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【映画】「日日是好日」毎日はそれぞれにいい日、それ以上の意味がわかる。

わたしは趣味で書道をやっていて、字を書いている時は集中しているはずなのに周りの音や光がいつもより濃く感じられるから、その中で何が美しいのか考えていると、悩みごとに普段とは違う答えがぽんと出たりするんだよ。そんなことを数年ぶりに会う友人にとりとめもなく話していたら、「きっと、あなたにはすごくいいと思う」とすすめてくれたのがこの映画でした。

最初は茶道のしきたりにとらわれて頭がいっぱいになっていた主人公が、ある日「お湯はとろとろ、水はきらきら」それぞれに違う音をたてて流れていることに気づく。その時、わたしも知っていると思った。普段はのっぺりと黄色い朝日が、雨上がりの朝は金色に輝くこと。きっとそんなことはたくさん、日常の中に溶けている。それを感じられるようになれば、ふとした時に「小さいころ熱が出てお祭りに行けずに泣いた日があって、今日はあの日と同じ風が吹いているな」そんな風に思い出を繋ぐことができる。

過去の記憶やその時の感情は、人の中で一生をかけて発酵していくのだと思う。だから何かのきっかけで取り出した思い出は、あの頃とは違う風味をおびている。それを少し味わって、また仕舞って、また何かのきっかけで取り出した時にふと何かに気づけたらいい。

大事なことを語らず、諭さず、そっと置くように伝えてくれるこの映画を観た時間こそが、とても愛しく大切なものになった。

樹木希林さんが玄関から顔を出した時「あ、また出会えた」と思った。そんな特別な幸せも感じさせてくれる映画です。

©︎2018『日日是好日』製作委員会

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