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ベッドタイム ストーリーズ 雪女 -11-


彼女はたいてい一日に何度か、ふと思い出したようにそのとき何かをしていた手、それは薬を煮込んだ鍋を右に数回、左に数回、と規則正しくかき混ぜる手だったり、細い筆の穂先を舌で濡らし、僕が市で彼女のために買ってきた螺鈿の小箱の中に入れた紅を濡れた筆の穂先で撫でそれをくちびるに何度も何度も当て時間をかけて紅を塗っている最中の手だったりするのだが、その手を不意に止め、僕にからだをすり寄せてくる。僕が縄を編んでいようが食事をつくっていようが、翌日の猟のため銃に鉛の弾を込めていようが、そんなことには彼女は興味がなく、自分がふと思い立ったときに、僕と交わろうとするのだ。


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