見出し画像

筋肉とケガ予防

 人間の体の筋肉(骨格筋)は600を越え、複数の骨を接続して関節を作っています。当然、バレーボールの動作にも様々な筋肉を使っています。筋肉について知ることは、プレーの上達だけでなく、ケガの予防にもつながります。

筋肉の性質

 筋肉は伸びたり(伸展)縮んだり(収縮)する性質があり、縮む方向にのみ力を発揮します。収縮して力を発揮している筋肉を主動作筋、伸展している筋肉を拮抗筋といいます。
 例えば、膝を伸ばすときには腿の前側の筋肉(大腿四頭筋)が収縮して膝関節を伸ばすように引っ張り、腿の後ろ側の筋肉(ハムストリングス)が伸展します。また反対に、膝を曲げるときはハムストリングスが主動作筋、大腿四頭筋が拮抗筋になります。
 筋肉はゴムのように、伸ばされると縮もうとする働き(伸張反射)があります。スポーツでは、これを利用することによって強い力を出すことができます。

性質の利用の例

 例えばスパイクジャンプは股関節を後ろに曲げる(伸展)役割のあるお尻の筋肉(大臀筋)の収縮を利用すると高く跳べますが、これもジャンプ動作の前に伸展させて伸張反射を起こします。伸展させるということは、大臀筋は拮抗筋になっています。この時の主動作筋は股関節を前に曲げる(屈曲)役割のある腸腰筋です。つまり、ジャンプ時には拮抗筋となる腸腰筋を鍛えることがジャンプ前の大臀筋の伸張反射に寄与し、ジャンプ力アップに繋がるのです。
 スパイクジャンプで、最後から二歩目の右足(右利きの場合)を大きく出すように言われたことがあると思います。腸腰筋を使って股関節を前に曲げて右足を出すことで大臀筋、更にこの時膝も伸ばすことでハムストリングスに伸張反射が起き、高いジャンプに繋がります。
 一つの関節でも、複数の筋肉が違う方向の動きを生み出しています。また、筋肉は伸ばすことでその後の収縮で大きな力を出すことができるので、使いたい動きと反対に作用する筋肉でもバランス良く鍛えることが重要なのです。

①腸腰筋 ②大臀筋

ストレッチの種類と使い分け

 次にストレッチについてです。皆さんは運動前、どのようなストレッチをしているでしょうか。
 前述の通り、筋肉はゴムのように伸ばされると縮もうとする性質(伸張反射)があります。伸ばした状態でキープするストレッチ(静的ストレッチ)をやり過ぎると、ちょうど伸ばしたままになったゴムのように、伸ばされても戻る力が弱くなってしまいます。また、静的ストレッチにはリラックス効果もあるため、運動前に行うとその後のパフォーマンスが落ちてしまうデメリットもあります。
 運動前は、ランニングや適度な反動をつけて関節を動かすストレッチ(動的ストレッチ)を行って筋肉の血液流量を増やし、伸張反射を高めるようにするのが良いとされています。
 静的ストレッチは運動後のクールダウンや関節可動域の向上に向いています。筋肉を使って損傷すると、筋肉を覆う筋膜が固まりやすくなります。特にバレーボール選手はジャンプを繰り返すため、腿の筋肉を多く使います。腿の大腿四頭筋が固まると、それに繋がる膝の腱が引っ張られ続けて炎症を起こし、バレーボール選手に多いジャンパー膝(膝蓋腱炎)というケガに繋がります。成長期では更にその腱が繋がる脛の骨が引っ張られて剥がれる、オスグッド(オスグッドシュラッター病)が起こりやすくなります。ジャンプ動作をした後は忘れずに大腿四頭筋を伸ばすストレッチをしましょう。
 大腿四頭筋に限らず、運動前と運動後、動的ストレッチと静的ストレッチの使い分けを意識してみてください。

大腿四頭筋の静的ストレッチ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?