島国を舞台にお砂糖合戦を繰り広げ、植民地支配をしていく。

 最終的には、フランスがヨーロッパ最大の砂糖大国になり、イギリスと親密だったオランダもフランスの安い砂糖を買って利益を生むようになった。その影響はアメリカ独立戦争のときに、オランダがイギリスに背を向けフランスを援護することにも表れている。砂糖は、子供も国をもなびかせる力があるのだ(笑) 。
 戦争に疲れてくると、次は国家間の政略結婚が始まる。そこでは結婚でホームシックになった妃により、他国のカルチャーが次々とフランスに伝えられるのだ。マカロンやアイスクリームのように。

 また、キリスト教のカトリックでは、料理は社交の一部で礼儀正しさを身につける教育の場として捉えられていた。そのため、豪華な宮殿で食生活の美しさを他国に見せつけることは、外交でとても有利になった。

食事が美しく礼儀正しいほど、より神に近い存在となるからだ。

 貴族が求める美とプライドの追いかけっこにより、テーブルアートや盛り付けや食器や礼儀など食事の空間は、五感以上のものをフル活用して楽しむ総合芸術となった。そしてお菓子も、宮殿の華美な装飾に負けない、美しく洗練されたものになり、手軽なことからヨーロッパ中に広がった。

 他国の美しいものに自己アレンジを加え、あたかも最初からうちのカルチャーです!という我がもの顔をして、世界を虜にしていく術は、フランスの専売特許である。
 チョコレートは、新大陸ではカカオに香辛料を入れて飲む習慣があった。それが辛すぎて飲めなかったスペイン人が、砂糖を加えてみたら、その美味しさにびっくり仰天!世紀の大発見であった。
スペインはしばらくはその情報を秘密にしていたが、戦争や宗教の広がりで、フランス宮廷の食卓にも登場するようになった。本家より洗練されて、自然と世界の人々を惹きつけたのだ (笑) 。

 男性もチョコレートが女性の理性を狂わせることを見抜き、求愛活動にもしっかり取り入れるようになった。スイーツそのものの見た目においても、男女の官能に一役買うことからも、食後のデザートはまさに楽園のイメージと結びついた。
こうして第二領域をとことん追求した結果、ベルサイユ宮殿は世界の憧れの的になり、ヨーロッパの文化的なリーダーになったのだ。
 
 人々は重税と貧困に苦しんだことで起きたフランス革命は、間違いなく第一領域だろう。だがなんと、革命期でも国際収支は植民地の砂糖のおかげで黒字だったのだ。
 そもそもフランスの第一領域は、まぁうまくいかない (笑) 。今日のフランスを見ても明らかなように、増税や労働条件に関してはデモが起きるばかりで全く話が進まない。

 フランス革命後には、職を失った宮廷の料理人やパティシエが街でレストランやカフェを開業して宮廷の一部は民衆化していく。
 批評家や格付け屋がでてきたベルエポックの時代には、さらにスイーツは自由度が高く洗練されたものになり今につながっている。

 今、フランス菓子はフランスに限らず世界中で食べることができる。日本ですら、和菓子より簡単に手に入る。日本人も誕生日には、和菓子ではなくケーキを食べる。パリコレに出てくる服だって、誰がどこに来ていくの?というファッションが世界のトップを走っている。極東の日本からわざわざ行ってカフェめぐりをする観光客は絶えないし、パリ発!とうたい文句がつくだけでものは売れる。ラデュレの可愛いボックスに入ったマカロンを渡せば、女の子の機嫌はたちまち治るだろう (笑) 。

 こうした第二領域は生活を豊かにする潤滑剤なのだ。
 長い年月と情熱をかけて突き詰められたフランスの第二領域は、今や第一領域をもカバーするほどの影響力を身につけている。
 なくても死なない何かに魅力を感じて、世界中からフランスを訪れる人は絶えず、経済を生んでいるのだから。
 自由に個性的に生きて、自然に人を惹きつける魅了を身につける。
 第二領域に対する姿勢をフランスから学びとりたいと思う。

第二領域については、こちらを参照してください。

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