見出し画像

#63 経営効率を上げるということ

~我々の仕事は50年後に対する挑発である(デービッド・アトキンソン)~

アトキンソンの中小企業不要論の全てが正しいとは言いませんが,正鵠を射ているところも多いと感じています。先日,金融機関出身の同業者がこんなことを言っていました「中小企業なんて細かい数字のことを言っても聞きませんよ,そんな細かい管理は彼らには無理です」と。残念ながら,このような考えの同業者が中小企業の支援をしている限り,中小企業不要論はなくなりはしないでしょう。

どんぶり勘定で把握できるのは最終利益だけ,荒っぽい収益性しかわからず,これではさらなる成長は危ういと言わざるを得ません。確実な成長のためにはマネジメントレベルを上げる必要があり,細かい数字を厭わずに仮説検証して業務プロセスをマネジメントをしなければなりません。KPI・KGIの設定といった数値化や指標化は必須であり,そういった経営指標を活用するからこそ,経営効率や経営資源の生産性向上が望めるのです。

また別のことろでは,事業承継支援の専門家という人物がこんなことを言っていました「中小企業の経営者は所有と経営の分離なんてできないよ,それにプロ経営者なんていったってサラリーマンじゃ経営者になれないよ」と。その時筆者は,凡そ日本の事業承継の政策はこのような認識のもとに成立っているのだろう,と思いました。個人的にはこういった前提を破壊して,中小企業のマネジメントレベルを上げて,活発なM&Aにより経営効率レベルの高い中堅企業に収斂させていく,というのも事業承継の一つの方向性なのではないかと考えています。

ところで筆者は外食企業のクライアントが多いのですが,その昔は一発当ててチェーン化して株式上場して創業者利益を得る,というのがモチベーションの外食ベンチャー経営者が多かったものです。それが最近では,株式上場をイグジットにしない外食ベンチャーの経営者が増えてきました。つまり,株式を売却して大手チェーンの傘下に入り,チェーンの経営効率のメリットを享受しつつ,自身はプロ経営者として得意な業態開発やオペレーションに徹する,という途を選択するのです。

筆者はふと,ベテラン経営者は自分の経営スタイルとかに固執して経営マネジメントレベルを上げられないのかもしれない,というような気がしました。それに対して,若い経営者は事業を売ったり買ったりM&Aを繰り返して,自身は新たなステージにチャレンジしようとする傾向にあるように思います。いずれにせよM&Aの俎上に乗せるには,一定のマネジメントレベルが担保されていて,ビジネス・デューデリジェンスが適切に行える状態でなければなりません。

コロナで変革のスピードが上がっています。中小企業の経営判断は待ったなしの状態になっていると言えます。生産性向上への真摯な取り組み姿勢のない中小企業は,思ったよりも早く淘汰の憂き目を見ることになるのかもしれません。

〔こありん先生チャンネル〕YouTube配信しています@(・●・)@

#経営 #コンサルタント #アトキンソン #中小企業 #事業承継

正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html