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【論文】リーダーが持つ「仕事の信念」の形成プロセスに関する研究-組織文化が信念形成に関与する!?-

リーダーシップにまつわる研究は沢山ありますが、今日はリーダーの仕事の信念の形成についての論文を紹介しようと思います。

この論文でいう「リーダー」は、企業の現場でマネジメントを担う30~60歳の主任~部課長層とし、現場第一線のリーダー12人を対象としたインタビュー調査と分析を踏まえ、リーダーが持つ仕事の信念の形成プロセスについて考察している研究です。

【論文名】リーダーが持つ「仕事の信念」の形成プロセスに関する研究/高橋衆一さん、城戸康彰さん


信念とは?

そもそも、信念とは何なのでしょうか。

リーダーシップ開発論においては、リーダーに成長を促す経験を積ませること(マッコール 2002)、さらに経験からリーダー自身が持論をつくること(金井 2005)が有用な方略とされています。

この論文では、この「持論」を包含する概念である「信念」について着目しています。

信念とは、「固く信じて疑わない心」(松村 2006)という定義がありますが、松尾〔2011〕は、「 こだわり、価値観、ポリシー、哲学に相当する 」〔序文〕と捉えており、社会科学の研究においてはより広い概念として用いられています。

仕事の信念は、どのような過程を経て形成されるのか?

では、仕事の信念はどのような過程を経て形成されるのでしょうか。

松尾〔2006〕は、信念は知識やスキルと同様に、経験から学習することで形成されるとしています。つまり、「具体的経験-内省的観察-抽象的概念化-能動的実験」という経験学習のサイクル〔Kolb 1984〕が繰り返されることで、信念は形成されることになります。

一方で、経験学習における経験とは直接経験を指しますが、直接経験だけが信念形成に影響を与えるものではないのでは、とこの論文では疑問を投げかけています。

西田〔1998〕は、信念の形成は直接経験だけでなく、「社会的・文化的相互作用に大いに依拠している」〔p.24〕と述べていることから、企業の文化的相互作用の基盤である組織文化も仕事の信念形成に影響している可能性を示唆しています。

信念の形成は、仕事そのものの直接経験だけではなく、組織文化も影響している可能性がある、というのは面白い視点だなと思いました。

調査対象者

企業の第一線で活躍するリーダー12名。成長段階ごとの信念の変化も捉えるために、主任・係長クラスの2名も含め、課長クラス5名、部長クラス5名とし、多階層のマネジャーを対象。

調査方法

2018年10~11月の間に、一人につき1回、60~120分程度の半構造化インタビューを実施。インタビューは、質問項目を用意した上で、インタビュイーに過去の主な仕事経験とそこから形成された信念について話してもらい、逐次質問をしながら進めた。

研究の考察

具体的な調査内容は割愛していますが、研究の考察は下記が記されていました。

他者・書籍などを通した間接経験と、強い組織文化は、リーダーの仕事の信念形成に寄与する可能性が高い。先行研究では、仕事の信念は直接経験からの 学習を重ねることで形成されるとされていたが〔Kolb 1984、松尾 2006〕、その経験学習の過程において、間接経験や組織文化が強い影響要因になり得ることが示された。

リーダーは成長するに伴って、自分のことから対部下・対職場へ、対部下・対職場から対社会へと、仕事の信念のカテゴリーを広げ、増やしていた。リーダーは成長する過程で信念をスケールアップして いく傾向が見出された。

・信念に基づく行動は、活躍の幅を広げ、新たな挑戦を引き出す可能性があ る。管理職経験年数11年以上のリーダーは、信念に基づく行動を若いうち
から取ってきたことで成功を重ね、それが自信となり、活躍の幅を広げ、新たな挑戦をしようとする意気込みに繋がっていた。

また、リーダーの持つ仕事の信念は、所属する業種や職種に関わらず、彼らの成長に伴って、「自分のための仕事の信念」→「対部下・対職場の信念」→「対社会の信念」の順にカテゴリーを広げ、増えていくそうです。

信念も、成長過程によって変化していくのですね。

「仕事は信念を持った方が良い!」と言われる中で、ではどうすれば信念は形成されるのか?そして何が信念形成に影響を与えるのか?そのプロセスについて書かれている論文でした。

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