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「どうする賃上げ2024」第3回 ~「賞与って、どう決めたらいいの?」


1.はじめに

 東京証券取引所の日経平均株価が、史上最高値を更新しました。
 大手企業の一部では、組合の賃上げ要求に対して早々に満額で回答したという報道もありました。

 春の労使交渉あるいは給与改定が本格化していく前に、景気の良いニュースが続いていますが、 “よそのこと”と感じてしまうところもあります。

 日本の雇用の7割を担っている中小企業の経営者の皆さんは、日々の報道をどのように感じられているのでしょうか。

 お悩みに少しでもご参考になればと考え、過去の経験なども踏まえて情報を提供してまいりました。

 3回目となる今回は、賞与について考えてみたいと思います。

2.賞与って、そもそも何?

 多くの企業で賞与が支払われていると思いますが、そもそも賞与とはどういうものなのでしょうか・

 給与(月例給与)とは異なり、労働基準法などの法律によって支払いが義務づけられているものではありません。

 多くの企業の就業規則で賞与に関する規定には「会社業績などによって、支払うことがある(支払わないことがある)」と記載されていることと思います。

 つまり、業績によるものという性格が示されており、いわゆる「業績給」なのです。

 一方で、労働者側は給与との性格が異なることは認めながらも、「生活給」の一部と考え、「一時金」あるいは「期末手当」と呼んでおります。

 どちらなのかということではなく、労使双方ともに性格を理解した上で、話し合いが行われていることと思います。

3.賞与の支給方法は?

 支給方法は、これまで述べてきた定期昇給やベースアップと同様、企業によってそれぞれであり、千差万別です。

 一般的には、基本給の〇ヵ月分を基準(支給係数)として、個人の人事考課によって上げ・下げを行っている企業が多いでしょう。

 毎年、春の労使交渉の時期に、会社の業績などをもとに、支給額が決定されています。

 かつては、春の労使交渉と別に話し合いを行っていた企業も少なくありませんでしたが、2度に分けて行うことの非効率さや、企業としても合わせて決めることで人件費の予算が立てやすいことなどから、同時に決定するようになってきています。

 労働組合のない企業でも、経営者の皆さんは、春の給与改定に合わせて、賞与の支給額を決められているのはないでしょうか。

4.より業績を反映した支給方法は?

 賞与は会社業績をもとに、支給額を決めるということですが、労使交渉で「何ヵ月分にするのか」「いくらにするのか」を話し合って決めるということから、さらに「業績給」という性格を明確にして支給する方法もあります。

 25年位前、労組専従だった頃、会社との話し合いの中で「業績連動型賞与」の導入を提案したことがありました。生活給的な一定の固定部分を確保した上で、会社業績に応じて決定する部分を上乗せする支給方法です。

 企業としては、業績に連動して賞与の支給額を半ば自動的に上げ・下げできます。社員にとっても、がんばって業績を上げれば、それが賞与という目に見える形で報いられるので、モチベーションにつながっていくことになります。

 当時は「時期尚早」ということで見送られましたが、数年後に売上高と営業利益のマトリックスで支給係数を決定する方式(下図参照)が、労使で合意され、複数年の協定が結ばれました。

業績連動型賞与のイメージ図

 人事コンサルタントの榎本あつし先生は、「ポイント制賞与の決め方(下図参照)」を提唱されています。資格等級別・人事考課別にポイントを決めておき、毎年、会社の業績などを踏まえて、ポイントの単価(1ポイント=○○円)を決定して、支給するという方法です。

ポイント制賞与の決め方(イメージ図)

 この方法の優れた点は、人件費がコントロールしやすいことと、よくありがちな人事考課で支給額を調整するということを防ぎ、人事考課に対する社員の納得性が確保できるということです。

 業績給の業績は、企業の業績もありますが、部門の業績を反映させるという方法もあります。業績が特に良かった部門に上乗せするとか、一定の基準を設けて上げ・下げするとかの仕組みが考えられます。

 夏・冬の支給とは別に、企業の決算後に「決算賞与」として別途支給されている企業も多くあります。決算の状況を見た上で、支給の有無や額を決めることになるので、これも「業績給」の性格を明確にしたものと言えます。

 全日空は、3月期の期末一時金を3ヵ月分支給するとの報道がありました。夏・冬に加えて、決算期末に1ヵ月分の支給を決めていたそうですが、営業利益見通し(過去最高となる見込み)を達成した場合に、2ヵ月分上乗せすると労組へ提案したとのことでした。

5.おわりに

 賞与は、企業の業績や個人の業績(人事考課)を、月例給与以上に反映しやすいものですので、企業の経営環境や、人事戦略、社員のマインドなどを考慮して、さまざまな支給方法が考えられます。

 賞与の支給方法について、ごく一部をご紹介しましたが、会社の事情や課題に合った方法をご提案いたしますので、ご相談くださいませ。

 お問い合わせは、こちらまで。
https://www.hatarakigaiks.com/form.html

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