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認知症の父は、食事そのものに感謝しながら食べる。

認知症の父から学ぶことは、非常に多く、そして深い。

最初のうちは、認知症の父がただただ不安で仕方がなかった。
例えば、食事。
自分のお皿と他の人のお皿の区別がつかないし、食べる順番も分からなくなってしまった。
特に私はファザコンなので、威厳がなくなってしまった父にかなりのショックを受けた。

でも、なんとかしなくちゃいけない。
人のお皿との境界線問題に関しては、大皿料理をなくすこと、一人分の食事はお盆に乗せるなり、近くに寄せるなりすることで解決。順番が分からなくなる問題については、誰かの真似をして、その人と同じ順番で食べることで良いこととした。

それから3か月。父との食事も、ずいぶんリラックスして取れるようになってきた私。

今、父は、食事そのものに感謝しながら食べる。

こうやってテーブルに並ぶ前にいろいろな人の努力があるんだよな
農家の人たちに感謝して残さず食べよう
美味しいって感じるっていうことは、自分が幸せだっていう証拠だな
たいした運動はしていないけれど、エネルギーにもなってくれているんだよ
みんなで食べるとこれがまた美味しいんだよな

毎日、食事のたびに、言う。
一口一口食べるたびに、言う。

以前、両親との食事は残り何回かを調べるサイトがあり、
両親の年齢を入れて、年間何回帰省するか入力したら、「残り20回」と出た。二人とも平均寿命を超えているので、残り回数は、当然少ない。

父の介護で頻繁に実家に帰るようになり、すでにその20回を超えようとしている。

毎回「これが最後かもしれないんだよなあ」と思いながら、私は食事に感謝しながら食べている。父とまったく同じものを。

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